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将来の年金受給額について不安を感じている会社員は多い。たとえば年収1000万円程度の会社員にとって、年金制度には上限があることを知らないケースも少なくない。このため老後の収入について具体的な見通しを立てることができない状況が続いている。
この記事では、標準報酬月額の上限と年金受給額の関係、そして目標とする老後の収入に応じた具体的な準備方法を解説する。
年収1000万円でもらえる年金額:上限に近い約250万円
会社員の年金受給額は標準報酬月額の上限である65万円に到達するため、それ以上の収入があっても年金額は増えない仕組みとなっている。具体的な年金受給額について、標準報酬月額ごとの違いを見ていく。
専門家のワンポイントアドバイス:
標準報酬月額の上限到達を意識して、早めの資産形成計画を立てることをお勧めします。
標準報酬月額の上限と年収1000万円の関係
年収1000万円の場合、単純に12ヶ月で割ると、月々の給与は83万円程度となるが、標準報酬月額は制度上の上限である65万円で頭打ちとなる。このため保険料は、どれだけ収入が増えても月収62.5万円以上であれば、65万円分の負担で済むものの、将来の年金受給額も65万円を基準とした金額となる。
なお、標準報酬月額とは実際の給与額をもとに決定される保険料計算の基準額である。月収62.5万円以上は標準報酬月額65万円、月収57.5~60.5万円は標準報酬月額59万円のように、一定の範囲内で標準報酬月額が決定する。毎年4月から6月までの3か月間の給与平均をもとに、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額が決まる仕組みとなっている。
標準報酬月額と加入期間による年金額の違い
加入期間によって年金受給額は大きく変動する。標準報酬月額が上限の65万円で40年間加入した場合、年金受給額は年間約252万円となる。この金額は基礎年金と厚生年金を合わせた金額である。
標準報酬月額 | 40年加入 | 35年加入 | 30年加入 |
65万円 | 252.2万円 | 220.7万円 | 189.1万円 |
59万円 | 236.6万円 | 207.0万円 | 177.4万円 |
50万円 | 213.1万円 | 186.5万円 | 159.8万円 |
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額。老齢基礎年金は満額81.6万円で計算している。
- ここでは最長40年加入とし、40年未満の場合は国民年金保険のみ加入したものとする。
- 生涯で平均年収が1000万円なら標準報酬月額65万円を参照するが、一般的には少しずつ年収は上がるので、平均すると1000万円に満たない。その場合に59万円や50万円を参照するとよい。
この表からわかるように、同じ標準報酬月額でも加入期間が10年違うと、受給額に年間60万円以上の差が生じる。たとえば標準報酬月額65万円の場合、40年加入と30年加入では約63万円の差となる。このため、老後のライフプランを考える際には、加入期間を調べておくことが重要となる。
なお、年金額は月収から換算される標準報酬月額とボーナスから計算される標準賞与額の両方を基に計算される。このため、同じ年収1000万円でも、月収とボーナスの比率によって将来の年金受給額が変動する可能性がある。
- 参考:日本年金機構「標準報酬月額は、いつどのように決まるのですか。」
老齢基礎年金と老齢厚生年金の上限
年収1000万円の場合、受け取る年金は老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類で構成される。とくに厚生年金については、標準報酬月額の上限に達するため、これ以上の増額は見込めない仕組みとなっている。それぞれの年金の特徴と金額について確認していく。
老齢基礎年金の金額
老齢基礎年金は年収にかかわらず一定の金額が支給される。令和6年4月以降の満額は年間81.6万円である。この金額は40年間保険料を納付した場合の金額であり、加入期間によって減額される。たとえば35年間の場合は約71.4万円、30年間の場合は約61.2万円となる。
専門家のワンポイントアドバイス:
年金の受給開始年齢は60~70歳の間で選択できます。遅らせるほど受給額が増えるので、資産形成状況に応じて検討するとよいでしょう。
- 参考:日本年金機構「令和6年4月分からの年金額」
老齢厚生年金の上限
老齢厚生年金は標準報酬月額に応じて金額が決まる。標準報酬月額が上限の65万円の場合、40年加入であれば年間約170.6万円となる。これは標準報酬月額に5.481/1000を掛け、さらに加入月数を掛けて計算される。標準報酬月額が上限に達している場合、これ以上の増額は見込めないため、老後の収入目標に応じて追加の資産形成を検討する必要がある。
- 参考:日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
老後の収入目標別の資産形成プラン
年金受給額の上限を理解したうえで、目標とする老後の収入に応じた準備を考える必要がある。目標金額から年金受給額を差し引いた不足分について、具体的な対策を見ていく。
老後の年収目標別の必要資産額 たとえば老後の年収目標を500万円とした場合、年金受給額250万円との差額は年間で250万円となる。退職後30年分の生活資金を確保するためには、約7,500万円の資産形成が必要となる。この金額は毎月の不足額を30年分積み上げた単純計算である。目標年収別の必要資産額は以下の表のとおりとなる。
専門家のワンポイントアドバイス:
非課税制度は組み合わせ方で活用できる限度額が変わります。会社の制度を確認することから始めましょう。
目標年収 | 年間不足額 | 毎月の不足額 | 必要資産額(30年分) |
700万円 | 450万円 | 37.5万円 | 13,500万円 |
600万円 | 350万円 | 29.2万円 | 10,500万円 |
500万円 | 250万円 | 20.8万円 | 7,500万円 |
400万円 | 150万円 | 12.5万円 | 4,500万円 |
300万円 | 50万円 | 4.2万円 | 1,500万円 |
資産形成の具体的な方法
必要資産額の目標が定まったら、具体的な積立計画を立てる。45歳から65歳までの20年間、年利3%で運用した場合の毎月の積立額は以下の表のとおりとなる。企業型DC、iDeCo、NISAなどの非課税制度を組み合わせることで、効率的な資産形成が可能となる。
目標年収 | 必要資産額(30年分) | 毎月の積立額(20年) |
700万円 | 13,500万円 | 435,665円 |
600万円 | 10,500万円 | 338,851円 |
500万円 | 7,500万円 | 242,037円 |
400万円 | 4,500万円 | 145,222円 |
300万円 | 1,500万円 | 48,408円 |
※45歳から65歳までの20年間、年利3%(年複利)で運用した場合の試算
※満期時一括課税20.315%を考慮した金額
たとえば老後の年収400万円を目標とする場合、毎月約15万円の積立が必要となる。これは企業型DC、iDeCo、NISAなどの非課税制度を組み合わせることで実現を目指すことができる。ただし、企業型DCやiDeCoの拠出限度額は加入している年金制度によって異なるため、実際の制度を確認する必要がある。
まとめ:年収1000万円は年金上限を意識した資産形成を
年収1000万円の会社員の年金受給額は、標準報酬月額が制度上の上限である65万円に達するため、加入期間40年の場合で年間約252万円が上限となる。そのため、現役時代の収入水準に近い老後の年収を目指す場合は、計画的な資産形成が必要となる。
たとえば退職後30年分の生活資金を想定した場合、目標とする年収から年金受給額を差し引いた不足分を、企業型DCやiDeCo、NISAなどの非課税制度を活用して準備することができる。老後の収入目標を具体的に設定し、加入している制度で活用できる非課税枠を確認したうえで、長期的な資産形成の計画を立てることが大切である。
なお、いずれの場合も加入期間が長いほど年金受給額は増えるため、加入期間の確保も重要な検討事項となる。また年金制度は今後も変更される可能性があるため、定期的な情報収集と計画の見直しを心がけるとよいだろう。
- Q年収1000万円なのに、年金額が350万円台の会社員の知人がいます。なぜ差が出るのでしょうか?
- A
標準報酬月額の年金制度における上限は65万円ですが、実際の月収がそれ以上でも上限までしか反映されないためです。
- Q年金の上限に達している場合、追加の保険料納付は意味がありますか?
- A
標準報酬月額が上限の65万円に達している場合、追加の保険料納付は年金額の増額にはつながりません。
- Q年収1000万円では年金だけでは不足しそうですが、具体的にいくら資産形成すればよいでしょうか?
- A
後の目標収入から年金受給額を差し引いた金額を基に、生活水準に応じた資産形成目標を立てることができます。
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