年収700万円は、多くのビジネスパーソンにとって大きな目標となる水準である。しかし、全108業種のうち700万円到達が可能なのは35業種に限られており、業種や性別によって到達できる年齢も大きく異なる。厚生労働省の最新データを分析することで、各業界における年収到達の可能性や時期が明確になり、より効果的なキャリア戦略を立てることができる。
この記事では、業種ごとの詳細なデータ分析から、あなたの年齢や状況に応じた年収700万円到達への道筋を具体的に示していく。
年収700万円到達は難しい?職業ごとの年齢範囲
厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとに「きまって支給する現金給与額×12ヶ月」+「年間賞与その他特別給与額」の合計額で、700万円以上となる職種別の年齢範囲をまとめた。業種は108に分類されているが、年収700万円に到達したのは35業種である。
専門家のワンポイントアドバイス:
年収700万円到達には、専門性の高いスキルやマネジメント能力が求められます。早期のキャリアプランニングと、継続的なスキルアップが重要です。
職種 | 年齢範囲 |
---|---|
鉱業,採石業,砂利採取業 | 35~59歳 |
総合工事業 | 50~59歳 |
設備工事業 | 55~64歳 |
化学工業 | 40~49歳 |
石油製品・石炭製品製造業 | 35~59歳 |
ゴム製品製造業 | 45~59歳 |
鉄鋼業 | 50~59歳 |
非鉄金属製造業 | 50~59歳 |
はん用機械器具製造業 | 55~59歳 |
生産用機械器具製造業 | 45~59歳 |
業務用機械器具製造業 | 45~59歳 |
電子部品・デバイス・電子回路製造業 | 45~59歳 |
電気機械器具製造業 | 45~59歳 |
情報通信機械器具製造業 | 35~59歳 |
輸送用機械器具製造業 | 40~59歳 |
電気業 | 35~59歳 |
ガス業 | 30~59歳 |
熱供給業 | 35~59歳 |
通信業 | 35~59歳 |
放送業 | 30~59歳 |
情報サービス業 | 40~59歳 |
インターネット附随サービス業 | 30~54歳 |
映像・音声・文字情報制作業 | 40~59歳 |
鉄道業 | 35~59歳 |
水運業 | 40~59歳 |
航空運輸業 | 35~64歳 |
運輸に附帯するサービス業 | 50~54歳 |
各種商品卸売業 | 25~69歳 |
建築材料,鉱物・金属材料等卸売業 | 45~59歳 |
機械器具卸売業 | 40~64歳 |
その他の卸売業 | 40~59歳 |
銀行業 | 35~59歳 |
金融商品取引業,商品先物取引業 | 30~69歳 |
補助的金融業等 | 30~59歳 |
学術・開発研究機関 | 35~59歳 |
専門サービス業 | 45~69歳 |
広告業 | 40~64歳 |
20代で年収700万円に到達できる職種
- 各種商品卸売業
- 総合商社(三井物産、三菱商事、伊藤忠商事、住友商事、丸紅など)
- 大手専門商社
- 複数分野の卸売業者(繊維、食品、金属、機械など3分野以上を扱う事業者)
- 金融商品取引業・商品先物取引業
- 大手証券会社
- 投資銀行部門
- 資産運用会社
- フィンテック系金融商品取引業者
これらの業界は、25歳から年収700万円の到達が可能である。総合商社では、グローバルな取引経験と高度な専門知識を持つ人材への評価が高く、早期からの高待遇が特徴となっている。
金融商品取引業においては、市場分析力や顧客開拓力が評価され、パフォーマンスに応じた報酬体系により、20代での高収入達成が可能となっている。また、両業種とも69歳以降も700万円以上の収入を維持できる点も特徴的である。
30歳以降に年収700万円に到達できる職種
- 30代前半から到達可能な職種
- ガス業
- 銀行業
- 貸金業,クレジットカード業等非預金信用機関
- 補助的金融業等
- 30代後半から到達可能な職種
- 電気業
- 航空運輸業
- 専門サービス業
- 学術・開発研究機関
公共インフラ系(ガス、電気)や金融系(銀行、クレジットカード)の業界では、30代での年収700万円到達が可能となっている。これらの業界は、専門性と経験を重視する傾向が強く、キャリアの積み重ねが着実な収入増加につながっている。
特に、金融系の職種では、若手からの専門性育成に力を入れており、30代前半での到達を可能としている。また、航空運輸業や専門サービス業では、高度な技術や知識を要する職務に就くことで、30代後半からの到達が見込める。
性別:年収700万円を達成できる職種ごとの年齢範囲
前章で紹介したデータをもとに、ここでは男性・女性に分けて確認する。この年収水準では男女で大きな違いが見られ、特に女性の到達可能な職種が限定的である点が特徴的だ。業界選択やキャリアプランニングの参考として、気になる業種を確認していただきたい。
専門家のワンポイントアドバイス:
男女差が大きい現状では、特に女性は早期からの資格取得や専門性の向上が重要です。管理職を視野に入れた戦略的なキャリアプランを立てましょう。
男性:年収700万円を達成できる職種ごとの年齢範囲
男性に絞ってみると、業種108のうち年収700万円以上を達成できる業種は、22業種となる。「各種商品卸売業」「金融商品取引業」「銀行業」では30代前半から年収700万円を獲得できる可能性がある。金融系を中心に、比較的早期からの到達が可能な職種が見られるのが特徴である。
職種 | 年齢範囲 |
---|---|
総合工事業 | 45~49歳 |
石油製品・石炭製品製造業 | 45~49歳 |
電気業 | 35~39歳 |
ガス業 | 30~34歳 |
通信業 | 45~49歳 |
放送業 | 40~44歳 |
インターネット附随サービス業 | 55~59歳 |
映像・音声・文字情報制作業 | 50~54歳 |
航空運輸業 | 35~39歳 |
各種商品卸売業 | 30~34歳 |
銀行業 | 30~34歳 |
貸金業,クレジットカード業等非預金信用機関 | 30~34歳 |
金融商品取引業,商品先物取引業 | 30~34歳 |
補助的金融業等 | 30~34歳 |
保険業 | 40~44歳 |
不動産取引業 | 55~59歳 |
学術・開発研究機関 | 40~44歳 |
専門サービス業 | 35~39歳 |
広告業 | 40~44歳 |
学校教育 | 40~44歳 |
医療業 | 50~54歳 |
機械等修理業 | 50~54歳 |
特に公共インフラ系(電気、ガス)と金融系(銀行、証券)では、30代での到達が多く見られる。これらの業界は、専門性の高さやマネジメント能力が評価され、比較的早期からの昇進・昇給が期待できる。一方で、製造業や建設業では40代後半以降での到達となる傾向が強く、経験の積み重ねが重視されている。
女性:年収700万円を達成できる職種ごとの年齢範囲
一方、女性の場合、全108業種のうち、年収700万円を達成できるのは、わずか4業種のみとなる。「各種商品卸売業」「金融商品取引業,商品先物取引業」の2業種のみが35歳から70歳以上まで700万円以上を維持でき、他の2業種(ガス業、インターネット附随サービス業)は45~54歳の限定的な年齢層でのみ到達が可能となっている。
職種 | 年齢範囲 |
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ガス業 | 45~54歳 |
インターネット附随サービス業 | 45~54歳 |
各種商品卸売業 | 35~70歳以上 |
金融商品取引業,商品先物取引業 | 35~70歳以上 |
特に注目すべきは、各種商品卸売業と金融商品取引業では、35歳以降70歳以上まで700万円以上の収入を維持できる点である。これは、専門性と経験が重視され、長期的なキャリア形成が可能な業界であることを示している。一方で、他業種では管理職相当の役職への登用と連動して一時的に到達可能となる傾向が見られ、持続的な所得水準の確保には課題が残る。
年収700万円到達に向けたキャリアの考え方
転職やキャリアアップを考える際、業界ごとの年収到達時期の特徴を理解しておくことは重要だ。700万円という年収水準では、業種による違いが顕著になり、特に性別による到達可能性の差が大きくなる。以下、データから見えるポイントを業界特性とともに解説する。
専門家のワンポイントアドバイス:
業界を選ぶ際は、単に現在の年収だけでなく、スキルの市場価値や将来性も考慮することが大切です。特に、デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応力は、今後のキャリアの重要な武器となります。
年収上昇の早い業界を選ぶ
各種商品卸売業と金融商品取引業は、経験とパフォーマンスにより年収が大きく上昇する傾向にある。特に、これらの業界は30代前半から700万円以上の収入が得られ、69歳以降も同水準を維持できる点が特徴的だ。ただし、グローバルな取引知識や市場分析力など、高度な専門性が求められることを理解しておく必要がある。
安定性重視のキャリア選択
公共インフラ系(ガス、電気)や金融系(銀行、証券)は、30代での700万円到達が可能で、かつ安定性が高い。これらの業界は、専門性と経験を重視する傾向が強く、若手からの人材育成に力を入れている。また、航空運輸業や専門サービス業では、技術や知識の蓄積により、着実な収入増加が期待できる。
男女差を踏まえた戦略
女性の場合、700万円到達可能な業種は4業種と極めて限定的である。各種商品卸売業と金融商品取引業では35歳以降の到達が可能だが、他業種では45歳以降の到達となる。このため、早期からの専門性構築や、管理職を視野に入れたキャリア形成が特に重要となる。また、長期的なキャリアプランを描く上で、これらの業界特性を考慮に入れた戦略が必要不可欠である。
まとめ:キャリアに応じた年収700万円到達の可能性
厚生労働省の調査によると、全108業種のうち、700万円到達可能な業種は35にとどまる。男女別でみると、男性は22業種、女性は4業種と大きな差が存在する。早期到達の可能性が高いのは各種商品卸売業と金融商品取引業で、これらは長期的な収入維持も期待できる。また、30代での到達が可能な公共インフラ系や金融系は、安定性が高く、計画的なキャリア形成が可能な業界といえる。
年収700万円到達を目指す場合、業界特性を理解した上で、専門性の構築と長期的なキャリアプランを立てることが重要だ。特に転職を考える際は、現時点の年収だけでなく、年齢に応じた到達可能性や、その業界での将来性も考慮に入れるべきである。
- Q年収700万円に到達できる業種が、全体の35業種にとどまるのはなぜですか?
- A
厚生労働省の調査では、企業規模や地域性も含めた平均値を算出しているためです。特に700万円という水準では、大手企業や都市部の企業に限定される傾向が強くなります。
- Q女性の到達可能業種がわずか4業種である理由は何ですか?
- A
管理職登用の機会の差や、勤続年数の違いが主な要因です。ただし、各種商品卸売業と金融商品取引業では、35歳以降70歳以上まで700万円以上の収入維持が可能となっています。
- Q20代での700万円到達は可能なのでしょうか?
- A
各種商品卸売業と金融商品取引業では、25歳から年収700万円の到達が可能です。ただし、グローバルな取引知識や市場分析力など、高度な専門性が求められます。
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