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結婚・出産は人生の大きなイベントであり、それに伴う税制上の優遇措置を適切に活用することで、経済的な負担を軽減することができる。本記事では、結婚・出産に関連する主な税制優遇措置として、配偶者控除、配偶者特別控除、医療費控除について解説する。
配偶者控除
配偶者控除とは、一定の要件を満たす配偶者がいる場合に、所得から一定額を控除できる制度である。控除を受けるための要件は、以下の4つである。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係は対象外)
- 納税者と生計を一にしていること
- 配偶者の年間合計所得金額が48万円以下であること(給与収入のみの場合は103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者でないこと、または白色申告者の事業専従者として給与の支払を受けていないこと
上記の要件を満たす場合、納税者本人の合計所得金額に応じて、次の表の通り控除を受けることができる。
納税者本人の合計所得金額 | 控除対象配偶者 |
900万円以下 | 38万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 |
なお、配偶者が障害者である場合には、配偶者控除とは別に、障害者控除を受けることができる。
また、平成30年分以後は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除の適用を受けることはできない点にも注意が必要である。
専門家のワンポイントアドバイス:
配偶者控除の適用を受けるには、年末調整や確定申告の際に、配偶者の所得金額を正しく申告することが重要です。配偶者の所得金額が48万円を超える場合は、配偶者控除の適用を受けられなくなるため、配偶者の収入状況を把握しておくことをおすすめします。
配偶者特別控除
配偶者特別控除は、配偶者の所得が配偶者控除の適用基準を超えているために配偶者控除が受けられない場合に、一定の要件を満たすことで適用を受けられる制度である。
配偶者特別控除の適用を受けるための要件は、以下の通りである。
- 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であること
- 配偶者が、以下の要件を全て満たすこと
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係は対象外)
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が48万円超133万円以下であること
- 青色申告者の事業専従者でないこと、または白色申告者の事業専従者として給与の支払を受けていないこと
- 配偶者が配偶者特別控除の適用を受けていないこと
- 配偶者が、源泉控除対象配偶者として給与の支払を受けていないこと(年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く)
上記の要件を満たす場合、納税者本人の合計所得金額および配偶者の合計所得金額に応じて、次の表の通り控除を受けることができる。
配偶者特別控除の概要(令和2年分以降)
配偶者の合計所得金額/納税者本人の合計所得金額 | 900万円以下 | 900万円超950万円以下 | 950万円超1,000万円以下 |
48万円超95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
100万円超105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
105万円超110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
110万円超115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
115万円超120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
120万円超125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
125万円超130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
130万円超133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
配偶者特別控除の控除額は、配偶者の合計所得金額と納税者本人の合計所得金額の両方に応じて決定される。
例えば、納税者本人の合計所得金額が900万円以下で、配偶者の合計所得金額が95万円以下の場合、配偶者特別控除額は38万円となる。一方、納税者本人の合計所得金額が950万円超1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が130万円超133万円以下の場合、配偶者特別控除額は1万円となる。
このように、配偶者の合計所得金額が高くなるほど、また、納税者本人の合計所得金額が高くなるほど、配偶者特別控除額は少なくなる仕組みである。したがって、配偶者特別控除の適用を受ける際は、配偶者の所得金額だけでなく、納税者本人の所得金額も考慮に入れる必要がある。
配偶者特別控除は、配偶者控除とは異なり、配偶者の所得金額に応じて控除額が変動する仕組みになっている。
専門家のワンポイントアドバイス:
配偶者特別控除は、配偶者の所得金額だけでなく、納税者本人の所得金額によっても控除額が変動します。年末調整や確定申告の際は、配偶者の所得金額と自身の所得金額を正確に把握し、適切な控除額を申告するようにしましょう。
医療費控除
医療費控除とは、納税者本人や生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が一定額を超える場合に、所得控除を受けられる制度である。
医療費控除の対象となるのは、医療費の支払いが次の要件を満たす場合である。
- 納税者本人または生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること
- その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること(未払いの医療費は、実際に支払った年の医療費控除の対象となる)
医療費控除の計算方法は次の通りである。
(実際に支払った医療費の合計額 – 保険金等で補填される金額)- 10万円(または所得金額の5%)
上記の計算式で得られた金額(最高200万円)を所得から控除することができる。
出産や不妊治療に関連する医療費も、医療費控除の対象となる。具体的には以下のような費用が含まれる。
- 妊娠中の定期検診や検査の費用
- 出産のための入院費用や食事代
- 不妊治療に要した医療費
- 出産のためのタクシー代(電車・バスなどの公共交通機関の利用が困難な場合)
専門家のワンポイントアドバイス:
出産費用や不妊治療費を医療費控除として申告する際は、出産育児一時金等の保険金で補填される金額を差し引く必要があります。医療費の領収書と合わせて、保険金の金額が記載された書類も保管しておくことをおすすめします。
なお、平成29年から令和8年までの間、特定一般用医薬品等購入費を支払った場合にも、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の適用を受けることができる。
まとめ
結婚・出産に伴う税制優遇措置には、配偶者控除、配偶者特別控除、医療費控除がある。
配偶者控除は、一定の要件を満たす配偶者がいる場合に、所得から一定額を控除できる制度である。控除額は、納税者本人の合計所得金額に応じて、38万円から13万円となる。
配偶者特別控除は、配偶者の所得が配偶者控除の適用基準を超えている場合に、一定の要件を満たすことで適用を受けられる制度である。控除額は、納税者本人の合計所得金額と配偶者の合計所得金額に応じて、38万円から1万円まで段階的に変動する。
医療費控除は、納税者本人や生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が一定額を超える場合に、所得控除を受けられる制度である。出産費用や不妊治療費も医療費控除の対象となり、妊娠中の検診費用、出産のための入院費用、不妊治療費、出産のためのタクシー代などが含まれる。
これらの税制優遇措置を適切に活用することで、結婚・出産に伴う経済的負担を軽減することができる。ただし、適用要件や控除額の計算方法には注意が必要であり、年末調整や確定申告の際は、配偶者の所得金額や自身の所得金額を正確に把握し、適切な手続きを行うことが重要である。
- Q入籍しましたが、配偶者の所得が100万円を超えています。配偶者控除は適用できますか?
- A
いいえ、配偶者控除の適用を受けるには、配偶者の合計所得金額が48万円以下である必要があります。配偶者の所得が100万円を超える場合は、配偶者控除の適用はできませんが、配偶者特別控除の適用を受けられる可能性があります。配偶者の所得金額に応じて、最大38万円までの控除を受けることができます。
- Q不妊治療を受けるために、高額な医療費を支払いました。医療費控除の対象になりますか?
- A
はい、不妊治療に要した医療費は医療費控除の対象となります。ただし、医療費控除の計算の際は、保険金等で補填される金額を差し引く必要があります。また、確定申告の際には、医療費の領収書と保険金の金額が記載された書類を保管しておくことをおすすめします。
- Q出産のために実家に帰省する交通費は、医療費控除の対象になりますか?
- A
いいえ、出産のために実家に帰省する交通費は、医療費控除の対象にはなりません。ただし、出産のためにタクシーを利用した場合で、電車やバスなどの公共交通機関の利用が困難であったときは、そのタクシー代は医療費控除の対象となります。
- Q配偶者特別控除の適用を受ける場合、配偶者控除との選択はできますか?
- A
いいえ、配偶者特別控除と配偶者控除は同時に適用を受けることはできません。配偶者の所得金額が配偶者控除の適用基準を超える場合は、配偶者特別控除の適用を検討してください。配偶者の所得金額に応じて、有利な方を選択することをおすすめします。
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