新社会人が知っておくべき所得税の仕組み10選

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所得税は、収入に応じて納める税金であり、その仕組みを理解することは、新社会人にとって重要なスキルの一つである。この記事では、新社会人が知っておくべき所得税の基本的な仕組みを、10の項目に分けてわかりやすく解説する。給与所得者に適用される所得控除や税額控除、確定申告の方法など、実践的な知識を身につけることができるだろう。

知っておきたい!所得税の仕組み10選

所得税は、個人の所得に対して課される税金であり、その仕組みを理解することは、効果的な節税対策や将来設計を行う上で重要だである。この記事では、所得税の基本的な仕組みを10の項目に分けて解説し、所得控除や税額控除など、知っておくべきポイントを紹介する。

1. 給与収入は、給与所得として計算される。

よく話題にあがる年収は、給与収入のことで、社会保険料や税金などを含んだ金額である。所得税では、収入の種類ごとに10のタイプに分け、それぞれ計算方法が異なる。給与収入は、給与所得に区分されている。

給与所得の計算において、所得税を求める際には、まず、この給与収入から給与所得控除を差し引くことになる。収入と所得の違い、給与所得控除について理解を深めたい。「所得」は、一般的に税を計算する際に使われる用語である。

給与所得控除は、給与所得を得るために必要な経費があることを考慮し、収入金額に応じて一定額が控除される仕組みである。

この控除額は、収入金額が増加するにつれて逓減していく。たとえば、年収200万円以下の場合は収入金額の40%が控除されるが、年収1000万円超の場合は一律195万円が控除される。

給与所得 = 収入金額 – 給与所得控除額

給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額)給与所得控除額
1,625,000円まで550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円(上限)
※国税庁「No.1410 給与所得控除

2. 所得税の税率は超過累進税率で、所得が高くなるほど税率が高くなる仕組みになっている。

所得税の税率は、課税される所得金額に応じて段階的に高くなる超過累進税率が適用される。超過累進税率とは、所得金額が一定の基準を超えるごとに、超過部分に対して高い税率が適用される仕組みである。

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超 330万円以下10%97,500円
330万円超 695万円以下20%427,500円
695万円超 900万円以下23%636,000円
900万円超 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円
※国税庁「No.2260 所得税の税率

この速算表を使えば、所得金額から直接税額を計算できる。

たとえば、課税される所得金額が400万円の場合、次のようになる。

 所得税額 = (400万円 × 20%) – 427,500円 = 372,500円

同様に、課税される所得金額が2,500万円の場合は、次のようになる。

 所得税額 = (2,500万円 × 40%) – 2,796,000円 = 7,204,000円

このように、所得金額が高くなるにつれ、税率も上がる仕組みである。

3. 所得控除として、一定の条件を満たす支出を所得から差し引くことができる。

給与収入から給与所得控除を差し引くことを説明したが、さらに所得控除を差し引くことができる。差し引くことができる控除額が大きいほど、所得税額の負担を抑えられる。配偶者控除などのように、一定の要件を満たさなければ適用できない控除がほとんどだが、基礎控除は条件なく誰でも控除でき、社会保険料控除は社会保険料が天引きされているため、誰でも控除できると考えてよいだろう。

  • 基礎控除:納税者全員に適用される最も基本的な控除で、48万円が控除される。
  • 社会保険料控除:納税者が払った社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料など)を所得から差し引くことができる控除である。

4. 条件を満たせば適用される、そのほかの所得控除

基礎控除や社会保険料控除以外にも、要件を満たせば適用できる控除があり、よく利用されているものもある。


<所得控除一覧>

所得控除の種類内容控除額
雑損控除災害や盗難などで生じた損失に適用(一定の条件あり)損失額 – 保険金などで補填された金額 – 10万円
医療費控除納税者や家族の医療費が一定額を超えた場合に適用(医療費の合計額 – 保険金などで補填された金額)- (総所得金額等の5%または10万円のいずれか少ない方)
社会保険料控除社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料など)を支払っている場合に適用支払った社会保険料の全額
小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済や個人型確定拠出年金の掛金を支払っている場合に適用支払った掛金の全額
生命保険料控除生命保険や個人年金保険などの保険料を支払っている場合に適用一般の生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料それぞれについて、支払額に応じて定められた控除額
地震保険料控除地震保険料を支払っている場合に適用支払った地震保険料の全額(最高5万円まで)
寄附金控除特定の団体に寄附をした場合に適用(寄附金額 – 2,000円)か、所得金額の40%のいずれか低い金額
障害者控除納税者本人またはその扶養親族が障害者である場合に適用27万円(普通障害者)、40万円(特別障害者)
寡婦控除一定の条件を満たす寡婦に適用27万円(特定の寡婦は35万円)
ひとり親控除一定の条件を満たすひとり親に適用35万円
勤労学生控除一定の条件を満たす勤労学生に適用27万円
配偶者控除一定の条件を満たす配偶者がいる場合に適用38万円
配偶者特別控除一定の条件を満たす配偶者がいる場合に適用配偶者の所得金額に応じて38万円から12.5万円
扶養控除扶養家族がいる場合に適用38万円(一般の扶養親族)、63万円(特定扶養親族)、58万円(老人扶養親族)など
基礎控除全ての納税者に適用48万円
※国税庁「No.1100 所得控除のあらまし

上記のうち、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、地震保険料控除は、将来に備えた支出であり、支払った金額そのまま控除できるため、意識しておくとよい。なお、iDeCoの掛金は、小規模企業共済等掛金控除の対象である。

5. 所得控除と税額控除の両方の性質があるふるさと納税の控除

ふるさと納税は、自分が応援したい自治体に寄附を行うことで、税額控除や所得控除を受けられる制度である。ふるさと納税を活用することで、実質的な税負担を軽減しつつ、地方自治体を支援することができる。

ふるさと納税による控除は、次の二段階で構成されている。

  1. 所得税の控除(所得控除)
    • ふるさと納税額のうち2,000円を超える部分について、所得控除が適用される。
    • 所得控除額は、(ふるさと納税額 – 2,000円)と総所得金額等の40%のいずれか低い金額となる。
  2. 住民税の控除(税額控除)
    • 所得税で控除しきれなかった金額について、翌年度の住民税から控除される。
    • 税額控除額は、(ふるさと納税額 – 2,000円)と住民税所得割額の20%のいずれか低い金額となる。

ふるさと納税の仕組みを理解し、適切に活用することで、税負担の軽減と地方自治体の支援を両立することができる。一方で、控除額の計算や確定申告の手続きなど、一定の手間がかかることにも留意が必要である。

6. 住宅ローン控除などの税額控除がある。

所得控除とは別に、税額控除という仕組みがある。税額控除は、所得税や住民税から直接税額を差し引くことができる制度である。所得控除が課税所得を減らすのに対し、税額控除は直接的に税額を減らすことができる。

おもな税額控除には、次のようなものがある。

  1. 住宅ローン控除:住宅の取得や建築、増改築などのために借り入れた住宅ローンの残高に応じて、一定期間、所得税と住民税から控除を受けられる制度
  2. 外国税額控除:海外で納めた所得税について、一定の条件の下で日本の所得税や住民税から控除を受けられる制度
  3. 配当控除:配当所得に対して、一定の計算に基づいて所得税や住民税から控除を受けられる制度
  4. 寄附金税額控除:特定の公益法人等に寄附した場合、一定の計算に基づいて所得税や住民税から控除を受けられる制度

税額控除の仕組みを理解し、適切に活用することで、税負担の軽減を図ることができる。一方で、適用条件の確認や確定申告の手続きなど、控除によっては一定の手間がかかることにも留意が必要である。

7. 源泉徴収は、あらかじめ予測する所得税を前もって納める仕組み

源泉徴収とは、所得税の納付方法の一つで、所得が発生した際に、企業などの支払者が所得税を差し引いて国に納付する仕組みである。これにより、納税者は所得税を前もって納めることになる。

源泉徴収の対象となるおもな所得には、以下のようなものがある。

  1. 給与所得:会社員やパートタイマーなどが受け取る給与や賞与
  2. 退職所得:退職金や一時恩給など
  3. 公的年金等:老齢年金や遺族年金など
  4. 利子所得:預貯金の利子や公社債の利子など
  5. 配当所得:株式の配当金など

支払者は、所得税法に定められた税率表に基づいて源泉徴収税額を計算し、所得の支払い時に差し引いて国に納付する。

源泉徴収には次のようなメリットがある。

  • 納税者は、毎月の給与などから所得税を差し引かれるため、年末に一括して納税する必要がない
  • 支払者が税額の計算と納付を行うため、納税者の手間が省ける
  • 所得発生時に課税されるため、所得の把握が容易になり、税収の安定化につながる

ただし、源泉徴収された所得税が年間の所得税額と一致するとは限らない。年末調整や確定申告により、源泉徴収された所得税と実際の所得税額との過不足を精算する必要がある

8. 年末調整は、1年間の所得と所得控除を精算し、過不足分を調整する手続きである。

年末調整とは、1年間の給与所得について、源泉徴収された所得税額と実際の所得税額との過不足を精算する手続きである。この手続きにより、1年間の所得と所得控除を確定し、過不足分を調整している。

会社は、提出された書類をもとに、従業員の1年間の所得と所得控除を計算し、所得税額を確定する。その上で、源泉徴収税額との過不足を精算し、従業員への還付や追加徴収を行う。

年末調整を適切に行うことで、以下のようなメリットがある。

  • 所得税額が正確に確定されるため、追加の納税や還付手続きを最小限に抑えられる
  • 確定申告が不要な場合があるため、手続きの手間を省くことができる

ただし、年末調整の対象となるのは、原則として給与所得のみである。給与所得以外の所得がある場合や、年末調整だけでは所得税額が確定できない場合は、確定申告が必要となる。

9. 所得税は、給与所得、事業所得、不動産所得など、10種類の所得区分に分けられる。

所得税は、個人の所得に対して課される税金であるが、所得の種類によって、課税方法や控除の適用が異なる。所得税法では、所得を10種類に区分しており、それぞれの所得区分に応じた課税が行われる。

10種類の所得区分は、次のとおりである。

所得区分内容主な例
利子所得預貯金等の利子預貯金の利子、公社債の利子
配当所得株式等の配当株式の配当金、投資信託の収益の分配
不動産所得不動産の賃貸収入等不動産の賃貸収入、地代、家賃
事業所得事業から生じる所得農業、漁業、製造業、小売業などの事業所得
給与所得給与、賞与等会社員やパートタイマーなどが受け取る給与や賞与
退職所得退職により一時に受ける所得退職金、一時恩給
山林所得山林の伐採等による所得山林の伐採による所得、立木の販売による所得
譲渡所得資産の譲渡による所得土地や建物、株式等の資産を譲渡したことによる所得
一時所得一時的な所得懸賞や福引の賞金、生命保険の一時金
雑所得他の所得区分に当てはまらない所得公的年金等、著作権の使用料、原稿料、講演料
※国税庁「No.1300 所得の区分のあらまし

それぞれの所得区分ごとに、所得金額の計算方法や適用される控除が定められている。たとえば、給与所得には給与所得控除が適用され、不動産所得では必要経費を控除できる。

所得区分の仕組みを理解することで、自分の所得がどの区分に当てはまるのかを判断し、適切な申告や節税対策を行うことができる。また、各所得区分の課税方法や控除の適用についても理解を深めることが重要である。

10. 給与収入から税額を算出するまでの手順、所得控除と税額控除の違い

給与収入から所得税の税額を算出するまでには、いくつかの手順を踏む必要がある。以下に、その手順と計算式を示す。

  1. 給与所得金額 = 給与収入 – 給与所得控除額
    :給与収入から給与所得控除額を差し引き、給与所得金額を算出する。
  2. 課税所得金額 = 給与所得金額 – 所得控除
    :給与所得金額から、各種所得控除を差し引き、課税所得金額を算出する。
  3. 税額 = 課税所得金額 × 税率 – 控除額
    :課税所得金額に税率を適用し、所得税額を算出する。
  4. 所得税額 = 税額 – 税額控除
    :所得税額から税額控除を差し引き、最終的な所得税額を算出する。

ここで、所得控除と税額控除の違いに注目したい。

  • 所得控除:課税所得金額を算出する際に、所得金額から差し引かれる控除。課税所得金額を減らすことで、間接的に税額を減らす効果がある。
  • 税額控除:所得税額から直接差し引かれる控除。所得税額を直接減らす効果がある。

所得控除は課税所得金額を減らすことで税額を減らすのに対し、税額控除は直接税額を減らすという点で異なる。

所得税の仕組みを理解できる計算例

所得税の計算方法は、一見複雑そうに見えるが、基本的な流れを掴むことで、誰でも理解することができる。ここでは、会社員・公務員を対象に、給与所得者の所得税計算の具体例を示す。各ステップごとの計算方法を丁寧に解説し、所得控除や税額控除の適用方法についてもわかりやすく説明する。

独身者の給与収入600万円

ここでは、独身者で給与収入が600万円の場合を例に、所得税の計算方法を解説する。このケースでは、基礎控除と社会保険料控除のみを考慮するシンプルな設定とする。

項目計算式金額
給与所得金額6,000,000円 – 1,700,000円4,300,000円
課税所得金額4,300,000円 – (480,000円 + 970,000円)2,850,000円
所得税額2,850,000円 × 20% – 427,500円142,500円
最終的な所得税額142,500円 – 0円142,500円

控除が所得控除の基礎控除と社会保険料控除のみの場合で、給与収入600万円なら、所得税が約14.2万円かかることがわかる。

子育て世帯の給与収入600万円

ここでは、子育て世帯で給与収入が600万円の場合を例に、所得税の計算方法を解説します。このケースでは、配偶者控除や扶養控除、住宅ローン控除を考慮した一般的な設定とします。

配偶者控除や扶養控除がある一般的なケース

妻が専業主婦で、子供が2人(中学生と高校生)いる世帯を想定します。この場合、配偶者控除と扶養控除が適用されます。

項目計算式金額
給与所得金額6,000,000円 – 1,700,000円4,300,000円
課税所得金額4,300,000円 – (480,000円 + 970,000円 + 380,000円 + 380,000円)2,090,000円
税額2,090,000円 × 10% – 97,500円111,500円
所得税額111,500円 – 0円111,500円

この例では、基礎控除(48万円)、社会保険料控除(97万円)に加えて、配偶者控除(38万円)、扶養控除(中学生なし、高校生38万円)が適用されています。その結果、課税所得金額が減少し、所得税額は低く抑えられています。

住宅ローン控除がある一般的なケース

先ほどのケースに加えて、住宅ローン控除がある場合を考えます。住宅ローン残高が3,000万円、年間の返済額が100万円と仮定します。

項目計算式金額
給与所得金額6,000,000円 – 1,700,000円4,300,000円
課税所得金額4,300,000円 – (480,000円 + 970,000円 + 380,000円 + 380,000円)2,090,000円
税額2,090,000円 × 10% – 97,500円111,500円
住宅ローン控除額30,000,000円 × 0.7%210,000円
所得税額111,500円 < 210,000円0円

住宅ローン控除の控除率を0.7%として計算し、住宅ローン残高が3,000万円の場合、控除額は210,000円となり、最終的な所得税額は0円になります。

住宅ローン控除は、一定の条件を満たす場合に適用され、所得税額から直接差し引かれる。今回のように、控除額が所得税額を上回る場合、その差額は翌年度の住民税から控除される。

所得税の仕組みを理解している人の節税術

所得税の仕組みを理解することは、効果的な節税対策を行う上で重要である。ここでは、控除の仕組みを活用した保険の選択と、iDeCoを利用した節税術について紹介する。

控除の仕組みを理解して加入する保険

生命保険料控除や地震保険料控除など、保険料の支払いによって受けられる所得控除がある。これらの控除は、所得金額から一定の金額を差し引くことができるため、課税所得金額を減らし、所得税額を抑えることにつながる。

保険に加入する際は、保障内容だけでなく、税制上の優遇措置も考慮に入れることが賢明である。所得控除の対象となる保険を選択することで、将来に備えつつ、節税効果も享受できる。

ただし、保険の選択は、自身のライフプランや必要な保障内容に基づいて総合的に判断することが大切である。節税効果だけを重視するのではなく、適切な保障を確保することを第一に考えるべきである。

iDeCoを利用した節税術

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自助努力による老後の資金準備を支援する制度である。iDeCoに掛金を拠出することで、所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の適用を受けられる

所得控除の適用により、課税所得金額が減少し、所得税額を抑えることが可能である。さらに、iDeCoの運用益は非課税であり、老後の資産形成に有利に働く。

ただし、iDeCoには加入条件や拠出限度額などの制約がある。自身の状況に合わせて、適切な金額を拠出することが大切である。また、長期的な視点を持ち、老後の生活設計に沿った運用を行うことが必要がある。

保険も年金も、所得税の仕組みを理解していると、自らの支出が意味することも理解しやすくなる。節税のためだけに、保険やiDeCoに加入する必要はないが、許容範囲で、最大限の節税ができるように考えられる。

まとめ

所得税の仕組みを理解し、保険料控除やiDeCoの所得控除を活用することで、節税と将来への備えを両立できる。ただし、節税効果だけでなく、自身のライフプランに合わせた適切な保障や運用を選択することが重要である。所得税の知識を深め、賢明な判断を下すことが、効果的な節税対策につながる。

執筆者・監修者
十河 賢

◇経歴10年以上のウェブライター&ファイナンシャルプランナー
◇CFP保有者・SEO検定1級・宅建士・住宅ローンアドバイザー

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