資産を増やしたいと考えている人は多いが、どのような方法で始めればよいか迷うものである。株式投資は難しそう、預金は金利が低いといった悩みを抱えている人にとって、投資信託は有力な選択肢となる。
投資信託は、多くの人から集めたお金を投資の専門家がまとめて運用し、その成果を分け合う仕組みである。初心者でも始めやすい一方で、注意すべき点もある。
この記事では、投資信託のメリット・デメリットを詳しく解説し、他の金融商品との違いも説明することで、資産運用の第一歩を踏み出すための判断材料を提供する。
投資信託のメリット
投資信託には、少額から始められ、専門家に運用を任せられるなど、投資を始めたい人にとって魅力的な特徴がある。特に、投資に不安のある人でも、資産運用をはじめやすいのが大きな特徴である。
専門家による運用
運用のプロが投資先を選び、市場の動きを見ながら売り買いを行うため、自分で投資先を探す必要がない。投資の知識や経験が少ない人でも、専門家の判断を活かした投資ができることが大きな魅力である。
分散投資でリスクを抑える
ひとつの会社やひとつの国に投資するのではなく、複数の投資先にお金を分散して投資することができる。例えば、日本株式と外国株式、あるいは株式と債券というように、異なる種類の投資先を組み合わせることで、リスクを抑えることができる。
少額から始められる
投資信託は1万円程度から購入できるものが多い。このため、毎月の給料から少しずつ積み立てるといった形で、無理のない範囲で資産運用を始めることができる。
税金の優遇を受けられる
NISAやiDeCoなどの制度を使うことで、税金の優遇を受けることができる。例えば、NISAでは一定額までの利益に税金がかからない。このため、長期的な資産形成に活用しやすい。
手間がかからない
毎月決まった金額を自動で投資できる「積立投資」の仕組みを使えば、自分で毎回投資の手続きをする必要がない。また、投資状況を定期的に報告してくれるため、運用状況を簡単に確認できる。
情報が手に入りやすい
運用会社は投資状況や運用方針について定期的に情報を提供している。また、インターネットでいつでも基準価額(投資信託の価格)を確認できるため、自分の投資状況を把握しやすい。
投資信託のメリットを活かすためには、自分の目的に合った投資信託を選ぶことが重要である。特に、手数料の違いは長期的な運用成果に大きな影響を与えるため、手数料の確認は欠かせない。
メリット | 説明 |
---|---|
少額から投資できる | 1万円程度の少額から購入でき、 無理のない資金計画を立てられる |
分散投資ができる | 複数の資産に投資するため、リスクを分散し、 安定的なリターンを狙える |
運用を専門家に任せられる | 運用会社の専門家が運用を行うため、 投資家は運用に関する知識や時間が不要 |
投資情報の入手が容易 | 運用報告書やウェブサイトなどで、 投資状況や運用方針について定期的に情報開示される |
時間や手間が省ける | 「投資信託定期購入サービス」等を利用して、 定期的に資金を積み立てられる |
税制優遇措置がある | NISA(少額投資非課税制度)を利用すれば、 一定額までの投資について配当金や売却益への課税が非課税となる |
専門家のワンポイントアドバイス:
手数料の安い投資信託を選ぶことで、長期的な資産形成の効果を高めることができます。
- 参照:SMBC日興証券「一挙解説!投資信託のメリット・デメリット。あなたは投資信託をはじめるべき?」
投資信託のデメリット
投資信託には、手数料がかかることや運用成果が保証されないことなど、理解しておくべき注意点がある。これらのデメリットを把握し、自分に合うかどうかを判断することが重要である。
運用成果が保証されない
株式市場や債券市場の動きによって、投資信託の価格(基準価額)は変動する。市場が下落すると投資金額を下回る可能性があり、投資した金額(元本)が保証されているわけではない。
手数料がかかる
投資信託を購入する時や保有している間、様々な手数料がかかる。購入時の手数料や、毎年かかる運用管理費用(信託報酬)は、運用成果から差し引かれる。手数料が高いと、それだけ実際の運用成果は小さくなってしまう。
換金に時間がかかる
投資信託を売却(換金)してから、実際にお金が手元に戻ってくるまでには数日かかる。また、投資信託によっては一定期間解約ができない期間が設けられているものもある。急にお金が必要になった場合には注意が必要である。
為替の影響を受ける
海外の株式や債券に投資する投資信託の場合、為替レートの変動により損失が生じる可能性がある。例えば、外国の株価が上がっても、円高になると運用成果が減ってしまうことがある。
運用の中身がわかりにくい
投資信託によっては、どのような方法で運用されているのか、理解が難しいものもある。特に、複数の資産に投資する投資信託は、運用の中身が複雑で分かりにくいことがある。
これらのデメリットは、投資信託を避ける理由にはならない。むしろ、デメリットを理解した上で、自分の目的や状況に合わせて投資信託を選ぶことが、賢明な判断となる。
デメリット | 説明 |
---|---|
運用成果が保証されていない | 市場動向により運用成果が左右されるため、 元本割れのリスクがある |
手数料がかかる | 購入時や運用期間中には、各種手数料がかかり、 運用成果に影響を与える可能性がある |
流動性が低い場合がある | 投資信託によっては、 換金(解約)する際に時間がかかる場合がある |
運用会社の能力に依存する | 運用成果は、運用会社の運用能力に大きく左右される |
為替リスクがある | 海外の資産に投資する投資信託は、 為替レートの変動による影響を受ける |
投資信託の種類と選び方
投資信託には様々な種類があり、投資対象や運用方法によって特徴が異なる。自分の目的や状況に合った投資信託を選ぶことが重要である。
株式投資信託
主に株式に投資する投資信託である。株式市場の値動きに連動して価格が変動するため、大きな収益が期待できる一方で、リスクも高くなる。 長期的な資産形成を目指す人に向いている。
債券投資信託
主に債券(国債や社債)に投資する投資信託である。株式投資信託と比べると価格の変動は小さく、安定的な利息収入が期待できる。ただし、金利が上がると債券の価格は下がる性質があるため、その点は注意が必要である。
インデックス型投資信託
日経平均株価などの市場指標(インデックス)と同じような値動きになるように運用する投資信託である。運用手法がシンプルなため手数料が安く、長期投資に適している。
アクティブ型投資信託
運用担当者が投資先を積極的に選んで、市場平均以上の収益を目指す投資信託である。インデックス型より手数料は高いが、より高い収益を狙うことができる。
他の金融商品との比較
投資信託と他の金融商品には、それぞれ特徴がある。投資信託の特徴をより理解するために、代表的な金融商品と比較しながら説明する。
株式投資との違い
株式投資は、企業の株式を直接購入して投資を行う方法である。投資信託は運用のプロに任せられる一方、株式投資は自分で企業を選び、売買のタイミングを判断する必要がある。
投資信託は多くの銘柄に分散投資できるため、一つの企業の業績悪化による影響は限定的である。一方、株式投資では、自分の判断で高い収益を狙える反面、企業選びを誤ると大きな損失を被る可能性もある。
債券投資との違い
債券投資は国や企業が発行する債券を購入し、定期的な利息収入を得る方法である。債券は一般的に株式より値動きが小さく、安定的な収入が期待できる。
投資信託では債券に投資する商品もあるが、単独の債券投資と比べて分散投資が容易である。また、債券投資は通常まとまった資金が必要だが、投資信託なら少額から債券投資を始められる。
預金との違い
預金は元本が保証され、安全性が高い金融商品である。一方、投資信託は元本保証がなく、市場の動向により損失が生じる可能性がある。ただし、預金は金利が低く、資産を増やす手段としては限界がある。
不動産投資との違い
不動産投資は物件を購入し、家賃収入を得る方法である。不動産は高額な資金が必要で、物件の管理も必要となる。投資信託であれば不動産投資信託(REIT)を通じて、少額から不動産投資市場に参加できる。
換金性の違い
資産 | 流動性 | 詳細 |
---|---|---|
現金・普通預金 | 非常に高い | いつでも換金・引き出しが可能 |
定期預金 | 中程度 | 満期日前の解約は可能だが、 ペナルティが発生する場合がある |
投資信託 | 中程度 | 原則いつでも換金可能だが、換金申込から入金まで数日かかる。 一部の投資信託にはクローズド期間がある |
株式 | 高い | 市場取引時間内であれば、すぐに売却可能。 ただし、市場の流動性に依存 |
債券 | 中程度~高い | 市場取引時間内であれば、比較的容易に売却可能。 ただし、債券の種類や発行体によって流動性は異なる |
不動産 | 低い | 売却に時間がかかり、 市場環境によっては買い手が見つからない可能性がある |
ゴールドなどの 貴金属 | 中程度~高い | 金融機関や業者を通じて売却可能だが、 価格変動が大きい |
- 参考:ファイブスター投信投資顧問株式会社「「流動性」で劣る投資信託のリスク」
投資信託の活用方法
投資信託は、目的に合わせて様々な活用方法がある。ここでは代表的な活用方法について説明する。
定期的な積立投資
毎月決まった金額を投資する積立投資は、投資信託を活用する代表的な方法である。 給料から一定額を投資に回すことで、無理なく資産形成を続けることができる。また、投資のタイミングを分散できるため、市場の価格変動による影響を抑えることも期待できる。
老後の資産形成
退職後の生活資金として投資信託を活用することができる。特に、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)といった制度を利用すれば、税金の優遇を受けながら資産を増やすことができる。
投資先の分散手段
国内外の株式や債券、不動産など、様々な資産に投資できるのが投資信託の特徴である。一つの投資信託、あるいは複数の投資信託を組み合わせることで、投資先を分散し、リスクを抑えることができる。
まとまった資金の運用
預金の金利が低い中、まとまった資金を少しでも増やしたい場合にも投資信託は活用できる。ただし、株式中心の投資信託は値動きが大きいため、短期的な資金運用には向いていない。債券中心の投資信託など、比較的値動きの小さいものを選ぶことが大切である。
目的に合わせた活用のコツ
投資信託を活用する際は、投資の期間や目的を明確にすることが重要である。長期の資産形成なのか、数年後の資金作りなのかによって、選ぶべき投資信託は異なってくる。また、投資金額は余裕資金の範囲内とし、急な出費に備えて預貯金は別に確保しておくことが望ましい。
専門家のワンポイントアドバイス:
目標金額を設定し、それに向けて計画的に積立投資を行うことで、モチベーションを維持できます。
投資信託を始める前の注意点
投資信託を始める前に、いくつかの重要な確認事項がある。失敗を避け、効果的な資産形成を行うために、以下の点に注意する必要がある。
自分に合った投資信託を選ぶ
投資信託を選ぶ際は、自分の投資目的やリスクの許容度に合っているかを確認することが重要である。 例えば、値動きの大きな株式中心の投資信託が合わない人もいれば、じっくりと腰を据えて投資できる人もいる。自分の性格や生活状況に合った投資信託を選ぶことで、長く続けられる投資が可能となる。
手数料の確認を忘れずに
投資信託には様々な手数料がかかる。購入時の手数料、毎年かかる運用管理費用(信託報酬)、売却時の手数料などである。特に運用管理費用は、長期の運用では大きな金額となる可能性があるため、必ず確認する。
分配金の仕組みを理解する
投資信託から支払われる分配金は、必ずしも運用の利益とは限らない。投資信託の基準価額(価格)は分配金が支払われると、その分だけ下がる。分配金の額が大きいことが、必ずしも運用成果が良いことを意味するわけではないのである。
急いで始める必要はない
投資信託は、じっくりと時間をかけて検討すべき金融商品である。投資の目的や方法、リスクについてよく理解し、納得してから始めることが大切である。また、投資信託の運用実績は過去のものであり、将来の運用成果を約束するものではないことも覚えておく必要がある。
投資可能な金額を確認する
投資信託は預金とは異なり、値下がりするリスクがある。そのため、生活に必要な資金は投資に回さず、余裕資金の範囲内で投資を行うことが重要である。また、将来の急な出費に備えて、十分な預貯金を確保しておくことも大切である。
専門家のワンポイントアドバイス:
投資信託を始める前に、3ヶ月分程度の生活費は預貯金として確保しておくことをお勧めします。
まとめ:メリット・デメリットを理解して賢明な選択を
投資信託は、少額から始められ、運用のプロに任せられる資産運用の方法である。専門家による運用や分散投資によるリスク管理など、多くのメリットがある一方で、運用成果が保証されないことや手数料がかかることなどのデメリットもある。
投資信託を活用するためには、メリット・デメリットをしっかりと理解し、自分の目的や状況に合った商品を選ぶことが重要である。
例えば、株式投資信託、債券投資信託、インデックス型投資信託など、様々な種類があり、それぞれ特徴が異なる。これらの特徴を理解した上で、自分の投資目的やリスクの許容度に合った投資信託を選ぶことが大切である。
また、投資信託は長期の資産形成に向いており、定期的な積立投資や退職後の資金作りなど、様々な目的で活用できる。ただし、急いで始める必要はなく、十分に理解してから投資を始めることが賢明である。
投資信託を始める前に、手数料の確認や分配金の仕組みの理解、投資可能な金額の確認など、いくつかの重要な確認事項がある。これらの点に注意を払い、慎重に検討することで、効果的な資産形成を行うことができる。
最後に、投資信託は預金とは異なり、元本保証のない金融商品である。そのため、生活に必要な資金は投資に回さず、余裕資金の範囲内で投資を行うことが重要である。
- Q投資信託を始めるにあたって、最初にいくら位の資金が必要ですか?
- A
投資信託は少額から始められるのが特徴です。銘柄によっては1万円程度から購入できるものもあります。ただし、投資信託の手数料や信託報酬などのコストを考慮すると、ある程度まとまった資金から始めることをおすすめします。自分の投資計画に合わせて、無理のない金額から始めましょう。
- Q投資信託の利益には税金がかかりますか?
- A
はい、投資信託の利益には税金がかかります。投資信託の分配金や売却益には20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかります。ただし、NISAやiDeCoを活用することで、一定の範囲内で税金が非課税となります。税制面でのメリットを活用することも重要です。
- Q投資信託のリスクを軽減するためにはどうしたらいいですか?
- A
投資信託のリスクを軽減するためには、分散投資が有効です。異なる種類の投資信託を組み合わせることで、リスクを分散することができます。また、長期的な視点を持ち、時間分散を図ることも大切です。一時的な価格変動に一喜一憂せず、長期保有を心がけましょう。加えて、自分のリスク許容度を理解し、無理のない範囲でリスクをコントロールすることが重要です。
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