家計に役立つ金利の種類：政策金利、市場金利、貸出金利の違い｜暮らしと金利

金利は私たちの生活に密接に関わる重要な経済指標である。しかし、その種類や特徴を正確に理解している人は少なく、多くの人が金融に関する意思決定に困難を感じている。

この記事では、政策金利、市場金利、貸出金利の3つの主要な金利について詳しく解説し、それぞれの特徴や影響を明らかにする。これらの金利の仕組みを理解することで、個人投資や住宅ローンの選択など、金融に関する意思決定をより賢明に行うことができるだろう。

政策金利とは？わかりやすく解説！

政策金利は、日本銀行が金融政策の目標として定める金利である。ほかの金利の基準となるベンチマークの役割を果たしており、経済全体に大きな影響を与える。

政策金利の仕組みと種類

政策金利は、日本銀行が景気や物価の動向を見極めながら調整する重要な金融政策のツールである。日本のおもな政策金利には以下のものがある。

1. 無担保コールレート：銀行間の短期資金取引に適用される金利である。日本銀行は、金融調節の誘導目標として無担保コールレートを用いている。
2. 補完当座預金制度の適用金利：日本銀行が金融機関から預かる当座預金の一部に適用される金利である。マイナス金利政策の下では、この金利がマイナスとなっている。

政策金利は、他の金利の基準となるベンチマークの役割を果たしている。日本銀行が政策金利を変更すると、他の金利にも影響が及ぶ。

• 参考：日本銀行「無担保コールレート（オーバーナイト物）とは何ですか？　資金過不足とは何ですか？」
• 参考：日本銀行「補完当座預金制度基本要領」

政策金利とほかの金利との関係・影響

政策金利の変更は、市場金利に直接的な影響を与え、それがほかの金利の変動につながる。政策金利と他の金利との関係は以下のとおりである。

• 短期金利との違い：政策金利の影響を強く受ける。政策金利は中央銀行が決定し、短期金利は市場の需給で決まる点が異なる。
• 長期金利との関係（への影響）：政策金利の変更が将来の経済見通しに影響を与えることで、間接的に影響を受ける。
• 国債金利との関係（への影響）：政策金利の変更が国債の需給バランスに影響を与え、変動につながる。ただし、政策金利以外の要因にも影響される。
• プライムレートとの関係：政策金利を参考に銀行が設定する優良顧客向けの貸出基準金利。政策金利の変更は通常プライムレートの変更につながる。

政策金利が経済に与える影響

政策金利の引き上げは、一般的に景気抑制的に働き、引き下げは景気刺激的に作用する。政策金利の変更が経済に与える主な影響は以下のとおりである。

• 住宅ローン金利への影響：特に変動金利型のローンで影響が顕著。政策金利上昇時は変動金利も上昇傾向。
• 預金金利への影響：政策金利上昇時は預金金利も上昇傾向。ただし、反応の速さや程度は金融機関により異なる。
• 株価への影響（関係）：政策金利引き下げ時は一般的に株価にプラスの影響。ただし、経済見通しにより逆の反応も。
• 為替レートへの影響（関係）：政策金利引き上げは自国通貨高、引き下げは自国通貨安の傾向。ただし、他の要因にも大きく影響される。
• インフレ率への影響（関係）：政策金利引き上げはインフレ抑制的、引き下げはインフレ促進的に作用。

このように、政策金利は経済全体に大きな影響を与える重要な指標であり、その動向を理解することは、個人の家計管理や投資判断においても役立つものである。

市場金利とは？わかりやすく解説！

市場金利は、金融市場における需給によって決定される金利である。政策金利とは異なり、市場参加者の行動や経済状況によって変動する。

市場金利の仕組みと種類

市場金利は、資金の需要と供給のバランスによって決まる金利であり、経済状況や金融政策の影響を受ける。おもな市場金利には以下のものがある

1. 国債利回り：国債の利回りを指す。国債は信用リスクが低いため、国債利回りは安全資産の基準となる金利である。
2. TIBOR（Tokyo Interbank Offered Rate）：東京の銀行間取引における短期の貸出金利である。TIBORは、変動金利型ローンの基準金利としても用いられている。
3. TONA（Tokyo Overnight Average Rate）：翌日物の無担保コール取引の金利の加重平均

これらの市場金利は、さまざまな金融取引の基準となり、経済活動に広く影響を与える。

市場金利と他の金融指標の関係

市場金利は、政策金利や債券価格、為替レートなど、他の金融指標と密接な関係がある。市場金利と他の金融指標の関係は以下のとおりである。

• 政策金利との関係：政策金利の変更が市場金利に影響を与える。ただし、市場の期待や経済状況によって、その影響度は異なる。
• 債券価格への影響：市場金利の上昇は債券価格の下落につながり、低下は債券価格の上昇につながる。
• 為替レートへの影響：金利差が為替レートに影響を与える。一般的に、高金利通貨は強くなる傾向がある。
• 株価への影響：市場金利の変動は企業の資金調達コストや投資家の期待収益率に影響し、間接的に株価に影響を与える。

市場金利の変動要因と影響

市場金利の変動は、経済成長率、インフレ率、金融政策など、さまざまな要因によって引き起こされる。市場金利の主な変動要因と影響は以下のとおりである。

• 経済成長率との関係：経済成長が加速すると資金需要が増加し、市場金利は上昇傾向になる。
• インフレ率との関係：インフレ率の上昇は、一般的に市場金利の上昇につながる。
• 金融政策との関係：中央銀行の金融政策の変更は、市場金利に直接的な影響を与える。
• 国際的な資金の流れ：海外からの資金流入は金利低下圧力に、流出は金利上昇圧力になる。
• 市場の期待：将来の経済見通しや政策予想が市場金利に影響を与える。

市場金利の変動は、以下のような影響をもたらす。

• 住宅ローン金利への影響：特に変動金利型のローンは市場金利の変動の影響を受けやすい。
• 預金金利への影響：市場金利の変動は、銀行の預金金利にも影響を与える。
• 企業の資金調達コスト：市場金利の上昇は企業の借入コストを増加させる。
• 為替レートへの影響：金利差の変動は為替レートの変動要因となる。
• 投資判断への影響：債券や株式などの投資判断に影響を与える。

このように、市場金利の動向を理解することは、個人の資産運用や企業の財務管理において重要な意味を持つ。市場金利の推移や現在の水準、今後の見通しなどを注視することが、適切な金融判断を行ううえで役立つ。

貸出金利

貸出金利は、銀行が企業や個人に資金を貸し出す際に適用する金利である。市場金利や政策金利の影響を受けつつ、借り手の信用リスクなども考慮して決定される。

貸出金利の仕組みと種類

貸出金利は、銀行の資金調達コストや経営状況、借り手の信用力などを考慮して決定される。おもな貸出金利の種類には以下のものがある。

1. プライムレート：優良企業向けの基準金利
2. 短期プライムレート：銀行が優良企業に短期資金を貸し出す際の基準金利である。
3. 長期プライムレート：銀行が優良企業に長期資金を貸し出す際の基準金利である。
4. 住宅ローン金利：銀行が個人に住宅購入資金を貸し出す際の金利である。固定金利型と変動金利型がある。

これらの貸出金利は、経済状況や金融政策の変化に応じて変動する。

貸出金利の決定要因と他の金利との関係

貸出金利は、調達金利、政策金利、市場金利などの影響を受けつつ、銀行が独自に決定する。貸出金利の主な決定要因と他の金利との関係は以下のとおりである。

• 調達金利との関係：銀行が資金を調達する際のコストで、貸出金利との差が銀行の利益となる。
• 政策金利との関係：中央銀行が決定する金利で、貸出金利の基準となる。
• 市場金利との関係：金融市場で形成される金利で、貸出金利に影響を与える。
• 預金金利との関係：銀行が預金者に支払う金利で、通常は貸出金利より低く設定される。
• 信用リスクとの関係：借り手の返済能力によって、上乗せされる金利が変動する。

貸出金利の変動要因と影響

貸出金利の変動は、経済状況、金融政策、競争環境など、さまざまな要因によって引き起こされる。貸出金利の主な変動要因と影響は以下のとおりである。

• 経済成長率：景気拡大期には資金需要が増加し、貸出金利が上昇する傾向がある。
• インフレ率：インフレ率の上昇は、一般的に貸出金利の上昇につながる。
• 金融政策：中央銀行の金融政策の変更は、貸出金利に直接的な影響を与える。
• 銀行間の競争：競争が激しい場合、貸出金利が低下する傾向がある。
• 国際的な金融環境：グローバルな金融市場の動向が国内の貸出金利にも影響を及ぼす。

貸出金利の変動は、以下のような影響をもたらす。

• 企業の資金調達コスト：貸出金利の上昇は企業の借入コストを増加させ、投資や事業拡大に影響を与える。
• 住宅ローン金利：個人の住宅取得能力に影響を与え、不動産市場にも波及する。
• 銀行の収益：貸出金利と調達金利の差（スプレッド）が銀行の主要な収益源となる。
• 経済全体への影響：貸出金利の変動は、設備投資や消費行動を通じて経済全体に影響を及ぼす。

このように、貸出金利の動向を理解することは、企業の財務戦略や個人の借入計画を立てるうえで重要である。また、貸出金利の推移や現在の水準、今後の見通しなどを注視することが、適切な金融判断を行ううえで役立つものである。

<表>　金利の種類と特徴

金利の種類	内容	特徴
政策金利	日本銀行が決定する金利	他の金利の基準となる
市場金利	金融市場の需給で決まる金利	経済状況や金融政策の影響を受ける
貸出金利	銀行が貸出に適用する金利	借り手の信用リスクなどを反映

まとめ

金利には、政策金利、市場金利、貸出金利など、様々な種類がある。政策金利は日本銀行が決定し、他の金利の基準となる。市場金利は金融市場の需給で決まり、経済状況や金融政策の影響を受ける。貸出金利は銀行が貸出に適用する金利で、借り手の信用リスクなどを反映して決定されるのである。これらの金利の違いを理解することは、金融市場の動向を把握し、適切な投資判断やリスク管理を行う上で重要である。