暗号資産投資を検討する際には、そのメリットとデメリットを十分に理解することが重要である。
暗号資産は、高いリターンの可能性がある一方で、価格変動リスクが高いことを認識しておく必要がある。また、自身のリスク許容度を把握し、損切りルールを設定することが、適切なリスク管理につながる。暗号資産投資では、分散投資の重要性も忘れてはいけない。
複数の銘柄や他の資産クラスとの組み合わせにより、ポートフォリオ全体のリスクを管理することが可能となる。さらに、暗号資産市場は急速に変化するため、常に最新の情報をアップデートし、的確な投資判断を行うことが求められる。
以上の点を踏まえ、自身の投資目的や知識レベルに合わせて、慎重に暗号資産投資を検討していくことが肝要である。
暗号資産に投資するかどうか、投資するならどのくらいの規模にするかなど、判断するためには暗号資産のメリット・デメリットをまとめることから始めたい。メリット・デメリットを確認し、デメリットよりもメリットのほうが重要で、デメリットへの対応ができるのであれば、暗号資産を投資先に選んだ方がよいかもしれない。
暗号資産とは
暗号資産は、ブロックチェーン技術を活用した新しい決済・投資手段である。暗号資産は、中央集権的な管理者が存在せず、P2Pネットワークで取引が行われるのが特徴である。ビットコインに代表される暗号資産は、送金の手軽さ、取引の透明性、価格の変動性などにより注目を集めている。
暗号資産の定義と概要
暗号資産とは、暗号技術を用いて取引を記録・管理するデジタル資産である。暗号資産は、価値の保存や決済手段としての機能を持ち、分散型台帳技術であるブロックチェーンを基盤としている。暗号資産は、国家の通貨とは異なり、中央集権的な管理者が存在しない点が特徴である。
ブロックチェーン技術の仕組みと特徴
ブロックチェーンは、取引データを複数のシステムが分散して保存・管理する技術であり、データの信頼性を高める分散台帳技術とも呼ばれる。ブロックチェーンでは、取引データが複数のシステムによって分散的に管理されるため、中央管理システムの単一障害点がなく、システム全体の可用性が高い。また、ブロックチェーンのデータは、暗号技術により改ざんが極めて困難である。
暗号資産を取り巻く背景と現状
暗号資産は、2008年のビットコイン誕生以降、様々な種類の暗号資産が登場し、市場が拡大している。当初は決済手段としての利用が主目的であったが、現在では投資対象としても注目されている。各国の規制当局も暗号資産に対する規制を整備しつつある。暗号資産の価格は短期間で大きく変動することがあり、投資リスクが高い一方で、高いリターンを得られる可能性もあるとして、投資家の関心を集めている。
暗号資産のメリット
暗号資産は、従来の金融資産とは異なる特徴を持ち、投資対象としての魅力があると言える。高いリターンの可能性、ポートフォリオの分散効果、優れた流動性と利便性、インフレーションに対する耐性などが、暗号資産投資の主なメリットである。
高いリターンの可能性
暗号資産の価格は、短期的に大きく変動することがある。この価格の変動性は、高いリターンをもたらす可能性を秘めている。ただし、価格変動のリスクも高いため、投資家はリスク管理を徹底する必要がある。
ポートフォリオの多様化
暗号資産は、株式や債券などの伝統的な金融資産とは価格の動きが異なる傾向がある。このため、暗号資産を投資ポートフォリオに組み入れることで、リスク分散効果が期待できる。
高い流動性と利便性
暗号資産は、24時間365日取引が可能であり、世界中のどこからでも取引ができる。また、少額からの投資が可能で、取引コストが低いという利点もある。この高い流動性と利便性は、投資家にとって魅力的である。
インフレーション抑制効果
多くの暗号資産は、発行上限枚数が予めプログラムされており、インフレーションが起こりにくい設計となっている。このため、暗号資産は、インフレーションに対する耐性があると言える。法定通貨の価値が下落した場合でも、暗号資産の価値は維持される可能性がある。
暗号資産のデメリット
暗号資産は、高いリターンの可能性がある一方で、様々なリスクを内包している。価格の変動性、規制の不確実性、セキュリティリスク、特有の知識と経験の必要性など、投資家が理解しておくべきデメリットがある。
価格の高い変動性
暗号資産の価格は、短期間で大きく変動することがある。この価格変動リスクは、投資家にとって大きなデメリットである。価格下落時に適切な対応ができなければ、大きな損失を被る可能性がある。
規制の不確実性
暗号資産に対する規制は、各国で異なり、また変更される可能性がある。規制の変更によって、暗号資産の価格や取引に影響が生じるリスクがある。投資家は、規制動向を常に注視する必要がある。
セキュリティリスク
暗号資産は、ハッキングや不正アクセスのリスクにさらされている。暗号資産取引所やウォレットのセキュリティ対策が不十分な場合、資産を失う可能性がある。投資家自身も、セキュリティ対策を徹底する必要がある。
特有の知識と経験の必要性
暗号資産は、従来の金融商品とは異なる特性を持つため、投資にはある程度の専門知識と経験が必要である。暗号資産特有のリスクを理解し、適切に管理できなければ、大きな損失を被るリスクがある。投資家は、暗号資産についての理解を深める必要がある。
ブロックチェーン技術
- 分散台帳技術:ブロックチェーンは、取引データを複数のシステムが分散して保存・管理する技術で、データの信頼性を高める分散台帳技術とも言われる。
- データ改ざん防止:ブロックチェーンのデータを改ざんすると、ハッシュ値との整合性がとれなくなる。改ざんを成立させるためには後続するブロックのハッシュ値も全て書き換える必要があるが、それは極めて困難(ほぼ不可能)である。
- システムダウン防止:ブロックチェーンでは、取引データが複数のシステム(端末)によって分散的に管理されている。中央にある単一のシステムが一元的に管理している場合と異なり、そのうちの1つのシステム(端末)がダウンしても、残りの多数の参加者が記録を保持し続けるため、システム全体がダウンすることはない。
- マイニング:ブロックチェーンにおいて新しいブロックに記録するハッシュ値を算出するためには、新たにブロックに含めるトランザクションデータ、そして、この「ナンス」を加え、新たなハッシュ値を生成する。「ナンス」を変えるたびにハッシュ値は変わるため、この「ナンス」を何度も変えながら、あらかじめ決められた条件(先頭に0が一定個数並ぶなど)に合うまでひたすら単純計算を繰り返し、条件を満たす「ナンス」を探し当てる作業がマイニングである。
これらの特性により、ブロックチェーンは取引の公明な記録を残すことができ、その信頼性と透明性が暗号資産の価値を支えている。ただし、新しいデータの記録・削除に時間やコストがかかるなどの課題もある。
暗号資産への投資判断
暗号資産に投資するかどうかを判断する際には、自身のリスク許容度を把握し、損切りルールを設定することが重要である。また、他の投資先との比較を行い、ポートフォリオ全体の中での暗号資産の位置づけを明確にする必要がある。
リスク許容度の把握
リスク許容度とは、投資においてどの程度のリスク(損失のリスク)を受け入れられるかを表す指標のことである。
具体的には、以下の3つの要素から構成されている。
- 経済的な余裕 現在の資産水準や収入からみて、どの程度の損失を許容できるか。貯蓄額が多ければ、比較的大きなリスクを取ることができる。次に紹介するリスク許容度を判定するツールでも質問される項目である。
- 心理的な耐性 実際に損失が発生した際に、どの程度の損失ならメンタル的に耐えられるか。落ち込みすぎないための心理的なライン。収入や貯蓄が多いほど、強い耐性を維持しやすくなる。
- 投資目的と投資期間 老後資金ならリスクを控えめに、一時的な運用なら積極的にリスクを取れる。投資期間が長ければ長いほど、リスクは取りやすい。投資を始めるために、目的を明確にすることが重要である。
これらの要素を総合的に勘案し、自分に合ったリスク許容度を把握することが大切だ。リスク許容度が高ければ高リスク・高リターンの投資ができるが、低ければ安全優先の投資に限定される。
リスク許容度を超えた投資は、心理的にも経済的にも大きな損失を被るリスクがあるため、避けなければならない。リスク許容度を明確にして、暗号資産に投資するのが向いているかどうかの判断をしたい。
リスク許容度診断テストの紹介
一般社団法人 全国銀行協会の公式サイトでは、「あなたのリスク許容度診断テスト」が公開されている。質問は10項目だけなので、簡単に診断できる。
サイトで実施できる診断テストは、正確でないかもしれないが、目安にはなるだろう。複数の診断テストを試して、判断するとよい。
またこの診断結果から、分散投資の重要さもわかる。投資資金のすべてを収益性の高い商品に投資してしまうとリスクは高くなり、安全性の高い商品のみであれば、収益性に期待できない。リスクをおさえながら収益性を高める方法が分散投資である。
加えて、この診断結果のポートフォリオは、数年間維持する必要がある。投資を始めたころは、「40:20:40」という割合でも、数年経つと、「30:10:60」のように変化する。収益性の高い商品の割合が60%になると、リスクは高くなってしまい、リスク許容度を超えてしまう。定期的にメンテナンスをし、必要があれば、商品を入れ替えておこう。
損切りルールの設定
損切りルールとは、あらかじめ許容できる損失の上限を決めておき、その水準に達した時点で確定損失を受け入れ、投資からの撤退を決める基準のことである。人間の感情で取引しないような工夫の一つである。具体的には、次のような設定方法がある。
- 金額ベース:投資した金額全体に対する許容損失額を設定する。たとえば、10万円の投資なら、最大2万円までの損失まで、など。また1銘柄あたりの許容損失額を設定する方法もある。たとえば、1銘柄あたり5,000円を上限とする、など。
- パーセンテージベース:投資額全体に対する損失率を設定する。たとえば、投資総額の5%を上限とする、など。また1銘柄あたりの値下がり率を設定する方法もある。たとえば、購入価格から20%下落したら売却する、など。
- トレールストップ:最高値から一定の下落率を設定する。たとえば、最高値から10%下落したら売却する、など。また上値を更新する度にトレールアップさせ、利益確定ラインを上げていく方法もある。
損切り水準を低く設定すれば、小さな損失で撤退できリスクは抑えられるが、思ったより利益を得られないことがある。 逆に損切り水準を高く設定すれば、一時的な下落に耐え、より大きな利益を得られる可能性はあるが、リスクも高まる。
投資額や投資スタイル、リスク許容度等に応じて、適切な損切りルールを設定することが重要である。損切りルールを設定しても、死守しなければならないわけではなく、状況に合わせて柔軟に対応することも忘れてはならない。
ほかの投資先との比較
大切なことは、暗号資産に投資することではなく、リスク許容度の範囲内におさまる投資先を選び、目標を達成することである。検討した結果、暗号資産への投資が重要となることはあるが、ほかの投資先と比較してからでも遅くない。
株式や債券、不動産などの投資先を組み入れれば、それぞれの値動きは連動せず、一部に損失が出ても、ほかの投資先での値上がり益でカバーできる可能性がある。
また、それぞれの投資対象の特性や利回り、値動きのサイクルが異なれば、機会損失を回避でき、投資のタイミングや売買を工夫すれば、トータルのリターンを高められるチャンスを得られる。
暗号資産に投資を検討する際には、ほかの既存の投資商品との比較は欠かせない。目標達成のために、また自分自身のためにも、バランスの取れた資産運用が重要である。
暗号資産投資に関する注意点
暗号資産投資を行う際には、分散投資の重要性を理解し、適切なリスク管理を行うことが求められる。また、暗号資産市場は急速に変化するため、常に最新の情報をアップデートする必要がある。
分散投資の重要性
暗号資産投資では、特定の銘柄に集中投資するのではなく、複数の銘柄に分散投資することが重要である。分散投資を行うことで、個別銘柄のリスクを軽減し、ポートフォリオ全体のリスクを管理することができる。また、暗号資産だけでなく、他の資産クラスとの分散投資も検討すべきである。
適切なリスク管理
暗号資産投資では、レバレッジの利用には十分な注意が必要である。レバレッジを利用することで、リターンの拡大が期待できる一方、損失のリスクも拡大する。投資家は、自身のリスク許容度を超えないレバレッジ水準を設定し、厳格なリスク管理を行う必要がある。
まとめ
暗号資産には大きなメリットとデメリットがあり、それらをよく理解した上で投資を検討する必要がある。 投資を行う場合は、リスク管理が極めて重要である。分散投資を行い、損切りルールを設定するなどして、リスクをコントロールしなければならない。
暗号資産は新しい技術分野で、メリット・デメリットを冷静に検討し、リスクをしっかり理解した上で臨めば、新たな投資機会を得られる可能性はある。急いで投資するのではなく、投資先として適切であるかどうかを見極めたうえで、決定しよう。
コメント