教育資金贈与の賢い活用法:祖父母からの支援を受ける

子育てママ・パパのための知っておきたい教育資金の準備方法 教育費
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  • 執筆者・監修者:十河 賢
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  • 宅建士(未登録)・住宅ローンアドバイザー
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教育費の負担が年々増加し、多くの家庭が将来の教育資金の確保に頭を悩ませている。子どもの教育のために十分な資金を用意したいと考えていても、現実にはなかなか難しいものである。そこで注目したいのが、祖父母など直系尊属からの教育資金の一括贈与を支援する税制優遇制度である。

この記事では、制度の概要や活用方法、最新の変更点をわかりやすく解説し、教育資金準備の選択肢を広げる。

教育資金の一括贈与制度とは

教育資金の一括贈与制度は、子どもの教育を支援するために設けられた税制優遇措置である。この制度の基本的な仕組みと特徴を理解することで、効果的な活用が可能になる。

制度の概要と適用期限

教育資金の一括贈与制度は、高齢者層の保有する金融資産の若年世代への移転を促し、子供の教育資金の早期確保を図ることを目的としている。この制度は平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に行われる贈与が対象となっている。制度の対象となる贈与者は直系尊属であり、祖父母や父母等が含まれる。また、養父母も対象となるが、配偶者の直系尊属は含まれない。

受贈者は30歳未満の子・孫が対象となるが、所得要件があることに注意が必要である。具体的には、その贈与を受けた日の属する年の前年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える場合は、制度の対象とはならない。

非課税限度額と対象となる教育資金の範囲

この制度における非課税限度額は1,500万円までとなっている。ただし、学校等以外の者に支払われる金額については500万円を限度とする点に留意が必要である。対象となる教育資金は大きく二つに分けられる。一つは学校等に対して直接支払われる費用であり、入学金、授業料、施設設備費などが含まれる。もう一つは学校等以外に支払われる費用で、学習塾、習い事、通学定期券代などが対象となる。

これらの費用は、子どもの教育に幅広く活用できるため、家庭の状況に応じて柔軟な資金計画が立てやすくなっている。

CFP歴10年超
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専門家のワンポイントアドバイス
教育資金の一括贈与制度を利用する際は、贈与者の年齢や健康状態も考慮に入れましょう。将来の相続税の課税リスクにも注意が必要です。

教育資金贈与制度と一般的な贈与の比較

教育資金の一括贈与制度を理解するうえで、一般的な贈与との違いを知ることも重要である。それぞれの特徴を比較することで、状況に応じた適切な選択が可能となる。

一般的な贈与の基本と教育費の取り扱い

一般的な贈与においては、年間110万円までの基礎控除が適用される。この基礎控除は、贈与者と受贈者の関係を問わず適用され、使途の制限もない。つまり、祖父母から孫だけでなく、親から子、他人同士の贈与であっても、年間110万円までは贈与税が課税されない。

一方で、生活費や教育費目的の贈与は、基礎控除とは別に、そもそも贈与税の対象外となる。これは、扶養義務者間(親子間等)で必要の都度支払われる教育資金が、社会通念上妥当と認められる範囲内であれば、贈与税非課税とされるためである。

この教育費に関する取り扱いは、金額に関わらず原則として贈与税は課税されない。ただし、生活費や教育費として社会通念上妥当と認められる金額を超える場合は、超過分が贈与税の対象となる可能性がある。

教育資金贈与制度との違い

教育資金の一括贈与制度と一般的な贈与における教育費の取り扱いには、いくつかの重要な違いがある。教育資金の一括贈与制度は、一般的な贈与とは異なり、まとめて多額の教育資金を非課税で贈与できる点が大きな特徴である。

一般的な贈与では、その都度必要な教育費を贈与することが前提となるが、教育資金の一括贈与制度では最大1,500万円まで一括で贈与することができる。ただし、教育資金の一括贈与制度では使途が教育関連に限定され、領収書等による厳密な確認が必要となる。

また、教育資金の一括贈与制度は30歳未満の子・孫を対象としているが、一般的な贈与における教育費の非課税措置には年齢制限がない。さらに、教育資金の一括贈与制度では専用の口座を開設する必要があるが、一般的な贈与にはそのような手続きは不要である。

これらの違いを踏まえ、家族の状況や教育資金の必要額、贈与の目的などを考慮し、適切な方法を選択することが重要である。基本的にその都度贈与しないと、まとめて贈与してしまうと課税対象になる可能性がある点には特に注意が必要である。また、教育費以外の目的で贈与を行う場合は、年間110万円の基礎控除を活用することも検討すべきである。

CFP歴10年超
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専門家のワンポイントアドバイス
教育資金の一括贈与制度と一般的な贈与を組み合わせることで、より効果的な資産移転が可能になります。家族の状況に応じて最適な方法を選択しましょう。

教育資金の一括贈与を行う手順

制度を利用するには、特定の手続きが必要である。これらの手順を正しく踏むことで、制度のメリットを最大限に活用することができる。

教育資金口座の開設と申告

まず、金融機関で専用の教育資金口座を開設する必要がある。この口座開設時に、教育資金非課税申告書を提出することが重要である。申告書の提出には、戸籍謄本または抄本、住民票の写しなどの書類が必要となる。これらの書類は、受贈者と贈与者の続柄を証明するために用いられる。

なお、令和3年4月1日からは、教育資金非課税申告書等の提出に代えて、金融機関に対し、申告書等に記載すべき事項をインターネット等を利用した方法により提供することも可能となっている。ただし、金融機関によって対応状況が異なるため、詳細は各金融機関に確認する必要がある。

教育資金の支払いと領収書等の提出

教育資金の支払い方法には、直接支払いや払い戻しなどがある。支払いを行った後は、その証明となる領収書等を金融機関に提出する必要がある。領収書等の提出期限は、支払日から一定期間内と定められている。

領収書等には、支払日付、金額、摘要(支払内容)、支払者(宛名)、支払先の氏名(名称)、支払先の住所(所在地)といった事項が記載されている必要がある。これらの情報が不足している場合、非課税対象として認められない可能性があるため、注意が必要である。

制度利用時の注意点と最新の変更

教育資金の一括贈与制度を活用するうえで、いくつかの重要な注意点がある。また、近年制度に重要な変更が加えられている。これらを正しく理解することで、より効果的に制度を活用できる。

CFP歴10年超
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専門家のワンポイントアドバイス
教育資金の一括贈与制度は定期的に見直しが行われるため、最新の情報を常にチェックすることが重要です。国税庁のウェブサイトなどを活用しましょう。

贈与者死亡時の取り扱い

贈与者が死亡した場合、専用口座にある残額の税務上の取り扱いに注意が必要である。平成31年度より、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額のうち一定の部分に対して相続税が課税されることとなった。具体的には、贈与者が死亡した場合、その死亡の日における「管理残額」については、受贈者が贈与者から相続または遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となる。

ただし、贈与者の死亡日において受贈者が23歳未満である場合や、学校等に在学している場合、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合には、相続税は課税されない。また、令和3年4月1日以降に取得した信託受益権等については、受贈者が孫等の場合、管理残額に対応する一定の相続税額に「2割加算」が適用されることとなった。

契約終了時の税務処理

教育資金管理契約は、一定の事由により終了する。契約終了時に残額がある場合、その残額は贈与税の課税対象となる可能性がある。契約終了の事由としては、受贈者が30歳に達した場合、40歳に達した場合、口座残高がゼロになった場合、受贈者が死亡した場合などが挙げられる。

なお、令和元年度の税制改正により、30歳に達した日において学校等に在学している場合や教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合で、金融機関に届出があったときは、最長で40歳に達するまで契約を継続することが可能となった。ただし、40歳に達した場合には、その日をもって教育資金管理契約が終了する。

まとめ:教育資金贈与制度の効果的な活用方法

教育資金の一括贈与制度は、子供の教育資金の早期確保と世代間の資産移転の促進に効果的な手段である。この制度を利用することで、将来の教育費負担を軽減し、子どもたちにより良い教育機会を提供することができる。

制度の活用にあたっては、家族の状況に応じた適切な計画が重要である。たとえば、複数の子どもがいる場合は、それぞれの年齢や教育ニーズを考慮して贈与の時期や金額を検討する必要がある。また、贈与者の年齢や健康状態も考慮に入れ、相続税の課税リスクにも留意すべきである。

制度の詳細や税務上の取り扱いは複雑であるため、活用を検討する際は税理士などの専門家に相談することを強くおすすめする。専門家のアドバイスを受けることで、自身の状況に最適な活用方法を見出すことができる。

最後に、この制度は定期的に見直しや改正が行われるため、常に最新の情報を確認することが大切である。国税庁のウェブサイトなどで、最新の制度内容や変更点をチェックすることをおすすめする。適切な情報収集と専門家の助言を組み合わせることで、教育資金の一括贈与制度を最大限に活用し、子どもたちの未来へ投資することができるだろう。

Q
教育資金の一括贈与制度の対象となる教育費の範囲は何ですか?
A

学校等に直接支払われる入学金や授業料、施設設備費のほか、学習塾や習い事、通学定期券代なども対象となります。ただし、学校等以外への支払いは500万円が上限です。

Q
教育資金の一括贈与制度を利用する際の手続きはどのようなものですか?
A

まず金融機関で専用の教育資金口座を開設し、教育資金非課税申告書を提出します。その後、教育費の支払いを行い、領収書等を金融機関に提出する必要があります。

Q
贈与者が死亡した場合、教育資金口座の残額はどのように扱われますか?
A

原則として、残額は相続税の課税対象となります。ただし、受贈者が23歳未満である場合や学校等に在学している場合などは、相続税が課税されない特例があります。

執筆者・監修者
十河 賢

◇経歴10年以上のウェブライター&ファイナンシャルプランナー
◇CFP保有者・SEO検定1級・宅建士・住宅ローンアドバイザー

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