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年収600万円は上位3割に入る収入だが、家族構成によって生活の実態は大きく異なっている。近年、物価上昇やクレジット利用の増加が目立ち、収入の高さが必ずしも生活の余裕につながっていない状況である。
この記事では、二人以上世帯(二人暮らし・3人家族・4人家族以上)と単身世帯(一人暮らし・独身)それぞれの家計状況を分析し、収入に見合った生活レベルを実現するための具体的な改善策を解説する。
年収600万円は上位何パーセント?
世帯年収や年齢層によって年収600万円の位置づけは大きく異なる。全世帯での分布状況と、20代から50代までの年齢層別の特徴から、年収600万円の到達状況を詳しく見ていく。
年収600万円の割合:全世帯での位置づけ
所得階級 | 累積割合 | 上位からの割合 |
---|---|---|
2000万円以上 | 1.3% | 上位1.3% |
1500~2000万円 | 3.1% | 上位3.1% |
1200~1500万円 | 6.8% | 上位6.8% |
1100~1200万円 | 9.0% | 上位9.0% |
1000~1100万円 | 11.7% | 上位11.7% |
900~1000万円 | 15.3% | 上位15.3% |
800~900万円 | 19.9% | 上位19.9% |
700~800万円 | 25.7% | 上位25.7% |
600~700万円 | 32.0% | 上位32.0% |
500~600万円 | 40.5% | 上位40.5% |
400~500万円 | 51.2% | 上位51.2% |
300~400万円 | 64.1% | 上位64.1% |
200~300万円 | 78.5% | 上位78.5% |
200万円未満 | 100.0% | - |
厚生労働省の「国民生活基礎調査」のデータによると、年収600~700万円は上位32.0%に位置しており、約3人に1人が到達している年収水準である。また、全世帯の中で年収600~700万円の層は多くなく、その上下の年収層を見ると、500~600万円が上位40.5%、700~800万円が上位25.7%となっている。
特徴的なのは、1000万円を超える世帯は全体の約11.7%にとどまり、1500万円以上となると3.1%まで減少することである。一方で、年収200~300万円の層は上位78.5%に位置しており、比較的低所得層の割合が大きいことが分かる。
このように、年収600万円台は平均的な収入を上回る水準にあり、すでにある程度の経済的安定を手に入れている層と言える。ただし、後述するように世帯構成や居住地域によって実質的な生活水準は大きく異なってくる。
年収600万円の割合:年代別・年齢層の比較
世帯人員1人当たり 所得金額階級 | 全年齢 | 20代以下 | 30代 | 40代 | 50代 |
---|---|---|---|---|---|
1000万円以上 | 0.9% | 0.0% | 0.7% | 0.6% | 1.8% |
900~1000万円 | 0.4% | 0.0% | 0.0% | 0.6% | 0.9% |
800~900万円 | 0.6% | 0.0% | 1.7% | 1.0% | 1.4% |
700~800万円 | 1.3% | 0.0% | 1.7% | 2.1% | 4.0% |
600~700万円 | 1.9% | 0.6% | 3.4% | 2.5% | 5.0% |
500~600万円 | 3.2% | 5.0% | 9.2% | 5.2% | 5.1% |
400~500万円 | 6.6% | 12.6% | 10.3% | 6.9% | 11.0% |
300~400万円 | 11.9% | 17.0% | 14.0% | 12.4% | 18.8% |
200~300万円 | 23.2% | 21.4% | 22.6% | 26.8% | 22.6% |
200万円未満 | 49.8% | 43.4% | 36.3% | 41.9% | 29.4% |
年収600万円台(世帯人員1人当たり所得600~700万円)の割合を年齢層別にみると、20代では0.6%にとどまるのに対し、30代で3.4%、50代では5.0%まで上昇している。
全体的に年齢層が上がるにつれて高所得者の割合が増加する傾向がみられ、特に700万円以上の所得層では50代の割合が他の年代を大きく上回っている。一方で、20代では400~500万円台が12.6%と比較的高い割合を示しており、若年層でも一定の所得水準に到達していることが分かる。
このように、年収600万円という水準は、年齢層によって到達のしやすさが異なっており、キャリアの進展に応じて徐々に到達者が増えていく傾向にある。
年収600万円の生活レベル!年収・手取額の平均・目安
年収は同じでも、世帯構成によって生活レベルは大きく異なっている。二人暮らし・3人家族・4人家族以上(二人以上世帯)と一人暮らし・独身(単身世帯)の家計状況から、それぞれの生活実態を見ていく。

専門家のワンポイントアドバイス:
収入が同じでも、固定費の割合で生活レベルは大きく変わります。
二人暮らし・3人家族・4人家族の生活費の実態
二人以上世帯では、収入帯によって生活費(消費支出)の内訳に違いがみられる。収入が増えると、生活水準の変化が支出構造に表れている。
項目 | 金額(月額) | 割合 |
---|---|---|
勤め先収入 | 402,342円 | - |
消費支出 | 262,991円 | 勤め先収入の65% |
食費 | 71,932円 | 消費支出の27% |
住居費 | 19,442円 | 消費支出の7% |
光熱・水道 | 18,930円 | 消費支出の7% |
交通・通信 | 44,698円 | 消費支出の17% |
教育 | 10,291円 | 消費支出の4% |
教養娯楽 | 25,684円 | 消費支出の10% |
その他 | 72,014円 | 消費支出の28% |
項目 | 金額(月額) | 割合 |
---|---|---|
勤め先収入 | 443,018円 | - |
消費支出 | 272,579円 | 勤め先収入の62% |
食費 | 73,584円 | 消費支出の27% |
住居費 | 17,580円 | 消費支出の6% |
光熱・水道 | 19,704円 | 消費支出の7% |
交通・通信 | 42,197円 | 消費支出の15% |
教育 | 12,897円 | 消費支出の5% |
教養娯楽 | 26,694円 | 消費支出の10% |
その他 | 79,923円 | 消費支出の30% |
収入が増えても食費や光熱費・水道代の割合はほぼ変わらず、教育費と教養娯楽費の生活費が増える傾向にある。
一人暮らし(独身)の生活費の実態
単身世帯の特徴は、収入帯が上がっても住居費の占める割合が高い点にある。また、自由裁量費用の使い方にも特徴がみられる。
項目 | 金額(月額) | 割合 |
---|---|---|
勤め先収入 | 373,338円 | - |
消費支出 | 199,944円 | 勤め先収入の54% |
食費 | 43,784円 | 消費支出の22% |
住居費 | 34,101円 | 消費支出の17% |
光熱・水道 | 10,269円 | 消費支出の5% |
交通・通信 | 35,928円 | 消費支出の18% |
教養娯楽 | 23,291円 | 消費支出の12% |
その他 | 52,572円 | 消費支出の26% |
項目 | 金額(月額) | 割合 |
---|---|---|
勤め先収入 | 427,070円 | - |
消費支出 | 233,571円 | 勤め先収入の55% |
食費 | 50,078円 | 消費支出の21% |
住居費 | 54,209円 | 消費支出の23% |
光熱・水道 | 9,848円 | 消費支出の4% |
交通・通信 | 37,512円 | 消費支出の16% |
教養娯楽 | 25,399円 | 消費支出の11% |
その他 | 56,525円 | 消費支出の25% |
収入が増えると住居費(家賃・ローン)の割合が17%から23%に上昇しており、より良い住環境を選択する傾向がうかがえる。
一方で、食費の割合は22%前後と安定しており、教養娯楽費も11-12%と一定の水準を保っている。これは、生活の質を重視する単身世帯の特徴を表している。
年収600万円で生活が苦しい原因と対策
年収600万円台は高所得層に位置づけられるが、実際の家計をみると預貯金の取り崩しやクレジット利用が目立っている。世帯別の実態から、生活を圧迫する要因を探っていく。

専門家のワンポイントアドバイス:
預貯金の取り崩しが習慣化すると、将来の資産形成に影響が出てきます。
子育て家族が貯金を取り崩す3つの理由
二人以上世帯では、収入以外の資金調達が家計の大きな特徴となっている。その内訳からは、生活の実態が見えてくる。
項目 | 金額(月額) | 補足 |
---|---|---|
実収入以外の受取 | 355,165円 | 資産減少や負債増加を伴う収入 |
うち預貯金引出 | 278,274円 | 全体の78% |
うちクレジット購入借入金 | 69,002円 | 全体の19% |
非消費支出 | 71,515円 | 税金・社会保険料など |
項目 | 金額(月額) | 補足 |
---|---|---|
実収入以外の受取 | 387,338円 | 資産減少や負債増加を伴う収入 |
うち預貯金引出 | 303,874円 | 全体の78% |
うちクレジット購入借入金 | 77,912円 | 全体の20% |
非消費支出 | 81,156円 | 税金・社会保険料など |
月々の支払いのうち、約30%を預貯金の取り崩しで賄っており、さらにクレジット購入借入金も増加傾向にある。
このように、収入が増えても預貯金取り崩しの割合は変わらず、むしろ金額は増加している点に注意が必要である。
一人暮らし(独身)の生活費と借入金の実態
単身世帯においても、預貯金の取り崩しとクレジット利用は避けられない状況となっている。収入帯による違いも顕著である。
項目 | 金額(月額) | 補足 |
---|---|---|
実収入以外の受取 | 333,376円 | 資産減少や負債増加を伴う収入 |
うち預貯金引出 | 260,665円 | 全体の78% |
うちクレジット購入借入金 | 55,050円 | 全体の17% |
非消費支出 | 80,401円 | 税金・社会保険料など |
項目 | 金額(月額) | 補足 |
---|---|---|
実収入以外の受取 | 305,220円 | 資産減少や負債増加を伴う収入 |
うち預貯金引出 | 234,652円 | 全体の77% |
うちクレジット購入借入金 | 69,408円 | 全体の23% |
非消費支出 | 95,859円 | 税金・社会保険料など |
650-700万円帯になるとクレジット購入借入金の割合が増加しており、特に住居費の増加が影響していると考えられる。
また、非消費支出(税金・社会保険料など)の金額も大きく、手取り収入が実収入を大きく下回る点も、生活を圧迫する要因となっている。
年収600万円の家計管理術!FPが教える節約のコツ
年収600万円台の世帯でも、収入と支出のバランスが崩れると生活は徐々に苦しくなってくる。ここでは、世帯別の具体的な改善策を提案する。

専門家のワンポイントアドバイス:
生活費の見直しは、まず使途不明金の把握から始めましょう。
二人暮らし・3人家族・4人家族の生活費の見直し方
二人以上世帯では、食費や交通・通信費などの基本的な生活費の見直しが重要となる。特に、世帯人数が多いほど削減効果は大きくなる。
食費が生活費の27%を占めているため、食材の購入方法や調理方法の工夫で、家計の改善余地は大きい。
具体的な改善策としては、まとめ買いや簡単な節約術の導入が効果的である。たとえば、食材の使い切りや買い物リストの作成で、ムダな生活費を抑えることができる。
また、交通・通信費も生活費の15-17%と高い割合を占めている。通信プランの見直しや、公共交通機関の定期券の活用など、固定費の削減を検討するとよい。
独身のゆとりのある生活を実現する方法
単身世帯では、住居費の負担が特に大きな課題となっている。収入が増えると住居費の割合が23%まで上昇する傾向がみられる。
家賃の見直しや立地の選択で、住居費を抑える工夫が必要である。
また、教養娯楽費が生活費の11-12%と比較的高めであることから、娯楽費の支出を見直すことも検討に値する。定額制サービスの活用や、趣味にかける費用の優先順位付けが有効である。
貯金を増やす!共通の家計改善ポイント
世帯構成にかかわらず、預貯金の取り崩しやクレジット購入借入金への依存は要注意である。計画的な支出管理が不可欠となる。
まずは、毎月の生活費を項目別に記録することから始めるとよい。生活費の傾向が把握できれば、優先順位をつけた生活費の見直しが可能となる。
クレジットカードの利用についても、ポイント還元などのメリットを活かしつつ、支払い総額の管理を徹底することが大切である。
さらに、将来的な生活費に備えて、収入のうち一定額を積立てる習慣をつけることも推奨される。たとえば、ボーナスの一部を定期預金にまわすなど、計画的な資産形成を心がけるとよい。
まとめ:年収600万円の適正な生活費と貯蓄バランス
年収600万円台は平均的な収入を上回る水準であるが、世帯構成や生活スタイルによって、実際の生活レベルは大きく異なってくる。
二人以上世帯では、食費と交通・通信費で生活費の44%を占めており、これらの支出管理が家計改善の鍵となる。一方、単身世帯では住居費の負担が大きく、収入が増えるほどその傾向が強まっている。
注目すべき点は、どちらの世帯でも預貯金の取り崩しやクレジット購入借入金が増加傾向にあることである。これは、収入のみでは理想の生活水準を維持することが難しい状況を示している。
収入が増えても、それに応じて生活費が増える傾向がみられることから、計画的な家計管理がより一層重要となる。生活費の優先順位づけや、固定費の見直しなど、基本的な家計改善の取り組みを継続することで、年収600万円台の収入を活かした安定的な生活設計が可能となるだろう。
家計改善の具体策を実践し、預貯金の取り崩しやクレジット利用を抑えることで、収入に見合った適切な生活レベルを維持することができる。
長期的な視点での資産形成も視野に入れ、将来に向けた安定的な家計づくりを心がけたい。
- Q年収600万円台でも預貯金を取り崩すのは問題ですか?
- A
計画的な取り崩しなら問題ありませんが、毎月の生活費を補填する目的での取り崩しは要注意です。
- Q単身世帯の住居費が収入の23%というのは高すぎますか?
- A
都市部では珍しくない水準ですが、将来の資産形成を考えると20%以下に抑えることをお勧めします。
- Q二人以上世帯の食費27%は平均的な割合ですか?
- A
やや高めの水準です。まとめ買いや食材の使い切りなど、工夫の余地があります。