2025年税制改正完全ガイド:基礎控除・給与所得控除が10万円アップ

マネーに関する記事のアイキャッチ画像 ライフプラン
この記事は約9分で読めます。

給与所得者や事業主にとって、税金の負担は大きな関心事である。特に、扶養控除や配偶者控除などの各種控除は、家計に直接影響を与える重要な要素となっている。

2025年度の税制改正では、基礎控除や給与所得控除の拡大、19歳以上23歳未満の若年層を対象とした新しい控除の創設など、多岐にわたる変更が予定されている。これらの改正内容を正しく理解し、適切に対応することが必要である。

本記事では、2025年度税制改正の主要なポイントを、所得税・住民税の改正を中心に、図表を用いてわかりやすく解説する。各種控除の拡充や新設される制度について、具体的な金額と適用時期を明確にまとめている。

世帯構成や収入に応じて、どのような控除が適用され、実際の税負担がどう変化するのかを具体的に理解することができる内容となっている。確定申告や年末調整の際の参考として活用できる情報を提供する。

所得税・住民税の改正点

2025年度の税制改正では、所得税と住民税の両面で複数の控除額が引き上げられ、納税者の税負担が軽減される。基礎控除の拡充、給与所得控除の引き上げ、新たな特定親族特別控除の創設など、広範な改正が実施される。

基礎控除と給与所得控除の拡充

2025年分以降の所得税において、基礎控除額が大幅に見直される。年間所得2350万円以下の納税者は、基礎控除額が現行の48万円から58万円に引き上げられる所得額に応じた段階的な控除額の設定も導入され、2350万円超から2500万円以下の範囲では、所得額に応じて48万円から16万円の控除が適用される。

給与所得控除についても、最低保障額の引き上げが行われる。現行の55万円から65万円への引き上げにより、給与所得者の実質的な課税所得が減少する。この改正は、2025年分の所得税から適用され、源泉徴収については2026年1月以降の給与から反映される。

令和7年度 基礎控除
合計所得金額控除額
2350万円以下58万円
2350万円超2400万円以下48万円
2400万円超2450万円以下32万円
2450万円超2500万円以下16万円

特定親族特別控除の新設

19歳以上23歳未満の親族に対する新たな控除制度として、特定親族特別控除が創設される。対象となる親族の合計所得金額が58万円を超え123万円以下である場合、所得額に応じて最大63万円の控除が適用されるこの制度では、対象親族の所得額に応じて段階的に控除額が設定され、所得が増加するにつれて控除額が逓減する仕組みとなっている。

配偶者や青色事業専従者等は対象外となり、控除対象扶養親族に該当しない者が対象となる。所得税では2025年分から、住民税では2026年度分から適用が開始される。

令和7年度 特定親族特別控除
親族等の合計所得金額控除額
58万円超95万円以下45万円
95万円超100万円以下41万円
100万円超105万円以下31万円
105万円超110万円以下21万円
110万円超115万円以下11万円
115万円超120万円以下6万円
120万円超123万円以下3万円

所得要件の見直し

基礎控除額が現行の48万円から58万円に、給与所得控除についても、現行の55万円から65万円に引き上げられる。これにより、給与収入のみの場合の基準額も、現行の103万円以下から123万円以下に拡大される。

配偶者控除

■控除対象配偶者の要件

  1. 民法の規定による配偶者であること(内縁関係は該当しない)
  2. 納税者と生計を一にしていること
  3. 年間の合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合は123万円以下)
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと

※納税者本人の合計所得金額が1000万円を超える場合は、配偶者控除を受けられない

令和7年度 配偶者控除 ※現行制度のまま
納税者本人の合計所得金額一般の控除対象配偶者老人控除対象配偶者
900万円以下38万円48万円
900万円超950万円以下26万円32万円
950万円超1000万円以下13万円16万円

また、年間の合計所得金額が58万円超でも、143万円以下までなら、配偶者特別控除を適用できる。

令和7年度 配偶者特別控除 配偶者の合計所得金額+10万円
配偶者の合計所得金額控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下900万円超
950万円以下
950万円超
1000万円以下
58万円超 105万円以下38万円26万円13万円
105万円超 110万円以下36万円24万円12万円
110万円超 115万円以下31万円21万円11万円
115万円超 120万円以下26万円18万円9万円
120万円超 125万円以下21万円14万円7万円
125万円超 130万円以下16万円11万円6万円
130万円超 135万円以下11万円8万円4万円
135万円超 140万円以下6万円4万円2万円
140万円超 143万円以下3万円2万円1万円

扶養控除

■扶養控除の要件

  1. 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または委託された児童・老人であること
  2. 納税者と生計を一にしていること
  3. 年間の合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合は123万円以下)
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと
令和7年度 扶養控除 ※現行制度のまま
区分控除額
一般の控除対象扶養親族38万円
特定扶養親族63万円
老人扶養親族(同居老親等以外)48万円
老人扶養親族(同居老親等)58万円
※一般の控除対象扶養親族:16歳以上23歳未満、70歳未満
※特定扶養親族:19歳以上23歳未満
※老人扶養親族:70歳以上 同居老親等:納税者またはその配偶者の直系尊属で、納税者やその配偶者と常に同居している70歳以上の親族
※同居老親等以外:上記以外の70歳以上の扶養親族

その他の所得要件についても一斉に見直しが行われる。ひとり親の扶養する子の所得要件も58万円以下に引き上げられ、勤労学生の合計所得金額要件は85万円以下となる。また、家内労働者等の事業所得等における必要経費の最低保障額も65万円に引き上げられる。

これらの所得要件の見直しは、所得税については2025年分から、住民税については2026年度分からの適用となる。

生命保険料控除の拡充

23歳未満の扶養親族を有する場合、2026年分の一般生命保険料控除が拡充される。新生命保険料に関する控除額が引き上げられ、年間の保険料に応じて段階的に控除額が設定される。

■新生命保険料の控除額(23歳未満扶養親族がいる場合)

年間の新生命保険料控除額
30,000円以下新生命保険料の全額
30,000円超60,000円以下新生命保険料×1/2+15,000円
60,000円超120,000円以下新生命保険料×1/4+30,000円
120,000円超一律60,000円

また、旧生命保険料と新生命保険料の両方を支払っている場合、一般生命保険料控除の適用限度額が現行の4万円から6万円に引き上げられる。ただし、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の合計適用限度額は、従来通り12万円となる。

住宅ローン控除の拡充

特例対象個人が2025年に認定住宅等を取得し入居した場合、借入限度額が引き上げられる。対象となる住宅の種類によって、以下の借入限度額が設定される。

住宅の区分借入限度額
認定住宅5000万円
ZEH水準省エネ住宅4500万円
省エネ基準適合住宅4000万円

■特例対象個人の要件

  1. 40歳未満で配偶者がいる者
  2. 40歳以上で40歳未満の配偶者がいる者
  3. 19歳未満の扶養親族がいる者

対象となる住宅には、新築住宅のほか、建築後使用されていない住宅の取得や、宅建業者により一定の増改築等が行われた既存住宅(買取再販住宅)も含まれる。なお、2025年12月31日以前に建築確認を受けた住宅については、床面積要件が緩和される。

確定拠出年金制度の拡充

2025年度の制度改正により、確定拠出年金の拠出限度額が引き上げられ、加入対象者も拡大される。主な改正点は以下の通りである。

■企業型確定拠出年金の改正

  1. マッチング拠出の制限撤廃
    • 従業員の掛金額が事業主掛金を超えられない制限を廃止
  2. 拠出限度額の引き上げ
    • 他の企業年金なし:月額6.2万円(現行5.5万円)
    • 確定給付企業年金加入者:月額6.2万円から確定給付企業年金の掛金相当額を控除

■個人型確定拠出年金(iDeCo)の改正

  1. 加入対象の拡大
    • 60歳以上70歳未満で一定の要件を満たす者も加入可能に(拠出限度額:月額6.2万円)
  2. 拠出限度額の改定
    • 第一号被保険者:月額7.5万円(現行6.8万円)
    • 企業年金加入者:月額6.2万円から他制度の掛金額を控除(現行2.0万円)
    • 企業年金未加入者:月額6.2万円(現行2.3万円)

■国民年金基金

  • 掛金額の上限を月額7.5万円に引き上げ(現行6.8万円)

退職所得控除の見直し

退職手当等の受給時における退職所得控除の計算方法が見直される。2026年1月1日以降、過去9年以内に確定拠出年金の老齢一時金を受給している場合、勤続期間等の重複排除の特例の対象となる。また、老齢一時金に関する申告書の保存期間が7年から10年に延長される。

国民健康保険税の改正

国民健康保険税の課税限度額が引き上げられ、同時に軽減判定所得の基準も見直される。

■課税限度額の引き上げ

区分改正後現行
基礎課税額66万円65万円
後期高齢者支援金等課税額26万円24万円

■軽減判定所得の見直し

  • 5割軽減:被保険者数×30.5万円(現行29.5万円)
  • 2割軽減:被保険者数×56万円(現行54.5万円)

期限延長される税制措置

税制改正では、複数の相続税・不動産取引関連の特例措置について適用期限が2年延長される。

結婚・子育て資金の一括贈与に関する贈与税の非課税措置は、直系尊属からの贈与を対象とする制度で、2年間の期限延長が決定された。これにより、若い世代の結婚や子育てを支援する税制上の優遇措置が継続される。

相続に伴う所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置も2年間延長される。この措置により、相続時の登記費用の負担軽減が継続される。

また、既存住宅の流通促進を目的とした不動産取得税の減額措置も2年間延長される。これは、宅建業者が既存住宅を取得し、増改築等を実施した上で、2年以内に耐震基準を満たす物件として個人に販売し、買主が居住用として使用する場合に適用される措置である。この延長により、質の高い既存住宅の流通促進が継続して図られる。

これらの期限延長措置は、相続・贈与に関する負担軽減や、良質な住宅の流通促進という政策目的を維持するものである。

まとめ:2025年度税制改正で拡充される控除制度のポイント

2025年度の税制改正では、基礎控除、給与所得控除、特定親族特別控除など、多くの控除制度が拡充される。基礎控除は年収2,350万円以下の納税者に対して58万円まで引き上げられ、給与所得控除の最低保障額も65万円に拡大される。

また、19歳以上23歳未満の扶養親族を対象とした特定親族特別控除が新設され、所得に応じて最大63万円の控除が可能となる。配偶者控除や扶養控除の所得要件も58万円以下に引き上げられ、より多くの世帯が控除の恩恵を受けられる制度となっている。

確定拠出年金制度においても、拠出限度額の引き上げや加入対象者の拡大が行われ、将来の資産形成を支援する制度が強化される。国民健康保険税では課税限度額が引き上げられる一方、軽減判定所得の基準も見直され、低所得者への配慮も行われている。

これらの改正は、所得税については2025年分から、住民税については2026年度分から段階的に適用される。給与所得者は、源泉徴収や年末調整における実務的な対応も必要となる。世帯構成や収入状況に応じて、適切な控除の適用を検討することが重要である。

執筆者・監修者
十河 賢

◇経歴10年以上のウェブライター&ファイナンシャルプランナー
◇CFP保有者・SEO検定1級・宅建士・住宅ローンアドバイザー

十河 賢をフォローする

注意事項

当サイトでは、金融商品に関する情報を提供していますが、以下の点にご注意ください。

  • 掲載情報の正確性には十分配慮しておりますが、その完全性、正確性、適時性、および特定目的への適合性を保証するものではありません。
  • 当サイトの情報は、金融商品の購入や投資の推奨を目的としたものではありません。
  • 実際に金融商品をご検討・ご利用の際は、各金融機関が提供する商品説明や契約締結前交付書面等を必ずご確認ください。
  • 金融商品には、元本割れなどのリスクが伴う場合があります。ご自身の判断と責任においてお取引ください。
  • 当サイトの情報に基づいて行われた判断の結果生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。

詳細な免責事項については、免責事項ページをご覧ください。

ライフプラン
十河 賢をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました