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学資保険のインフレリスク:物価上昇で目減りする教育資金の守り方

驚いた表情でメガネをかけた若い女性が指さしている様子 教育費
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執筆者・監修者
十河 賢

◇経歴10年以上のファイナンシャルプランナー
◇CFP保有者・宅建士(未登録)・証券外務員二種など
◇個人相談・FP講師・(元)保険募集人の経験あり

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子どもの教育にかかる費用の準備に頭を悩ませている方も多いのではないだろうか。学資保険は教育資金の準備方法として人気だが、インフレリスクを考慮していないと、18年後に受け取る金額の実質価値が大きく目減りする可能性がある。

この記事では、学資保険とインフレの関係、物価上昇が教育資金に与える影響、そして実質価値を守るための具体的な対策を詳しく解説する。賢い選択で子どもの未来をしっかりと支える方法を一緒に考えていこう。

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学資保険が抱えるインフレリスク:仕組みと弱点

学資保険は高い返戻率を謳い文句に、長期的な教育資金準備の手段として人気がある。しかし、その価値はインフレによって大きく左右される。ここでは、インフレが学資保険の実質的な価値にどのような影響を与えるかを詳しく見ていく。

専門家のワンポイントアドバイス
インフレ率の予測は難しいですが、過去のデータを参考に、年平均1~2%程度を想定して計画を立てるのが賢明です。

学資保険の仕組み:インフレに弱い原因

学資保険は、子どもの教育資金を計画的に準備するための保険商品である。この保険の最大の特徴は、契約時に決められた金額が、将来的に確実に支払われる点にある。つまり、契約時の物価水準を基に給付金額が設定され、それが変動することはない。

たとえば、18年後に400万円の保険金額を受ける契約をした場合、18年後には確実に400万円が支払われる。この点が、多くの人にとって学資保険の魅力となっている。

しかし、この「固定された保険金額」という特徴は、長期的な視点で見ると必ずしも有利とは限らない。なぜなら、時間の経過とともに進行するインフレーションの影響を受けるからだ。

学資保険は、毎月または一定期間ごとに保険料を支払い、契約時に定めた金額を将来受け取る仕組みである。しかし、この「固定された保険金額」という特徴は、インフレに弱い原因となる。時間の経過とともに物価が上昇すると、同じ金額でも購入できるものの量が減少する。つまり、契約時に400万円の価値があると思っていた保険金が、18年後には実質的に大きく目減りしている可能性があるのだ。

インフレが学資保険に与える影響

インフレが学資保険に与える影響を具体的な数字で見てみよう。年率2%のインフレが18年間続いた場合、400万円の実質的な価値は約280万円相当にまで目減りする。これは約30%もの価値が失われることを意味する。さらに、年率3%のインフレ環境では、400万円の実質価値は約235万円にまで下落する。学資保険で準備したつもりの教育資金が、実際に必要となる時点では大きく不足する可能性があるのだ。

インフレーションとは、物価が持続的に上昇する現象のことである。これにより、同じ金額でも購入できる物やサービスの量が減少する。つまり、お金の価値が時間とともに低下するのだ。

学資保険の場合、保険金額は固定されているため、インフレの影響をもろに受けることになる。契約時に400万円の価値があると思っていた保険金が、18年後には実質的にそれ以下の価値しかない可能性がある。

たとえば、年率2%のインフレが18年間続いた場合、400万円の実質的な価値は約280万円相当にまで目減りしてしまう。これは、当初想定していた教育費用を賄えなくなる可能性を示唆している。

このように、学資保険の仕組みとインフレの関係を理解することは、将来の教育資金計画を立てる上で非常に重要である。次の章では、具体的な数字を用いて、インフレが学資保険の価値にどのような影響を与えるかをさらに詳しく見ていく。

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物価上昇による学資保険の目減り:数値で見る具体的影響

学資保険の仕組みとインフレの関係について理解したところで、具体的な数字を見ていこう。ここでは、現在400万円と想定される大学費用が、18年後にどのように変化するかを、異なるインフレ率のシナリオで検証する。

専門家のワンポイントアドバイス
学資保険を選ぶ際は、返戻率だけでなく、長期的な物価上昇率を考慮することが大切です。過去18年間の教育費の変化傾向を参考に、将来必要になる実質金額を見積もっておきましょう。

大学費用400万円の18年後の変化

現在400万円と想定される大学費用が、18年後にどのように変化するかを、年間インフレ率0.5%、1%、2%、3%のケースで見てみよう。

インフレ率18年後の大学費用増加額
0.5%約437万円37万円
1%約477万円77万円
2%約569万円169万円
3%約675万円275万円

この表からわかるように、インフレ率によって18年後に必要となる金額は大きく異なる。特に注目すべきは、年2%以上のインフレが続くと、当初の想定額から150万円以上の上乗せが必要になる点だ。

たとえば、年率2%のインフレが続いた場合、18年後には569万円が必要となる。これは当初の想定額400万円と比べて、実に169万円もの差が生じることを意味する。さらに、年率3%のインフレ下では、275万円もの追加資金が必要となる計算だ。

一方、学資保険で準備した400万円は、契約時の金額のまま変わらない。つまり、インフレが進行すればするほど、学資保険の実質的な価値は目減りしていくのである。

このような具体的な数字を見ると、学資保険に加入する際には、将来のインフレ率を慎重に考慮する必要があることがわかるだろう。高い返戻率をうたう学資保険であっても、インフレの影響を考えると、必ずしも十分な教育資金が確保できるとは限らないのだ。

過去18年間の大学授業料の実際の推移

多くの人は、18年後の教育費用がそれほど変わらないとイメージするかもしれない。しかし、実際の大学授業料の推移を見ると、その認識が必ずしも正確でないことがわかる。平成15年(2003年)から令和3年(2021年)までの18年間の大学授業料の変化を見てみよう。

年度国立大学授業料前年比私立大学授業料前年比
H15520,800円807,413円
H16520,800円0%817,952円1.30%
H17535,800円2.88%830,583円1.54%
H18535,800円0%836,297円0.69%
H19535,800円0%834,751円-0.18%
H20535,800円0%848,178円1.61%
H21535,800円0%851,621円0.41%
H22535,800円0%858,265円0.78%
H23535,800円0%857,763円-0.06%
H24535,800円0%859,367円0.19%
H25535,800円0%860,266円0.10%
H26535,800円0%864,384円0.48%
H27535,800円0%868,447円0.47%
H28535,800円0%877,735円1.07%
H29535,800円0%900,093円2.55%
H30535,800円0%904,146円0.45%
R1535,800円0%911,716円0.84%
R2535,800円0%927,705円1.75%
R3535,800円0%930,943円0.35%

国立大学の場合、平成15年の520,800円から平成17年に535,800円に上昇した後は変化がない。一見、インフレの影響は小さいように見える。

しかし、私立大学の状況は大きく異なる。平成15年に807,413円だった私立大学の平均授業料は、令和3年には930,943円となり、約15.3%上昇している。これは年平均で約0.8%のペースで上昇していることになる。

特に注目すべきは、平成28年から平成29年にかけての2.55%という大幅な上昇だ。また、平成15年から平成16年、平成19年から平成20年、令和元年から令和2年にかけても1.5%を超える上昇が見られる。デフレと言われた期間であってもこれだけ上昇しているのだ。

この実際のデータから、以下の重要な点が浮かび上がる。

  1. 教育費用は長期的に見ると確実に上昇傾向にある。
  2. その上昇は一定ではなく、年によって大きく変動する可能性がある。
  3. 18年という期間で見ると、15%以上の上昇が現実に起こっている。

これらの事実は、教育資金の準備において、インフレの影響を軽視してはいけないことを示している。学資保険に加入する際には、このような長期的な費用の上昇トレンドを考慮に入れ、より慎重な計画を立てる必要があるだろう。

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目減りする教育資金を守る方法

インフレリスクに対抗し、教育資金の実質価値を守るためには、複合的なアプローチが効果的である。

インフレに強い資産での運用

インフレに強い資産として、株式や不動産関連商品が挙げられる。長期的には物価上昇率を上回るリターンが期待できるからだ。 株式インデックスファンドは低コストで分散投資が可能であり、REIT(不動産投資信託)は不動産価格や賃料がインフレに連動して上昇する傾向がある。また、インフレ連動債券はインフレ率に連動して金利が調整される特徴を持つ。

学資保険と投資信託の組み合わせ

リスクと安全性のバランスを取るために、教育資金の一部を学資保険で、残りを投資信託などで運用する方法が効果的である。 例えば、教育資金の計画が400万円の場合、250万円を学資保険で確保し、150万円を投資信託で運用するという方法が考えられる。この方法により、基本的な教育資金を確保しつつ、インフレによる目減りを投資リターンでカバーする戦略が取れる。

専門家のワンポイントアドバイス
学資保険と投資信託を組み合わせる際は、ご家庭のリスク許容度を正確に把握することが重要です。無理なく継続できる資産配分を心がけ、年に一度は資産配分の見直しを行いましょう。

段階的な資金配分

子どもの年齢に応じて、資金配分を段階的に調整していくアプローチも効果的である。 子どもの年齢が低い時期(0〜10歳)は株式など成長性重視の資産の比率を高め、中学・高校時代(11〜17歳)は徐々にリスクを下げ、大学直前(18歳〜)は安全性を最優先するという方法だ。 この「年齢別資産配分」により、長期的な成長機会を活かしつつ、教育資金が必要な時期に向けて安全性を高めていくことができる。

まとめ:学資保険のインフレリスクを考慮した賢い教育資金計画

学資保険は教育資金を計画的に準備するための有効な手段の一つである。しかし、インフレリスクという隠れた課題があることを理解する必要がある。本記事で見てきたように、物価上昇によって教育資金の実質価値が大きく目減りする可能性は無視できない。

教育資金を守るための重要ポイントとして、まずインフレリスクを適切に認識することが大切である。学資保険の固定金額は、将来的に購買力が低下する可能性がある。また、名目金額ではなく、将来の実質的な価値で教育資金を計画すべきだ。さらに、学資保険だけに頼らず、インフレに強い資産も組み合わせる複合的な戦略を取ることが効果的である。そして、経済状況や教育計画の変化に応じて、資金計画を定期的に見直すことも忘れてはならない。

最終的に大切なのは、「教育資金の実質的な価値を守る」という視点である。学資保険の安全性とインフレへの備えをバランスよく組み合わせることで、子どもの将来の教育を確実に支える資金計画を立てることができるだろう。

学資保険は教育資金準備の一つの選択肢だが、インフレリスクを考慮した上で、家庭の状況に合わせた総合的な資金計画を立てることをおすすめする。子どもの未来のために、賢明な教育資金準備を始めよう。

Q
学資保険に加入済みですが、インフレ対策として今からできることはありますか?
A

はい、あります。追加で積立投資を始めたり、契約内容の見直しを検討したりすることができます。また、定期的に資金計画を見直すことも重要です。

Q
インフレ対策として、外貨建ての金融商品は有効ですか?
A

外貨建て商品はインフレヘッジになる可能性がありますが、為替リスクも伴います。自身のリスク許容度と相談しながら、慎重に検討する必要があります。

Q
学資保険以外の教育資金準備方法として、どのような選択肢がありますか?
A

投資信託、株式、債券などの金融商品や、NISA(少額投資非課税制度)の活用、また教育ローンの検討なども選択肢となります。家庭の状況に合わせて最適な方法を選びましょう。

執筆者・監修者
十河 賢

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