投資コストを削減!投資信託とETFの手数料を徹底比較

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  • 投資コストの内訳を知りたい方
  • 長期投資における総コストを比較したい方
  • 手数料削減で運用効率を上げたい方
  • 執筆者・監修者:十河 賢
  • 経歴10年以上のウェブライター&ファイナンシャルプランナー
  • CFP保有者・証券外務員二種
  • 宅建士(未登録)・住宅ローンアドバイザー
  • SEO検定1級・エクセルVBAエキスパート
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投資で利益を上げたいなら、手数料コストを見逃してはならない。「良い商品を選んでいるから大丈夫」と安心していても、高い手数料が長期的なリターンを大きく削ってしまうことがある。投資信託とETFには、それぞれ異なる手数料体系があり、同じ指数に連動する商品でも年間コストに3倍以上の差が生じることも珍しくない。

この記事では両者の手数料構造を徹底比較し、あなたの投資スタイルに合った低コスト戦略を見つけるための具体的な指針を解説する。

投資における「見えるコスト」と「見えないコスト」

投資の成功には手数料コストの理解が不可欠である。どんなに良い商品を選んでも、高いコストを支払い続ければ長期的なリターンは大きく削られる。投資信託とETFを比較する際、コスト構造の違いを正確に把握することが賢明な投資判断につながる。

見えるコストとは何か

見えるコストとは投資家が明示的に確認できる手数料のことである。これには投資信託の購入時手数料や信託報酬、ETFの売買手数料や経費率などが含まれる。これらは商品説明や目論見書に明記されており、投資前に確認できる。

例えば、投資信託の場合は購入時に3%の手数料がかかると明記されていれば、100万円の投資に対して3万円が差し引かれることが分かる。

見えるコストの代表的なものには以下がある:

  • 投資信託の購入時手数料(フロントエンドロード)
  • 投資信託の信託報酬(運用管理費用)
  • ETFの売買手数料
  • ETFの経費率(Expense Ratio)

見えないコストの影響

投資において、目に見えにくいコストが長期リターンに与える影響は驚くほど大きい。見えないコストには、売買スプレッド、トラッキングエラー、税金効率の違い、為替コストなどがある。例えば、頻繁な売買を行うETF投資では、売値と買値の差(スプレッド)が積み重なり、年間リターンを0.2~0.5%程度削ることもある。

また、指数との乖離(トラッキングエラー)も隠れたコストである。例えば、信託報酬が0.1%でも実際のパフォーマンスが指数と比べて0.3%劣っていれば、実質的なコストは0.4%と見なせる。これらの見えないコストは長期投資ではリターンを大きく左右する要因となる。

見えないコストの影響は複雑で多岐にわたり、投資家はこれらのコストを総合的に評価し、長期的な投資戦略に組み込む必要がある。

投資信託の手数料体系

投資信託には複数の手数料タイプが存在する。これらは個別に小さく見えても、長期的に見ると大きな金額になる可能性がある。

購入時手数料の仕組み

購入時手数料は投資信託を買う際に一度だけ支払う手数料で、投資額の最大3%程度が一般的である。近年はノーロード(購入時手数料無料)の投資信託が増えているが、依然として手数料が発生する商品も多い。例えば100万円の投資に対して3%の手数料がかかれば、実際に投資されるのは97万円となる。

購入時手数料は投資期間が短いほど年率換算のコスト負担が大きくなる。1年で換金すれば年率3%の負担だが、10年保有すれば年率0.3%の負担となる。このため、頻繁に売買する投資スタイルには不向きである。

信託報酬と信託財産留保額

信託報酬は投資信託の運用コストとして年率で表示され、毎日少しずつ資産から控除される継続的なコストである。国内株式インデックスファンドでは年0.3~0.7%程度、アクティブファンドでは年1.0~2.0%程度が一般的である。例えば信託報酬が年1%の場合、100万円の投資に対して年間1万円が差し引かれることになる。

信託財産留保額は解約時に支払う手数料で、他の投資家保護のために設定されている。一般的に0~0.5%程度で、インデックスファンドでは設定されていないことが多い。例えば100万円の解約に対して0.3%の留保額があれば、3,000円が差し引かれて返還される。

ETFの手数料体系

ETFの手数料は投資信託と異なる独自の特徴がある。全体的に低コストなものが多いが、売買方法により追加コストが発生する場合もある。

売買手数料の特徴

ETFは株式と同様に取引所で売買されるため、証券会社の株式売買手数料がかかる。この手数料は証券会社によって大きく異なり、近年では「売買手数料ゼロ」を掲げるネット証券も増えている。それ以外のネット証券でも定額制(数百円程度)や約定代金の0.05~0.5%程度が一般的である。一方、店舗型の証券会社では取引金額によっては数千円の固定手数料が発生することもある。

頻繁に売買する場合、この手数料は無視できない金額になる。例えば、100万円のETFを年に4回売買する場合、売買手数料率0.1%であれば年間4,000円のコストとなる。長期投資家の場合は影響は小さいが、短期売買を頻繁に行う投資家にとっては大きなコスト要因となる。海外ETFを取引する場合は、売買手数料に加えて為替手数料も考慮する必要がある。

経費率とその他のコスト

ETFの経費率(Expense Ratio)は、運用にかかる年間コストを示し、海外ETFは国内投資信託より大幅に低いケースが多い。例えば、S&P500に連動するETFでは0.03~0.1%程度であり、同様の指数に連動する投資信託(0.1~0.5%程度)と比較してコストが低い。

しかし、単純な経費率だけでなく、TER(Total Expense Ratio:総経費率)で比較することが重要である。TERには信託報酬に加えて、指数商標使用料、上場費用、監査費用、印刷費用等のその他費用も含まれる。公表されている経費率よりも実質的なコストが高くなることがあるため、目論見書や運用報告書で確認すべきである。

ETFの隠れたコストとしては売買スプレッドがある。これは売値と買値の差で、流動性の低いETFほど大きくなる傾向がある。また、海外ETFでは為替コストや現地での税金などが追加コストとなることもある。これらのコストは数値化しにくいが、長期的なリターンに影響を与える。

コスト比較の実例

実際の商品を用いたコスト比較で違いを明確にする。代表的な指数に連動する投資信託とETFを比較してみよう。

代表的な国内商品のコスト比較

日経平均株価に連動する投資信託とETFの典型的なコスト比較は以下のようになる:

投資信託(日経225インデックスファンド):

  • 信託報酬:年率約0.5%
  • 購入時手数料:ノーロード(0%)が増加傾向
  • 取引単位:100円から
  • 価格決定:1日1回の基準価額

ETF(NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信):

  • 経費率:年率約0.16%
  • 売買手数料:証券会社による(約0.05~0.2%程度)
  • 取引単位:1口単位
  • 価格決定:市場価格(リアルタイムで変動)

100万円を10年間投資した場合の純粋な運用コスト(信託報酬・経費率のみ)の差は、投資信託が約50,000円、ETFが約16,000円となり、約34,000円の差となる。運用パフォーマンスが同じと仮定すれば、ETFの方が有利になる。

ファイナンシャルプランナー
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専門家のワンポイントアドバイス
投資信託を選ぶ際は、信託報酬だけでなく「実質コスト」も確認しましょう。ファンド・オブ・ファンズなど、投資先ファンドの費用も含めた実質的な負担は目論見書に記載されています。

海外商品のコスト分析

S&P500指数に連動する商品では、コスト差はさらに顕著である:

投資信託(SBI・V・S&P500インデックス・ファンド):

  • 信託報酬:年率約0.094%
  • 購入時手数料:通常ノーロード(0%)
  • 取引通貨:円建て

ETF(バンガード S&P500 ETF/VOO):

  • 経費率:年率約0.03%
  • 売買手数料:証券会社による(約0.05~0.2%程度)
  • 取引通貨:米ドル建て(為替コストが発生)

100万円を20年間投資した場合の運用コストの差は、投資信託が約18,800円、ETFが約6,000円となり、約12,800円の差になる。ただし、ETFでは為替コストや売買手数料が追加でかかるため、実際の差は変動する。

低コスト投資の重要性

コスト削減が長期リターンに与える大きな影響について理解することは、投資成功の鍵である。

長期投資でのコスト影響度

長期投資においてわずかなコスト差が最終的な資産形成に与える影響は非常に大きい。例えば、年率7%のリターンが期待できる投資で、コストが0.5%違うだけで、30年後の資産額は約15%異なる結果となる。100万円の投資なら約76万円の差になる計算だ。

コスト差による影響は投資期間が長くなるほど拡大する。年率0.5%のコスト差は、5年なら約2.5%の資産差、10年なら約5%、20年なら約10%、30年なら約15%の資産差になる。複利効果により、長期間になるほどその差は雪だるま式に大きくなるのである。

ファイナンシャルプランナー
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専門家のワンポイントアドバイス
コスト比較の際は年率表示だけでなく、投資予定額と期間で実際のコスト総額を計算してみることをおすすめします。小さな数字の違いが長期では大きな差になることが実感できるでしょう。

リターンを最大化するための視点

コスト最小化は重要だが、それだけが投資判断の基準ではない。流動性、商品の信頼性、追随精度(トラッキングエラーの小ささ)、分配金の有無なども総合的に考慮する必要がある。

特に、海外ETFでは為替リスクや税金面での違いも考慮すべきである。また、少額・定期的な積立投資では、ETFよりも投資信託の方が手数料面で有利になるケースもある。投資スタイルや金額によって最適な選択は異なることを理解すべきである。

コスト削減のための具体的戦略

投資家が実践できるコスト削減の具体的方法を紹介する。自分の投資スタイルに合わせた最適な戦略を選ぶことが重要である。

投資期間とコスト最適化

投資期間によって最適なコスト戦略は異なる。短期(1年以内)の投資では、購入時手数料のないノーロード投資信託やETFを選ぶことが重要である。中期(1~5年)では信託報酬と売買手数料のバランスを考慮し、長期(5年以上)では年間経費率(信託報酬・経費率)を最も重視すべきである。

長期投資家は特に経費率の低いETFを検討すべきである。例えば、国内株式投資では投資信託よりETFの方が経費率は一般的に低く、S&P500などの海外指数への投資では、海外ETFの経費率の低さが特に顕著である。

ファイナンシャルプランナー
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専門家のワンポイントアドバイス
投資信託とETFの選択では、投資金額の大きさも重要な判断基準です。一般的に、少額分散投資なら投資信託、まとまった資金の長期運用ならETFが有利になることが多いです。

一括投資 vs 分割投資のコスト差

資金の投入方法によってもコスト負担が変わる。一括投資と分割投資(積立)では最適な商品が異なることがある。一括投資では購入回数が少ないためETFの売買手数料の影響は小さく、経費率の低さが有利に働く。

一方、毎月の少額積立では、投資信託の方が有利なケースが多い。例えば、月1万円の積立の場合、ETFでは毎回の売買手数料が積み重なり、また1口単位での購入制約もあるため、投資信託の方が効率的である。特に少額からスタートする投資家は、ノーロードかつ信託報酬の低い投資信託を選ぶことでコストを最適化できる。

まとめ:コスト意識で賢明な投資判断を

投資信託とETFにはそれぞれ異なるコスト構造があり、自分の投資スタイルに合った選択が重要である。長期投資ではわずかなコスト差が大きな資産差につながるため、コスト意識を持つことが資産形成の成功につながる。

投資信託は購入のしやすさと少額からの積立に優れ、ETFは経費率の低さと取引の柔軟性に優れている。見えるコストだけでなく、見えないコストも含めて総合的に判断することが賢明である。投資のゴールと期間を明確にし、それに合った低コスト商品を選ぶことで、長期的なリターンを最大化できる。

Q
投資信託とETFでは税金面での違いはありますか?
A

基本的な課税方法は同じですが、海外ETFでは配当に対して現地と日本の両方で課税される可能性があります。一方、外国株式を組み入れた国内投資信託では、この二重課税の調整が運用会社によって行われることが多いです。

Q
少額から積立投資をする場合、投資信託とETFどちらが有利ですか?
A

月1万円程度の少額積立なら、投資信託の方が有利なケースが多いです。ETFでは毎回の売買手数料が発生し、また1口単位での購入制約もあります。ノーロードで信託報酬の低い投資信託が少額積立には適しています。

Q
S&P500に投資する場合、投資信託とETFのコスト差はどのくらいですか?
A

S&P500に連動する国内投資信託の信託報酬は約0.09%程度、米国ETF(VOO)の経費率は約0.03%程度で、年率約0.06%の差があります。100万円を20年投資すると、単純計算で約12,000円の差になります。

執筆者・監修者
十河 賢

◇経歴10年以上のウェブライター&ファイナンシャルプランナー
◇CFP保有者・SEO検定1級・宅建士・住宅ローンアドバイザー

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