教育ローン完全ガイド:国の教育ローンと民間ローンの比較

子育てママ・パパのための知っておきたい教育資金の準備方法 教育費
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子どもの教育にかかる費用の増加に、多くの家庭が頭を悩ませている。教育ローンの利用を考えたとき、国の教育ローンと民間ローンのどちらを選ぶべきか迷うことがあるだろう。

この記事では、両者の特徴を詳しく比較し、あなたに最適な選択肢を見つける手助けをする。教育ローンの基本から選び方のポイントまで、このガイドを読めば教育ローンについて十分な知識を得ることができるだろう。

教育ローンの基本:国の教育ローンvs民間ローン

教育ローンには、日本政策金融公庫が提供する「国の教育ローン」と、民間金融機関が提供する「民間の教育ローン」の2種類がある。それぞれに特徴があり、利用目的や家庭の状況によって適した選択肢が異なる。ここでは、両者の基本的な特徴を見ていく。

国の教育ローンの特徴

国の教育ローンは、日本政策金融公庫が運営する教育費用のための公的融資制度である。この制度の最大の特徴は、民間ローンに比べて低金利で借り入れができる点である。 金利は固定金利で年1.65%(2024年9月現在)となっており、長期的な計画を立てやすい。融資限度額は学生1人あたり350万円までで、返済期間は15年以内となっている。ただし、世帯年収等の条件があり、審査基準も厳格であるため、誰もが利用できるわけではない点に注意が必要である。

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専門家のワンポイントアドバイス
教育ローンの申し込み前に、奨学金制度も併せて検討してみましょう。給付型や無利子の奨学金を組み合わせることで、借入額を抑えられる可能性があります。

民間の教育ローンの特徴

民間の教育ローンは、銀行や信用金庫などの金融機関が提供するローン商品である。民間ローンの特徴は、国の教育ローンに比べて融資条件や審査基準が柔軟である点だ。 たとえば、三井住友銀行の教育ローン(無担保型)では、融資限度額が10万円から300万円までとなっており、返済期間は1年から10年の間で選択できる。金利は変動金利型で、年3.475%(2024年9月現在)となっている。また、申し込みから融資実行までの期間が比較的短いのも特徴の一つである。

ただし、民間ローンは金融機関によって条件が異なるため、複数の商品を比較検討することが大切である。また、変動金利型の場合は、将来の金利上昇リスクも考慮に入れる必要がある。

以上が教育ローンの基本的な特徴である。次のセクションでは、国の教育ローンと民間ローンの金利について、より詳しく比較していく。

金利比較:どちらが有利?

教育ローンを選ぶうえで、最も重要な要素の一つが金利である。国の教育ローンと民間ローンでは、金利の種類や水準が大きく異なる。ここでは、両者の金利を詳しく比較し、それぞれのメリット・デメリットを考えてみる。

国の教育ローンの金利

国の教育ローンは固定金利制を採用している。現在の金利は年1.65%で、借入期間中はこの金利が変わることはない。 この低金利は国の教育ローンの最大の魅力といえる。固定金利であるため、将来の返済額が予測しやすく、家計の計画を立てやすいというメリットがある。

たとえば、300万円を10年間で借りた場合、毎月の返済額は約27,000円となる。金利が固定されているため、この返済額は借入期間中変わらない。ただし、繰り上げ返済を行う際には手数料がかかる場合があるので注意が必要である。

民間の教育ローンの金利

一方、民間の教育ローンは主に変動金利制を採用している。三井住友銀行の教育ローン(無担保型)の場合、現在の金利は年3.475%となっている。 この金利は、市場金利の変動に応じて定期的に見直される。そのため、将来的に金利が上昇する可能性があり、返済額が増加するリスクがある。

変動金利のメリットは、市場金利が下がった際に恩恵を受けられる点である。また、多くの民間ローンでは、繰り上げ返済の手数料が無料であったり、柔軟な返済方法を選択できたりする。

ただし、変動金利の場合、金利上昇時のリスクを考慮する必要がある。たとえば、借入時の金利が年3.475%で300万円を10年間借りた場合、毎月の返済額は約29,700円となる。しかし、金利が1%上昇すると、返済額は約31,000円に増加する。

金利タイプの選び方

金利タイプの選択は、借入者の状況や将来の見通しによって異なる。長期的な視点で安定した返済を望むなら、固定金利の国の教育ローンが適している。一方、当面の返済額を抑えたい、または将来的な繰り上げ返済を考えているなら、変動金利の民間ローンも選択肢となりうる。

重要なのは、単に金利の高低だけでなく、返済期間全体を通じての総返済額や、金利変動リスクへの対応力を考慮することである。また、民間ローンの場合は複数の金融機関の商品を比較し、最も条件の良いものを選ぶことが大切である。

次のセクションでは、融資条件の比較として、借入限度額と返済期間について詳しく見ていく。

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専門家のワンポイントアドバイス
教育ローンの返済計画を立てる際は、子どもの就職時期や自身の定年退職なども考慮に入れましょう。長期的な視点で無理のない計画を立てることが重要です。

融資条件の比較:借入限度額と返済期間

教育ローンを選ぶうえで、金利とともに重要なのが融資条件である。ここでは、国の教育ローンと民間ローンの借入限度額と返済期間について比較し、それぞれの特徴や注意点を解説する。

借入限度額の違い

借入限度額は、教育費用の総額や家計の返済能力に応じて選ぶ必要がある。国の教育ローンと民間ローンでは、借入限度額に大きな違いがある。

国の教育ローンの場合、学生1人あたりの借入限度額は350万円となっている。ただし、海外留学する場合や大学院に進学する場合などは、450万円まで借りることができる。この金額は、4年制大学の平均的な教育費用をカバーできる水準に設定されている。

一方、民間の教育ローンの借入限度額は金融機関によって異なる。たとえば、三井住友銀行の教育ローン(無担保型)では、10万円から300万円までの範囲で借り入れが可能である。ただし、本ローンを含めた無担保総借入額が前年度税込年収の50%以内という条件がある。

借入限度額が高いからといって、必要以上に借り入れるのは賢明ではない。教育にかかる総費用を正確に見積もり、自己資金でまかなえる部分を差し引いたうえで、必要最小限の金額を借り入れることが大切である。

返済期間の比較

返済期間は、毎月の返済額と総返済額に大きく影響する。国の教育ローンと民間ローンでは、選択できる返済期間に違いがある。

国の教育ローンの返済期間は、原則として15年以内となっている。ただし、母子家庭、父子家庭、世帯年収200万円以内の方などは、18年以内の返済期間を選択することができる。

民間の教育ローンの返済期間は、金融機関によって異なるが、多くの場合1年から10年の間で選択できる。たとえば、三井住友銀行の教育ローン(無担保型)では、1年以上10年以内(1か月きざみ)で返済期間を設定できる。

返済期間を長くすると毎月の返済額は少なくなるが、支払う総利息は増加する。一方、返済期間を短くすると毎月の返済額は多くなるが、総返済額は少なくなる。たとえば、300万円を借りた場合、10年返済と15年返済では次のような違いがある。

返済期間毎月の返済額(概算)総返済額(概算)
10年29,700円356万円
15年20,900円376万円
※金利3.475%(変動)で計算。金利の変動により実際の返済額は変わる場合がある。

返済期間の選択は、毎月の家計の余裕と、ローン完済後の資金計画を考慮して決める必要がある。たとえば、子どもの進学時期に合わせて返済を終えるプランや、自身の退職までに返済を終えるプランなどが考えられる。

次のセクションでは、国の教育ローンと民間ローンの申込条件と審査基準の違いについて詳しく見ていく。

申込条件と審査基準の違い

教育ローンを利用するためには、一定の条件を満たす必要がある。国の教育ローンと民間ローンでは、申込条件や審査基準に違いがあり、これらの違いが利用可能性に大きく影響する。ここでは、両者の申込条件と審査基準について詳しく見ていく。

国の教育ローンの申込条件と審査基準

国の教育ローンは、教育の機会均等を目的とした公的な融資制度であるため、比較的厳格な条件が設けられている。最も重要な条件は、世帯の年収制限である。 子供が1人の場合、世帯年収(所得)が790万円(600万円)以内であることが求められる。子供の人数が増えるにつれて、この制限は緩和される。

また、申込者は以下の条件を満たす必要がある。

  1. 融資の対象となる学校に入学・在学する子供の保護者であること
  2. 申込時点で満20歳以上であること
  3. 安定した収入があること(年金収入のみの場合は利用不可)
  4. 日本国内に居住していること

審査基準としては、世帯の年収や返済能力、過去の借入状況などが総合的に判断される。また、連帯保証人や担保は原則として不要だが、代わりに教育資金融資保証基金による保証が付される。

民間の教育ローンの申込条件と審査基準

民間の教育ローンは、金融機関によって条件が異なるが、一般的に国の教育ローンよりも柔軟な申込条件が設定されている。多くの場合、世帯年収の上限は設けられておらず、より幅広い層が利用できる。

たとえば、三井住友銀行の教育ローン(無担保型)の場合、主な申込条件は以下のとおりである。

  1. 申込時満20歳以上、満65歳以下であること
  2. 前年度税込年収が200万円以上(個人事業主の場合は所得金額)で、現在安定した収入があること
  3. 当行指定の保証会社の保証を受けられること
  4. 日本国内に居住していること

審査基準としては、年収や勤務先の安定性、他の借入状況、返済履歴などが総合的に判断される。民間ローンの場合、銀行の審査に加えて保証会社の審査も行われるのが一般的である。

ただし、民間ローンは金融機関によって条件が異なるため、複数の金融機関の商品を比較検討することが大切である。また、審査に通りやすい反面、金利が国の教育ローンより高くなる傾向がある点にも注意が必要である。

申込から融資実行までの流れ

国の教育ローンと民間ローンでは、申込から融資実行までの流れにも違いがある。国の教育ローンの場合、申込から融資実行まで通常2~3週間程度かかるのに対し、民間ローンは1週間程度で融資が可能な場合が多い。

緊急に資金が必要な場合は、手続きの迅速さも選択の基準となりうる。 たとえば、入学金の支払期限が迫っている場合などは、手続きの早い民間ローンを選択するのも一つの方法である。

ただし、いずれの場合も、必要書類をすべてそろえて申し込むことが重要である。所得証明書や在学証明書、資金使途を証明する書類などが必要となるため、事前に準備しておくとよい。

次のセクションでは、これまでの比較をまとめつつ、あなたに最適な教育ローンの選び方について解説する。

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専門家のワンポイントアドバイス
教育ローンの申し込みを検討する際は、複数の金融機関に相談してみることをおすすめします。条件や審査基準の違いを比較することで、より良い選択ができる可能性があります。

まとめ:あなたに最適な教育ローンの選び方

これまで、国の教育ローンと民間ローンの特徴を比較してきた。ここでは、それらの情報を踏まえたうえで、自分に最適な教育ローンを選ぶためのポイントと、教育ローンを賢く利用するための注意点をまとめる。

教育ローンの選択は、単に金利の高低だけでなく、総合的な判断が必要である。 以下の点を考慮しながら、自分の状況に最も適したローンを選ぶとよいだろう。

  1. 必要資金の額と借入可能額 まず、教育にかかる総費用を正確に見積もり、そこから自己資金を差し引いた額を借入必要額とする。国の教育ローンは350万円(特定の場合は450万円)まで借りられるが、民間ローンは300万円程度が上限となることが多い。必要資金が多い場合は、国の教育ローンを検討するとよいだろう。
  2. 世帯年収と申込条件 国の教育ローンには世帯年収の上限があるため、年収が高い場合は利用できないことがある。一方、民間ローンは年収の下限はあるものの、上限は設けられていないことが多い。自身の年収を考慮し、適切なローンを選ぶ必要がある。
  3. 金利と返済期間 国の教育ローンは固定金利で低利率だが、民間ローンは変動金利で金利が比較的高い。ただし、返済期間は民間ローンのほうが柔軟に設定できる場合が多い。長期的な視点で総返済額を計算し、自身の家計に無理のない返済計画を立てることが重要である。
  4. 審査のしやすさと手続きの速さ 一般的に、民間ローンのほうが審査は通りやすく、手続きも早い。緊急に資金が必要な場合は、この点も考慮に入れるとよい。
  5. 繰上返済の柔軟性 将来的に繰上返済を考えている場合は、手数料や条件を確認しておく。民間ローンのほうが繰上返済の条件が柔軟な場合が多い。

教育ローンを利用する際の注意点としては、以下が挙げられる。

まず、借りすぎに注意することが大切である。教育費用を過大に見積もったり、必要以上に余裕を持たせたりして、返済に苦しむことのないよう、必要最小限の金額を借りるようにする。

また、返済計画は慎重に立てる必要がある。子どもの卒業後の就職状況や、自身の退職までの期間なども考慮に入れ、無理のない返済計画を立てることが重要である。

さらに、教育ローンと併せて奨学金の利用も検討するとよい。給付型奨学金や無利子の奨学金を組み合わせることで、借入額を抑えることができる可能性がある。

最後に、教育ローンは子どもの将来への投資である一方で、長期にわたる金銭的負担でもある。子どもとよく話し合い、教育の目的や将来の進路について十分に検討したうえで、教育ローンを利用することが大切である。

教育ローンの選択は、家族の将来に大きな影響を与える重要な決断である。本記事の情報を参考に、慎重に検討し、最適な選択をすることで、子どもの教育を支える強力な味方となるだろう。

Q
教育ローンと奨学金は併用できますか?
A

はい、併用可能です。むしろ、教育ローンと奨学金を組み合わせることで、借入額を抑えられる可能性があります。給付型や無利子の奨学金を優先的に検討し、足りない分を教育ローンで補うという方法が一般的です。

Q
教育ローンの返済中に、子どもが退学した場合はどうなりますか?
A

基本的に、返済は継続する必要があります。ただし、状況によっては返済条件の変更などの相談に応じてくれる場合もあります。退学が決まった場合は、速やかに金融機関に連絡し、対応について相談することをおすすめします。

Q
教育ローンの審査に落ちた場合、再申し込みはできますか?
A

再申し込みは可能ですが、審査に落ちた理由を確認し、その問題を解決してから再申し込みすることが重要です。また、別の金融機関や保証会社を利用する教育ローンを検討するのも一つの選択肢です。

執筆者・監修者
十河 賢

◇経歴10年以上のウェブライター&ファイナンシャルプランナー
・CFP保有者・SEO検定1級・宅建士・住宅ローンアドバイザー
◇ウェブライティング講座を開講中

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