退職・老後関連の税制優遇措置 – 退職所得の優遇措置、公的年金等の課税方式など

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この記事を読んで得られるメリット
  • 退職所得や公的年金等に関する税制優遇措置を理解し、節税に活かせる
  • 退職金の受取方法や年金の受給方法を税制面から適切に選択できる
  • 老後の生活設計において、税金の影響を考慮した準備ができる

退職所得の税制優遇措置

退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当等の所得のことである。退職所得は、所得税法上、他の所得と分離して計算され、一定の控除が適用されるなど、税制上の優遇措置が設けられている。ここでは、退職所得の計算方法や控除額、税率、受取方法における注意点などについて解説する。

退職所得の計算方法

退職所得の金額は、次の計算式により算出される。

(収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2 = 退職所得の金額

ただし、特定役員退職手当等や短期退職手当等に該当する場合は、計算方法が異なる。

〇 退職所得控除額

退職所得控除額は、勤続年数に応じて定められている。勤続年数20年以下の場合は、40万円に勤続年数を乗じた金額(最低80万円)が控除額となる。勤続年数が20年を超える場合は、800万円に、20年を超える年数に70万円を乗じた金額を加えた額が控除額となる。

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退職所得控除額の計算において、勤続年数の端数は切り上げて計算します。例えば、勤続年数が10年2か月の場合、控除額は40万円×11年=440万円となります。

〇 退職所得の税率

退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算する。退職所得の受給に関する申告書を提出している場合、退職所得の金額に応じた所得税等が源泉徴収され、原則として確定申告は不要である。申告書を提出していない場合は、支払金額の20.42%の所得税等が源泉徴収され、確定申告により精算する必要がある。

退職金の受取方法と税制上の注意点

退職金の受取方法には、一時払いと分割払いがある。一時払いの場合、多額の退職金を一度に受け取るため、税負担が大きくなる可能性がある。分割払いにすることで、各年の税負担を軽減できるメリットがある。ただし、分割払いの場合、退職所得控除額が初回の支払いにのみ適用されるため、注意が必要である。

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退職金の受取方法は、一時払いと分割払いのメリット・デメリットを検討し、自身の状況に合った方法を選択することが重要です。税負担だけでなく、資金の必要性やライフプランも考慮して判断しましょう。

公的年金等を受け取ったときの税金

公的年金等は、所得税法上、雑所得として取り扱われ、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算する。主な公的年金等には、国民年金法や厚生年金保険法等に基づく年金、過去の勤務に対する企業年金、確定給付企業年金などがある。

公的年金等の種類と課税方式

公的年金等は、その種類によって課税方式が異なる。国民年金法や厚生年金保険法等の社会保険制度に基づく年金は、原則として収入金額から公的年金等控除額を差し引いた額に対して課税される。一方、企業年金や確定給付企業年金については、一定の要件を満たす場合、公的年金等控除の適用を受けることができる。

公的年金等控除額

公的年金等控除額は、年金の収入金額と年齢、そして年金以外の所得金額に応じて定められている。2020年分以後の公的年金等控除額は、以下の3つの表のように、年金以外の所得金額に応じて3段階に分かれている。

<表> 所得が年金のみまたは年金以外の所得が1,000万円以下のケース(2020年分以後)

受給者の年齢年金額(公的年金等の受給額)公的年金等控除額
65歳以上330万円未満110万円
330万円以上410万円未満年金額×25%+27万5,000円
410万円以上770万円未満年金額×15%+68万5,000円
770万円以上1,000万円未満年金額×5%+145万5,000円
1,000万円以上195万5,000円
65歳未満130万円未満60万円
130万円以上410万円未満年金額×25%+27万5,000円
410万円以上770万円未満年金額×15%+68万5,000円
770万円以上1,000万円未満年金額×5%+145万5,000円
1,000万円以上195万5,000円
※出典:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係

<表> 年金以外の所得が年間1,000万円超2,000万円以下のケース(2020年分以後)

受給者の年齢年金額(公的年金等の受給額)公的年金等控除額
65歳以上330万円未満100万円
330万円以上410万円未満年金額×25%+17万5,000円
410万円以上770万円未満年金額×15%+58万5,000円
770万円以上1,000万円未満年金額×5%+135万5,000円
1,000万円以上185万5,000円
65歳未満130万円未満50万円
130万円以上410万円未満年金額×25%+17万5,000円
410万円以上770万円未満年金額×15%+58万5,000円
770万円以上1,000万円未満年金額×5%+135万5,000円
1,000万円以上185万5,000円
※出典:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係

<表> 年金以外の所得が年間2,000万円超のケース(2020年分以後)

受給者の年齢年金額(公的年金等の受給額)公的年金等控除額
65歳以上330万円未満90万円
330万円以上410万円未満年金額×25%+7万5,000円
410万円以上770万円未満年金額×15%+48万5,000円
770万円以上1,000万円未満年金額×5%+125万5,000円
1,000万円以上175万5,000円
65歳未満130万円未満40万円
130万円以上410万円未満年金額×25%+7万5,000円
410万円以上770万円未満年金額×15%+48万5,000円
770万円以上1,000万円未満年金額×5%+125万5,000円
1,000万円以上175万5,000円
※出典:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係
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2020年分以後の公的年金等控除額は、年金以外の所得金額に応じて3段階に分かれています。年金以外の所得が多いほど、控除額が減少する仕組みになっています。これは、高所得者の年金受給者に対する控除を抑制し、税負担の公平性を図るための措置と言えます。

なお、2005年から2019年までは、年金以外の所得金額に関わらず、年齢と年金額のみで控除額が決定されていました。

公的年金等の税率

公的年金等に係る雑所得は、原則として5.105%の税率で源泉徴収される。ただし、年金の支払金額が一定額以下の場合は、源泉徴収が行われない。源泉徴収された税額は、確定申告により精算される。

公的年金等の受給方法と税制上の注意点

公的年金等の受給方法には、年金として受け取る方法と一時金として受け取る方法がある。年金として受け取る場合は、上述の公的年金等控除や源泉徴収の規定が適用される。一方、一時金として受け取る場合は、退職所得として取り扱われ、退職所得控除等の適用を受けることができる。

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公的年金等の受給方法は、税制上の取扱いが異なるため、注意が必要です。年金と一時金のメリット・デメリットを十分に検討し、自身の状況に合った選択をすることが重要です。

まとめ

公的年金等は、雑所得として課税され、公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算する。2020年分以後の控除額は、年金の収入金額と年齢、そして年金以外の所得金額に応じて3段階に設定されている。公的年金等は原則として5.105%の税率で源泉徴収されるが、確定申告により精算される。受給方法には年金と一時金があり、税制上の取扱いが異なるため、注意が必要である。

Q
公的年金等控除の適用を受けるにはどのような手続きが必要ですか?
A

公的年金等控除は、年金の支払者が自動的に控除額を計算し、源泉徴収税率を適用するため、特別な手続きは必要ありません。ただし、確定申告を行う際は、公的年金等の収入金額と控除額を正しく申告する必要があります。

Q
遺族年金や障害年金も公的年金等控除の対象になりますか?
A

はい、遺族年金や障害年金も公的年金等控除の対象となります。ただし、非課税となる年金(例:遺族年金のうち非課税部分)については、控除の対象外となります。年金の種類によって課税関係が異なる場合があるため、詳細は税務署等にお問い合わせください。

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