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住宅ローン控除は、住宅購入者の大きな負担を軽減する重要な制度である。しかし、その仕組みや手続きは複雑で、初めての人にはわかりにくいものである。
この記事では、住宅ローン控除の基本的な知識から確定申告の方法まで、わかりやすく解説する。これにより、読者は住宅ローン控除の仕組みを理解し、適切に申告手続きを行うことができるようになるだろう。
住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を取得した場合に受けられる税制上の優遇措置である。一定の条件を満たすことで、一定期間、所得税および住民税から控除を受けることができる。ここでは、住宅ローン控除の主な条件と控除額の計算方法について解説する。
専門家のワンポイントアドバイス:
住宅ローン控除の適用を受ける際は、入居年や住宅の種類による控除額の上限の違いを確認しておきましょう。
控除の条件
住宅ローン控除を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要がある。主な条件は、住宅の種類、居住期間、住宅ローンの返済期間などに関するものである。具体的には、以下のような条件が挙げられる。
- 自己の居住の用に供する国内にある家屋であること
- 住宅の床面積が50㎡以上であること(ただし、一定の要件を満たす場合は40㎡以上でも可)
- 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
- 入居から6ヶ月以内に住民票を移していること
これらの条件を満たすことで、住宅ローン控除の適用を受けることができる。
控除額の計算方法
住宅ローン控除額は、年末の住宅ローン残高に応じて計算される。
基本的な計算式は以下の通りである。
年末の住宅ローン残高 × 0.7% = 住宅ローン控除額
ただし、この計算式で算出された金額には、いくつかの上限が設けられている。
控除額の上限は、住宅の種類や所得税額によって異なる。
- 住宅ローン残高の上限:住宅の種類や入居年によって、控除の対象となる住宅ローン残高の上限が決められている。
- 所得税額の上限:住宅ローン控除額は所得税額から控除されるが、控除できる金額は実際に支払った所得税額が上限となる。
- 住民税からの控除:所得税で控除しきれなかった残りの控除額は、翌年の住民税から控除される。ただし、住民税からの控除にも一定の上限がある。
以上の点を踏まえて、正確な住宅ローン控除額を計算する必要がある。
以上の点を踏まえて、正確な住宅ローン控除額を計算する必要がある。以下では、具体的な計算例を通じて、住宅ローン控除の仕組みを詳しく見ていく。
標準的なケース
新築住宅を購入し、住宅ローン残高が控除額の上限以下の場合の計算例である。
【条件】
- 新築住宅を購入
- 住宅ローン残高:3,000万円
- 所得税額:50万円
- 住民税額:30万円
この条件の下で、住宅ローン控除額を計算すると以下のようになる。
【控除額】3,000万円 × 0.7% = 21万円
住宅ローン残高が控除額の上限以下であるため、計算式をそのまま適用できる。算出された控除額21万円は、まず所得税額から控除される。
【還付金額】所得税額50万円 – 控除額21万円 = 29万円
控除額21万円は所得税額50万円の範囲内であるため、全額が所得税から控除される。所得税で控除しきれない残額がないため、住民税からの控除は発生しない。
以上の計算により、この標準的なケースでは、住宅ローン控除によって所得税が21万円減額されることがわかる。住宅ローン残高が控除額の上限以下であり、かつ控除額が所得税額の範囲内であるため、計算式を単純に適用できる点がポイントである。
住宅ローン残高が上限を超えるケース
住宅ローン残高が控除額の上限を超える場合の計算例を見てみよう。
【条件】
- 新築住宅を購入
- 住宅ローン残高:5,000万円
- 所得税額:50万円
- 住民税額:30万円
- 控除額の上限:4,000万円(新築住宅の場合)
この条件の下で、住宅ローン控除額を計算すると以下のようになる。
【控除額】5,000万円 × 0.7% = 35万円
ただし、新築住宅の場合、控除額の上限は4,000万円である。住宅ローン残高が控除額の上限を超えているため、計算式で算出された金額をそのまま控除額とすることはできない。
【控除額】4,000万円 × 0.7% = 28万円
控除額は、住宅ローン残高ではなく、控除額の上限に基づいて計算される。算出された控除額28万円は、まず所得税額から控除される。
【還付金額】所得税額50万円 – 控除額28万円 = 22万円
控除額28万円は所得税額50万円の範囲内であるため、全額が所得税から控除される。所得税で控除しきれない残額がないため、住民税からの控除は発生しない。
以上の計算により、住宅ローン残高が控除額の上限を超える場合、控除額は上限額に基づいて計算されることがわかる。住宅ローン残高が高額であっても、必ずしも控除額が大きくなるわけではない点がポイントである。
所得税額が控除額よりも少ないケース
算出された控除額が、実際の所得税額よりも大きい場合の計算例を見てみよう。
【条件】
- 新築住宅を購入
- 住宅ローン残高:3,000万円
- 所得税額:20万円
- 住民税額:30万円
この条件の下で、住宅ローン控除額を計算すると以下のようになる。
【控除額】3,000万円 × 0.7% = 21万円
算出された控除額21万円は、実際の所得税額20万円よりも大きい。この場合、所得税からは実際の所得税額までしか控除されない。
【還付金額】所得税額20万円 – 控除額21万円 = -1万円(控除額が所得税額を超過)
所得税で控除しきれない残額1万円は、翌年の住民税から控除される。翌年の住民税額が30万円であれば、
【控除額】住民税額30万円 – 控除残額1万円 = 29万円
住民税額が控除残額よりも大きいため、控除残額全額が住民税から控除される。
以上の計算により、控除額が所得税額よりも大きい場合、所得税からは実際の所得税額までしか控除されず、残額は翌年の住民税から控除されることがわかる。ただし、控除残額が翌年の住民税額よりも大きい場合は、住民税からも全額を控除することはできない点に注意が必要である。
住宅の種類による上限の違い
住宅の種類によって控除額の上限が異なるケースの計算例を見てみよう。
【条件1】長期優良住宅・低炭素住宅の場合(2024年入居)
- 長期優良住宅または低炭素住宅を新築
- 子育て世帯または若者夫婦世帯
- 住宅ローン残高:5,000万円
- 所得税額:50万円
- 住民税額:30万円
- 控除額の上限:5,000万円
【条件2】ZEH水準省エネ住宅の場合(2024年入居)
- ZEH水準省エネ住宅を新築
- 子育て世帯または若者夫婦世帯
- 住宅ローン残高:4,500万円
- 所得税額:50万円
- 住民税額:30万円
- 控除額の上限:4,500万円
条件1の長期優良住宅・低炭素住宅の場合、住宅ローン控除額は以下のように計算される。
【控除額】5,000万円 × 0.7% = 35万円
長期優良住宅・低炭素住宅で子育て世帯または若者夫婦世帯の場合、2024年の控除額の上限は5,000万円であり、住宅ローン残高がこの上限以下であるため、計算式をそのまま適用できる。一方、条件2のZEH水準省エネ住宅の場合、住宅ローン控除額は以下のように計算される。
【控除額】4,500万円 × 0.7% = 31.5万円
ZEH水準省エネ住宅で子育て世帯または若者夫婦世帯の場合、2024年の控除額の上限は4,500万円であり、住宅ローン残高がこの上限以下であるため、計算式をそのまま適用できる。
以上の計算により、2024年に新築された住宅でも、長期優良住宅・低炭素住宅とZEH水準省エネ住宅では控除額の上限が異なるため、控除額に差が生じることがわかる。住宅の性能等によって控除額の上限が設定されている点がポイントである。
入居年による上限の違い
入居年によって控除額の上限が異なるケースの計算例を見てみよう。
【条件1】一般の新築住宅の場合(2023年入居)
- 一般の新築住宅を購入
- 2023年入居
- 住宅ローン残高:3,000万円
- 所得税額:50万円
- 住民税額:30万円
- 控除額の上限:3,000万円
【条件2】一般の新築住宅の場合(2024年以降入居)
- 一般の新築住宅を購入
- 2024年以降入居
- 住宅ローン残高:3,000万円
- 所得税額:50万円
- 住民税額:30万円
- 控除額の上限:0円(2023年までに建築確認を受けた場合は2,000万円)
条件1の2023年入居の場合、住宅ローン控除額は以下のように計算される。
【控除額】3,000万円 × 0.7% = 21万円
2023年入居の一般の新築住宅の場合、控除額の上限は3,000万円であり、住宅ローン残高がこの上限以下であるため、計算式をそのまま適用できる。一方、条件2の2024年以降入居の場合、住宅ローン控除額は以下のように計算される。
【控除額】0円 × 0.7% = 0円
2024年以降入居の一般の新築住宅の場合、原則として住宅ローン控除の対象外となるため、控除額は0円となる。ただし、2023年までに建築確認を受けた場合は、控除額の上限が2,000万円となる。
以上の計算により、一般の新築住宅の場合、2023年入居と2024年以降入居では控除額の上限に大きな違いがあることがわかる。2024年以降入居の場合、原則として住宅ローン控除の適用を受けられなくなるため、注意が必要である。
住宅ローン控除の申告手続き
住宅ローン控除を受けるためには、確定申告を行う必要がある。ここでは、申告手続きに必要な書類の準備方法、確定申告書の記入方法、申告方法と期限について解説する。
専門家のワンポイントアドバイス:
確定申告の際は、住宅借入金等特別控除額の計算明細書の記入漏れや誤りがないようにご注意ください。
必要書類の準備
住宅ローン控除の申告に必要な書類は、住宅の種類によって異なる。ここでは、共通して必要な書類と、住宅の種類ごとに必要な個別の書類、および認定長期優良住宅等の場合に追加で必要な書類を表にまとめた。
住宅ローン控除の申告に共通して必要な書類
書類名 | 備考 |
マイナンバーを確認するための本人確認書類 | 添付または提示 |
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | – |
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 | – |
住宅の種類ごとに必要な個別の書類
住宅の種類 | 必要書類 |
新築一戸建て | 1. 住宅の登記事項証明書(原本)※1 2. 住宅の売買契約書または工事請負契約書などの写し 3. 土地の登記事項証明書(原本)※1 4. 土地の売買契約書の写し |
中古一戸建て | 1. 住宅の登記事項証明書(原本)※1 2. 住宅の売買契約書の写し 3. 土地の登記事項証明書(原本)※1 4. 土地の売買契約書の写し |
新築マンション | 1. 住宅の登記事項証明書(原本)※1 2. 住宅の売買契約書の写し |
中古マンション | 1. 住宅の登記事項証明書(原本)※1 2. 住宅の売買契約書の写し |
買取再販一戸建て | 1. 住宅の登記事項証明書(原本)※1 2. 住宅の売買契約書の写し 3. 土地の登記事項証明書(原本)※1 4. 土地の売買契約書の写し 5. 増改築等工事証明書 6. 既存住宅売買瑕疵担保責任保険の保険付保証明書(該当する場合) |
買取再販マンション | 1. 住宅の登記事項証明書(原本)※1 2. 住宅の売買契約書の写し 3. 増改築等工事証明書 4. 既存住宅売買瑕疵担保責任保険の保険付保証明書(該当する場合) |
認定長期優良住宅等の場合に追加で必要な書類
住宅の種類 | 追加で必要な書類 |
認定長期優良住宅 | 1. 長期優良住宅建築等計画等の認定通知書の写し 2. 住宅用家屋証明書(写し可)または認定長期優良住宅建築証明書 |
低炭素住宅 | 1. 低炭素建築物新築等計画の認定通知書の写し 2. 住宅用家屋証明書(写し可)または認定低炭素住宅建築証明書 |
低炭素建築物とみなされる特定建築物 | 特定建築物用の住宅用家屋証明書 |
ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅 | 住宅省エネルギー性能証明書または建設住宅性能評価書の写し |
申告の際は、これらの書類を揃えておくことが重要である。不明な点があれば、税務署や住宅ローンを扱う金融機関に問い合わせるとよい。
確定申告書の記入方法
確定申告書の記入にあたっては、特に以下の数値・金額を正確に記入する必要がある。
- 住宅の取得対価の額
- 住宅借入金等の年末残高
- 住宅の面積
- 住宅の取得年月日
- 居住開始年月日
- 住宅借入金等特別控除額
これらの数値は、住宅借入金等特別控除額の計算明細書に記入し、その金額を確定申告書第二表の「住宅借入金等特別控除額」欄に転記する。確定申告書の記入に必要な主な数値・金額は以下の通りである。
- 住宅の取得対価の額
- 住宅の購入価格や建築費用の総額を指す。
- 土地の取得費用は含めない。
- 消費税や付帯費用も含める。
- 住宅借入金等の年末残高
- 住宅ローンの年末(12月31日)時点の残高を指す。
- 金融機関から発行される年末残高証明書で確認する。
- 住宅の取得に関連する借入金のみを対象とする。
- 住宅の面積
- 家屋の床面積を指す。
- 登記事項証明書や売買契約書で確認する。
- バルコニーなどの非課税部分は除外する。
- 住宅の取得年月日
- 新築住宅の場合は、引き渡し日や登記日を指す。
- 中古住宅の場合は、売買契約日や所有権移転登記日を指す。
- 登記事項証明書や売買契約書で確認する。
- 居住開始年月日
- 実際に住宅に入居し、生活を開始した日付を指す。
- 引っ越し日や住民票の異動日が基準となる。
- 住宅借入金等特別控除額
- 住宅ローン控除の金額を指す。
- 「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」で計算する。
- 各年の所得税額と住民税額の合計が上限となる。
以上の数値・金額は、確定申告書や住宅借入金等特別控除額の計算明細書の該当箇所に記入する必要がある。記入の際は、関連書類で数値を確認し、単位や端数処理に注意することが重要である。
専門家のワンポイントアドバイス:
年末調整で控除を受ける場合でも、初年度は確定申告が必要です。期限を確認し、早めの準備を心がけましょう。
申告方法と期限
住宅ローン控除の申告は、自宅や職場から郵送する方法と、税務署に直接提出する方法がある。e-Taxを利用したオンラインでの申告も可能である。申告期限は、毎年2月16日から3月15日までである。
期限までに申告を完了させることで、住宅ローン控除による税額控除を受けることができる。確定申告は納税者の重要な義務であり、期限を守って適切に行うことが求められる。
注意点
住宅ローン控除の適用を受ける際には、いくつかの注意点がある。ここでは、初年度の申告時の留意点、年末調整との関係、諸費用の取り扱いについて解説する。
初年度の申告時の留意点
住宅ローン控除の適用を受ける初年度には、確定申告が必要である。この際、以下の点に留意する必要がある。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書を正確に作成し、添付する。
- 住宅の取得や借入金に関する証明書類を揃えて提出する。
初年度の申告漏れや書類の不備は、控除の適用に影響を与える可能性があるため、注意が必要である。
年末調整との関係
住宅ローン控除の適用を受ける際、年末調整との関係について理解しておく必要がある。初年度は必ず確定申告が必要だが、2年目以降は年末調整で控除を受けることができる。ただし、年末調整で控除を受けるためには、以下の条件を満たす必要がある。
- 前年分の確定申告で住宅ローン控除の適用を受けていること。
- 年末調整の対象となる給与所得のみであること。
- 勤務先に「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」を提出すること。
年末調整で控除を受けられない場合は、確定申告が必要である。
諸費用の取り扱い
住宅の取得に際して支払った諸費用のうち、住宅ローン控除の計算に含められるものと含められないものがある。住宅ローン控除の計算に含められる主な諸費用は以下の通りである。
- 住宅と一体として取得した電気設備、給排水設備、衛生設備、ガス設備等の附属設備の取得対価
- 住宅の取得日から入居日までの間に行った修繕費用や耐震改修費用
- マンションの共用部分のうち、自分の持分に係る部分の取得対価
一方、以下の費用は控除の計算に含められない。
- 割賦払いの手数料や利息
- 上棟式費用、地鎮祭費用
- 登記費用、仲介手数料
- 売買契約書等の印紙代
- 不動産取得税、登録免許税
ただし、家屋と併せて同一の者から取得した門、塀等の構築物、電気器具、家具、車庫等については、その取得対価が家屋の取得対価と合計した金額の10%未満であれば、家屋の取得対価に含めることができる。
住宅ローン控除の計算に含められる取得対価は、あくまで住宅の請負代金や購入代金が基本である。住宅の取得に関連して支払った諸費用については、税法上の取り扱いを確認し、適切に判断する必要がある。不明な点がある場合は、税理士等の専門家に相談するとよい。
参考:国税庁「住宅用家屋の新築等の対価又は増改築等の費用の範囲」
参考:国税庁「住宅の取得に併せて購入したカーテン等の取得対価」
参考:国税庁「門や塀等の取得対価の額」
まとめ
住宅ローン控除は、住宅取得者の税負担を大幅に軽減できる有益な制度である。控除額の計算方法や必要書類の準備など、手続きは複雑な面もあるが、事前に十分理解しておくことが重要である。特に、住宅の種類や入居年によって控除額の上限が異なる点や、諸費用の取り扱いについては注意が必要である。手続きに不安がある場合は、専門家に相談し、アドバイスを得ることをおすすめする。
- Q住宅ローン控除を受けるための所得要件はありますか?
- A
はい、合計所得金額が2,000万円以下であることが条件の一つです。
- Q住宅ローン控除の適用を受けるために、住民票の異動は必須ですか?
- A
はい、住宅取得後6ヶ月以内に住民票を異動し、住宅ローン控除の適用を受ける住宅に居住する必要があります。
- Q住宅ローン控除の適用期間中に、住宅を売却した場合はどうなりますか?
- A
住宅を売却した年の翌年以降は、住宅ローン控除の適用を受けることができなくなります。
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