住宅ローンの団信の種類と特約の選び方

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この記事を読むメリット
  • 団信の種類と特約の違いを理解することができる
  • 自身に適した団信の特約を選ぶためのポイントがわかる
  • 団信特約のメリットとデメリットを比較し、加入の必要性を判断できる
  • 既契約の生命保険と団信特約を組み合わせた効率的な保障設計ができる
  • 団信特約の選び方を学ぶことで、住宅ローン借り入れに備えることができる

結論

団体信用生命保険(団信)には、基本となる通常の団信に加え、がん特約、三大疾病特約、八大疾病特約、介護特約など、様々な特約が用意されている。

これらの特約は、団信の保障内容を拡大し、住宅ローン借り手のニーズに応じたきめ細かい保障を提供するものである。特約の選択に際しては、自身の健康状態やライフプラン、既契約の生命保険の内容などを総合的に考慮し、必要な保障を過不足なく確保することが肝要である。

団信の特約は、手頃な保険料で手厚い保障が得られるメリットがある一方、金利の上昇や保障内容の限定、契約期間中の変更不可などのデメリットもあるため、メリットとデメリットを慎重に比較検討する必要がある。また、団信の特約と既契約の生命保険を組み合わせるなど、効率的な保障設計を目指すことも重要である。団信の特約を理解し、賢明な選択を行うことが、住宅ローン借り入れに備える上での鍵となるだろう。

住宅ローンを利用する際、多くの金融機関で団体信用生命保険(団信)への加入が義務付けられている。団信は、借り手が万が一死亡や高度障害状態になった場合に、住宅ローンの残債務を保証する仕組みだ。一方、団信の基本的な保障に上乗せして、ガンや三大疾病といった特定の病気を保障する特約を付帯するかどうかは、借り手の判断に委ねられることが多い。

そのため、団信の種類や特約の内容について理解を深めておくことが大切である。本記事では、団信の種類を解説した上で、特約の選び方について詳しく説明する。

団信の種類

団信には、基本となる「通常の団信」に加えて、特約を付けることで保障内容を拡大したプランが存在する。主な特約として、「がん特約」「三大疾病特約」「八大疾病特約」「介護特約」などがある。これらの特約は、団信の基本的な死亡・高度障害の保障に上乗せする形で、特定の病気やケガ、介護状態などに対する保障を提供するものである。以下では、それぞれの団信プランの特徴について詳しく解説する。

一般の団信

一般の団信は、住宅ローン借り手の死亡または高度障害状態を保障する基本的なプランである。

高度障害状態とは、両目の失明、両上肢の切断、両下肢の切断など、著しい障害が残った状態を指す。通常の団信に加入することで、もしこれらの事態が発生した場合、その時点の住宅ローン残債務が保険金によって弁済されるため、ローンの返済を続ける必要がなくなる。

多くの金融機関で団信への加入が住宅ローン契約の条件となっているが、これは借り手の万一の事態に備えると同時に、金融機関にとってもローン債権の保全を図る目的がある。団信の保険料は、通常、住宅ローンの金利に上乗せされる形で借り手が負担するが、金利の内訳として明示されないケースが多い。

がん特約付き団信

がん特約付き団信は、一般の団信の保障内容に加えて、がんの診断確定時にも保険金が支払われるプランである。

近年、がんの罹患率が上昇傾向にあることから、がん特約への関心が高まっている。がんと診断された場合、治療に専念するためには仕事を休まざるを得ないケースが多く、収入の減少に直面するリスクがある。がん特約は、このような事態に備える保障として評価されている。

ただし、がんの定義や保険金支払いの対象となるがんの範囲は、団信商品によって異なる点に注意が必要である。例えば、上皮内がんや大腸の粘膜内がんなど、浸潤のないごく初期のがんは保障対象外となるケースがある。また、がん特約の多くには、責任開始日から90日の免責期間が設定されており、この期間内にがんと診断されても保険金は支払われない。

三大疾病特約付き団信

三大疾病特約付き団信は、がんに加えて、急性心筋梗塞と脳卒中の発症時にも保障が適用されるプランである。

がん・心疾患・脳血管疾患は、日本人の三大死因であり、いずれも発症後の治療や療養に長期間を要するケースが多い。特に、急性心筋梗塞や脳卒中は、突発的に発症し、後遺症が残るリスクも高いことから、がんと並んで重大な健康リスクと認識されている。

三大疾病特約では、これらの疾病により所定の状態が一定期間継続した場合に、住宅ローン債務の全部または一部が保険金で充当される。ただし、保険金支払いの対象となる発症時の重症度や、所定の状態の定義は商品によって異なるため、加入時に確認が必要である。通常、急性心筋梗塞では労働制限を必要とする状態、脳卒中では言語障害や運動麻痺などの後遺症が一定期間続くことが保険金支払いの条件とされる。

八大疾病特約付き団信

八大疾病特約付き団信は、三大疾病に加えて、5つの生活習慣病を保障対象に含めた幅広いプランである。

対象となる5つの生活習慣病は、一般的に高血圧、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎である。これらの疾患は、日本人に罹患率の高い代表的な生活習慣病であり、重症化すると日常生活に大きな支障をきたす。

八大疾病特約では、これらの生活習慣病により所定の状態が一定期間継続した場合に、住宅ローン債務の全部または一部が保険金によって弁済される仕組みである。ただし、保険金支払いの対象となる病状の程度や継続期間については、商品ごとの基準があるため、加入前の確認が不可欠である。

生活習慣病は、日頃の予防によりリスクを低減できる反面、一度発症すると完治が難しいケースも多い。八大疾病特約は、幅広い健康リスクに備える選択肢として、検討に値するプランといえる。

介護特約付き団信

介護特約付き団信は、病気やケガにより所定の要介護状態に該当した場合に、住宅ローン債務を保険金で弁済するプランである。

この特約の対象となる要介護状態は、公的介護保険制度における要介護認定の基準を参考にしているケースが多い。例えば、要介護2以上や要介護3以上の認定を受けた状態が一定期間継続した場合などが、保険金支払いの条件として定められる。

介護特約は、加入者の年齢構成が比較的高い団信商品で提供されることが多い。これは、高齢になるほど要介護状態に陥るリスクが高まるためである。ただし、特約の対象は必ずしも高齢者に限定されるわけではない。病気やケガにより若年層が要介護状態になるケースも考えられるため、幅広い年齢層にとって意義のある保障といえる。

介護特約の加入に際しては、保険金支払いの対象となる要介護状態の定義や、免責期間の有無などを確認することが重要である。特約の内容は商品によって異なるため、自身のニーズに合った保障を備えた団信を選ぶことが肝要である。

【具体例】一般的な支払い基準

  1. がん
    • 責任開始日から90日の免責期間経過後に、初めて悪性新生物(ガン)に罹患し、医師によって診断確定されたとき
  2. 急性心筋梗塞
    • 責任開始日以後に発症し、労働制限を必要とする状態が60日以上継続したと医師に診断されたとき
  3. 脳卒中
    • 責任開始日以後に発症し、言語障害、運動麻痺などの後遺症が60日以上継続したと医師に診断されたとき
  4. 高血圧、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎
    • 責任開始日以後に発症し、所定の状態が180日以上継続したと医師に診断されたとき
  5. 介護
    • 公的介護保険制度の要介護2以上の認定を受け、その状態が180日以上継続したとき
    • 保険会社独自の基準による所定の要介護状態に該当し、その状態が180日以上継続したと医師に診断されたとき

ただし、これらはあくまで一般的な例であり、実際の保険金支払いの基準は商品ごとに異なる。加入前に、該当する団信の約款や重要事項説明書などで、保障内容や支払い基準を十分に確認することが大切である。

CFP
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団信の特約は、住宅ローン契約時にのみ付帯できます。後からの追加や変更はできないので、契約時に慎重に選びましょう。

団信の特約の選び方

団信の特約は、基本となる死亡・高度障害保障に上乗せする形で、がんや三大疾病など特定の疾病に対する保障を拡大するためのオプションである。特約の選択は任意だが、自身の健康リスクや家族の状況を考慮し、必要な保障を備えた団信を選ぶことが重要である。ここでは、団信の特約を選ぶ際のポイントを解説する。

特約の必要性を考える

団信の特約の必要性を判断するには、自身の健康状態や家族の状況、将来のリスクを総合的に考慮する必要がある。

例えば、家族に特定の疾病の罹患歴がある場合や、自身の生活習慣が疾病リスクを高めていると感じる場合は、特約による手厚い保障が望ましい。また、団信の保障期間が長期にわたる場合は、その間の疾病リスクの変化も視野に入れておくことが重要である。

一方、現在の健康状態に自信があり、疾病リスクが低いと判断できる場合は、特約を付けない選択肢も考えられる。ただし、将来のリスクを予測することは難しいため、安易に特約を省くことは避けたほうが無難である。

保障内容をチェックする

特約の保障内容は商品によって異なるため、加入前に詳細を確認し、自身のニーズに合ったものを選ぶことが大切である。

特に、保険金支払いの対象となる疾病の範囲や、支払い基準となる病状の程度には注意が必要である。例えば、がん特約の場合、上皮内がんや粘膜内がんが保障対象外となるケースがある。三大疾病特約や八大疾病特約では、急性心筋梗塞や脳卒中の後遺症の程度や継続期間が保険金支払いの条件として定められている。

これらの基準は商品によって異なるため、複数の商品の保障内容を比較検討することが重要である。保障の手厚さだけでなく、保険金支払いの条件が自身の想定するリスクに合致しているかどうかを確認する必要がある。

既契約の生命保険との保障の重複を確認する

団信の特約による保障と、既に加入している生命保険の保障内容に重複がないかを確認することも重要である。

例えば、がん保険や三大疾病保険にすでに加入している場合、団信のがん特約や三大疾病特約と保障が重複する可能性がある。保障の重複自体は問題ないが、保険料の二重払いを避けるため、団信の特約を選択する際は、既契約の保険の保障内容を改めて確認することが望ましい。

既契約の保険で十分な保障が得られると判断できる場合は、団信の特約を付けない選択肢も考えられる。ただし、団信の特約は住宅ローン残高に応じた高額の保障が得られるメリットがあるため、保障額の観点からも既契約の保険との比較検討が必要である。

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団信の特約による保障と、既契約の生命保険の保障内容を比較することで、重複や漏れのない効率的な保障設計ができます。

免責事項や給付条件を確認する

団信の特約には、免責事項や給付条件などの留意点があるため、加入前に十分な確認が必要である。

多くの特約では、責任開始日から一定の免責期間が設定されている。例えば、がん特約では責任開始日から90日の間に診断確定されたがんは保障対象外となるケースが多い。また、特約により保障対象となる疾病に罹患した場合でも、所定の状態が一定期間継続することが保険金支払いの条件とされる。

これらの免責事項や給付条件は、加入後のトラブルを避けるためにも、事前の確認が欠かせない。商品によって設定が異なるため、各商品の約款や重要事項説明書などで詳細を確認することが重要である。

住宅ローン金利への影響を見極める

団信の特約を付ける場合、住宅ローンの金利に上乗せがあるケースが多いため、特約のメリットとのバランスを考える必要がある。

特約の保障内容が充実しているほど、金利の上乗せ幅は大きくなる傾向にある。金利の上昇は、住宅ローンの返済額の増加につながるため、家計への影響を無視できない。

特約の必要性を感じつつも、金利上昇の影響が気になる場合は、複数の商品の金利設定を比較検討することが望ましい。金利上昇のデメリットを最小限に抑えつつ、必要な保障を確保できる商品を選ぶことが肝要である。

また、団信の特約による金利上乗せ分は、住宅ローン控除の対象とならないケースが多い。税制面のデメリットも考慮し、トータルなコストを見極める必要がある。

【比較】既契約の保険と団信の特約

団信に特約を付帯するかどうかの判断材料として、既契約の保険との比較がある。

特徴団信既存の生命保険
加入時期住宅ローン契約時のみ任意のタイミング
保障内容死亡・高度障害に加え、特約で特定の疾病を保障死亡・高度障害・特定の疾病など、様々なプランがある
保険金額住宅ローン残高に連動契約時に設定した金額
保険期間住宅ローンの返済期間に連動契約時に設定した期間(定期型)または終身
保険料払込方法住宅ローンの金利に上乗せ月払い・年払いなど、契約時に設定
保険料金利上乗せ分として間接的に支払い直接支払い
保険料の水準団体保険のため、個別の生命保険と比べて相対的に安い個別の契約のため、団体保険と比べて相対的に高い
保障の見直し原則として契約期間中は変更不可契約内容の見直しが可能
解約住宅ローン完済時に自動的に終了契約者の意思で解約可能
税制優遇住宅ローン控除の対象外生命保険料控除の対象

上記の表をもとに、次のポイントを検討してみるといいだろう。

  • 団信は住宅ローン契約時にしか加入できないのに対し、生命保険は任意のタイミングで加入できる
  • 団信の保障内容は特約で拡張できるが、基本的には住宅ローン残高に連動しており、保険期間も住宅ローンの返済期間に連動する
  • 団信の保険料は住宅ローンの金利に上乗せされるのに対し、生命保険の保険料は直接支払う
  • 団信は契約期間中の変更が原則としてできないのに対し、生命保険は契約内容の見直しが可能
  • 団信には税制優遇がないのに対し、生命保険は生命保険料控除の対象となる

団信特約のメリットとデメリット

団信の特約には、メリットとデメリットがある。特約の必要性を判断する際には、これらを比較考量することが重要である。ここでは、団信特約のメリットとデメリットについて解説する。

メリット

団信の特約には、以下のようなメリットがある。

  1. 手頃な保険料で手厚い保障が得られる
  2. 住宅ローン残高に連動した高額の保障が得られる
  3. 住宅ローンの返済を確実に保障できる
  4. 審査が簡易で加入しやすい

団信は団体保険のため、個別の生命保険と比べて保険料が相対的に安く、特約を付けることで死亡・高度障害以外の幅広いリスクに備えることができる。また、保険金額が住宅ローン残高に連動するため、一般的な生命保険と比べて高額の保障が得られる。

団信の特約により、住宅ローンの返済中に重大な疾病に罹患しても、返済を続ける必要がなくなる。借り手の死亡や高度障害だけでなく、幅広い健康リスクに備えることで、住宅ローンの返済を確実に保障できるのである。

さらに、団信は団体保険のため、個別の生命保険と比べて審査が簡易であり、健康状態に不安がある場合でも加入しやすいというメリットがある。

デメリット

一方、団信の特約には、以下のようなデメリットもある。

  1. 住宅ローンの金利が上がる
  2. 保障内容や条件が限定的である
  3. 契約期間中の変更ができない
  4. 住宅ローン控除の対象外である

特約を付けると、その分だけ住宅ローンの金利に上乗せされるため、毎月の返済額や総返済額の増加につながり、長期的な負担増となる。

また、団信の特約は保障内容や支払い条件が限定的な場合があり、例えばガン特約では上皮内ガンが保障対象外となることが多い。三大疾病特約や八大疾病特約でも、保険金支払いの対象となる病状の程度や継続期間に一定の条件がある。

さらに、団信の特約は契約期間中の変更ができないため、ライフスタイルの変化に合わせた保障内容の見直しができない。

加えて、団信の特約による金利の上乗せ分は、住宅ローン控除の対象外であるため、税制面でのデメリットもある。

CFP
CFP

団信の特約は、金利上昇というデメリットがあります。長期的な返済負担を考慮し、本当に必要な特約かどうかを見極めましょう。

まとめ

団信の特約は、手頃な保険料で手厚い保障が得られるメリットがある一方で、金利の上昇や保障内容の限定、契約期間中の変更不可といったデメリットもある。特約の選択に際しては、自身の健康状態やライフプランを考慮しつつ、メリットとデメリットを慎重に比較検討することが肝要である。そして、団信の特約と既契約の生命保険を組み合わせるなど、効率的な保障設計を目指すことが賢明な選択といえるだろう。

Q
団信の特約は、途中で解約することはできますか?
A

団信の特約は、住宅ローンの契約期間中は解約することができません。住宅ローンを完済するか、借り換えをしない限り、特約は継続されます。

Q
団信の特約に加入する際、健康診断は必要ですか?
A

団信の特約に加入する際、原則として健康診断は不要です。ただし、告知内容によっては、医師の診断書を求められる場合があります。

Q
団信の特約で支払われる保険金は、税金がかかりますか?
A

団信の特約で支払われる保険金は、原則として非課税です。ただし、保険金を受け取った後の利息については、課税の対象となる場合があります。

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