住宅取得関連の税制優遇措置 – 住宅ローン減税、贈与税非課税措置など

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  • 執筆者・監修者:十河 賢
  • 経歴10年以上のウェブライター&ファイナンシャルプランナー
  • CFP保有者・証券外務員二種
  • 宅建士(未登録)・住宅ローンアドバイザー
  • SEO検定1級・エクセルVBAエキスパート

住宅取得は人生の大きなイベントであり、多額の費用がかかるものである。しかし、住宅取得に関連する税制優遇措置を上手に活用することで、住宅取得コストを大幅に削減することが可能である。本記事では、住宅ローン減税や贈与税の非課税措置など、住宅取得に関連する主要な税制優遇措置について詳しく解説する。各優遇措置の適用条件や手続きを理解することで、自分に合った優遇措置を選択し、住宅取得コストの削減に役立てることができるはずである。

住宅ローン減税

住宅ローン減税は、自分が住むために住宅を購入・リフォームする際に利用できる税制優遇措置である。一定の条件を満たせば、住宅ローンの残高に応じて、一定期間にわたって所得税と住民税から控除を受けられる。

この制度を利用することで、住宅取得にかかる費用負担を大幅に軽減することができる。

住宅ローン減税とは

住宅ローン減税は、自分で住む家を購入・リフォームするために住宅ローンを借りた人が利用できる制度である。正式には「住宅借入金等特別控除」と呼ばれる。

住宅ローン減税を利用すると、以下の期間にわたって年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税から直接差し引くことができる。

  • 新築住宅の場合:13年間
  • 中古住宅の場合:10年間

また、所得税から引ききれない場合は住民税からも差し引くことができる(前年度課税所得×5%、最高9万7,500円まで)。

住宅ローン減税の適用条件

住宅ローン減税を利用するための主な条件は以下の通りである。

  • 自ら居住するための住宅を購入したこと
  • 住宅の床面積が50㎡以上あること(2023年までは40㎡以上の特例あり)
  • 住宅ローンを借りた人の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 住宅ローンの借入期間が10年以上あること
  • 引き渡しまたは工事完了から6カ月以内に入居したこと

これらの条件を満たせば、住宅ローン減税の適用を受けることができる。特に、住宅の床面積については、2023年までは40㎡以上の特例が認められていたが、2024年以降も引き続き緩和されている。ただし、床面積が50㎡未満の住宅の場合、住宅ローンを借りる人の合計所得金額は1,000万円以下である必要がある。

住宅ローン減税の適用を受けるためには、これらの条件を満たすだけでなく、確定申告や年末調整といった手続きも必要となる。次項では、住宅ローン減税の計算方法について詳しく解説する。

住宅ローン減税の計算方法

2022年以降の住宅ローン減税では、購入する住居の種類に合わせて、住宅ローン減税の対象となる借入限度額が4段階に分かれている。より性能の高い住宅を購入するほど、たくさん控除が受けられるようになっている。

住宅の種類と借入限度額の上限は、次の表の通りである。

<表> 住宅の種類と借入限度額の上限

住宅の種類借入限度額控除率控除期間
新築住宅
– 長期優良住宅・低炭素住宅5,000万円(子育て世帯は4,500万円)0.7%13年
– ZEH水準省エネ住宅4,500万円(子育て世帯は3,500万円)0.7%13年
– 省エネ基準適合住宅4,000万円(子育て世帯は3,000万円)0.7%13年
– その他の住宅3,000万円(一定の条件下で0円)0.7%13年
既存住宅
– 長期優良住宅・低炭素住宅など3,000万円0.7%10年
– その他の住宅2,000万円0.7%10年
※子育て世帯:18歳以下の子のいる世帯、夫婦どちらかが39歳以下の世帯
※一定の条件:2023年中に建築確認を受けている場合・2024年6月30日までに建築された場合は2,000万円・控除期間10年
※出典:国税庁「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)
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専門家のワンポイントアドバイス
住宅ローン減税の適用を受けるためには、条件を満たすだけでなく、確定申告や年末調整が必要です。1年目は確定申告が必要ですが、2年目以降は勤務先の年末調整で手続きが可能です。必要書類を揃えて、手続きを行いましょう。

住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置

親族からの資金援助を受けて住宅を取得する場合、贈与税が課税されるのが原則である。しかし、住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置を利用すれば、一定の条件の下で贈与税が非課税となる。この制度を活用することで、住宅取得に必要な資金を親族から援助してもらいつつ、贈与税の負担を軽減することができる。

贈与税の非課税措置とは

住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置とは、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住用住宅の新築、取得または増改築等の対価に充てるための金銭(住宅取得等資金)を取得した場合、一定の要件を満たすと、非課税限度額までの金額について贈与税が非課税となる制度である。

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専門家のワンポイントアドバイス
住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置は、住宅取得に必要な資金を親族から贈与により取得した場合に、贈与税の負担を軽減できる制度です。住宅取得を検討している方は、この制度の適用条件や手続きを確認し、有効に活用することをおすすめします。

贈与税の非課税措置の適用条件

住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置を適用するには、以下の条件を満たす必要がある。

受贈者の要件:

  • 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること
  • 贈与を受けた年の1月1日において、18歳以上であること
  • 贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下(住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)であること
  • 平成21年分から令和3年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと(一定の場合を除く)
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること
  • 贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること(一定の場合を除く)
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住することまたは同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること

住宅用の家屋の要件:

  • 新築・取得の場合:床面積が40㎡以上240㎡以下で、床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること
  • 増改築等の場合:増改築等後の床面積が40㎡以上240㎡以下で、床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること、増改築等の工事が一定の要件を満たすこと、工事費用が100万円以上であること

非課税限度額:

  • 省エネ等住宅の場合:1,000万円
  • それ以外の住宅の場合:500万円

※出典:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

これらの条件を満たせば、受贈者ごとに非課税限度額までの住宅取得等資金の贈与について、贈与税が非課税となる。適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、所定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要がある。

その他の住宅関連税制優遇措置

住宅取得に関連する税制優遇措置は、不動産取得税、固定資産税・都市計画税、登録免許税だけではない。所得税や贈与税においても、住宅の取得や改修、住宅ローンの借入れ等に関連した様々な特例措置が設けられている。これらの優遇措置を有効に活用することで、住宅取得に伴う税負担をさらに軽減することができる。

不動産取得税の優遇措置

不動産取得税は、土地や家屋を取得した際に課税される地方税である。有償・無償の別、登記の有無にかかわらず、不動産を取得した者に対して課税される。

不動産取得税の税額は、取得した不動産の価格(課税標準額)に税率を乗じて計算する。税率は、土地が3%、住宅が3%(本則税率は4%)、非住宅が4%となっている。ただし、一定の免税点が設けられており、課税標準額がその金額未満の場合は課税されない。

不動産取得税には、一定の要件を満たす場合に税額が軽減される優遇措置がある。主な優遇措置は以下の通りである。

  1. 宅地評価土地の取得に係る課税標準の特例 令和9年3月31日までに宅地等(宅地及び宅地評価された土地)を取得した場合、当該土地の課税標準額は価格の1/2となる。
  2. 新築住宅に係る税率の特例 新築住宅を取得した場合、令和9年3月31日までは税率が3/100に軽減される(本則税率は4/100)。
  3. 住宅用土地に係る税額の減額 一定の要件を満たす住宅用土地を取得した場合、税額が最大1/2に減額される。
  4. 低未利用土地等を譲渡した場合の特例 低未利用土地等(適正な利用が図られるべき土地等)を譲渡し、新たに土地や建物を取得した場合、取得価格から譲渡価格相当額を控除した金額を課税標準とすることができる。

※出典:東京都主税局「不動産取得税

これらの優遇措置を適用するためには、一定の要件を満たす必要があるため、詳細については不動産取得税の申告時に確認することが重要である。適用要件を満たす場合は、これらの優遇措置を活用することで、不動産取得に係る税負担を軽減することができる。

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専門家のワンポイントアドバイス
不動産取得税の優遇措置は、住宅取得や土地の有効活用を促進する目的で設けられています。特に、宅地評価土地の取得に係る課税標準の特例や新築住宅に係る税率の特例は、令和9年3月31日までの時限措置となっているため、対象期間内に不動産を取得することで、税負担を大きく軽減できます。不動産の取得を検討する際は、これらの優遇措置の適用条件を確認し、上手に活用することをおすすめします。

固定資産税・都市計画税の優遇措置

固定資産税は、土地、家屋、償却資産を所有している方に課税される地方税である。23区内の固定資産については、東京都が都税として課税している。これに加えて、都市計画事業などの費用に充てるために、都市計画税が課税される。

固定資産税

個人が居住用住宅を取得した場合、以下のような固定資産税の優遇措置がある。

  1. 住宅用地に対する課税標準の特例措置 住宅用地(専用住宅の敷地の用に供されている土地で、その面積が住宅の床面積の10倍までの部分)については、以下のように課税標準額が軽減される。
  • 小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡までの部分):価格×1/6
  • 一般住宅用地(小規模住宅用地以外の住宅用地):価格×1/3
  1. 新築住宅に対する減額措置 一定の床面積要件を満たす新築住宅については、居住部分で1戸あたり120㎡相当分までを限度として、新たに課税される年度から一定期間、固定資産税額の2分の1が減額される。
  • 一般の住宅:3年度分(3階建以上の耐火・準耐火建築物は5年度分)
  • 認定長期優良住宅:5年度分(3階建以上の耐火・準耐火建築物は7年度分)
  1. 税額が前年度の1.1倍を超える場合の減額措置(条例減額) 令和8年度までの措置として、固定資産税額が前年度の税額の1.1倍を超える場合、当該超える部分の税額が減額される。

※出典:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)

これらの優遇措置は、居住用住宅の取得を促進し、住環境の整備や良質な住宅ストックの形成を図ることを目的としている。住宅用地に対する課税標準の特例措置や新築住宅に対する減額措置は、住宅取得者の税負担を軽減するとともに、良質な住宅の建設を奨励するものである。また、税額が前年度の1.1倍を超える場合の減額措置は、急激な税負担の増加を緩和し、納税者の負担軽減を図るための措置である。

都市計画税

都市計画税についても、固定資産税とほぼ同様の優遇措置が適用される。

  1. 住宅用地に対する課税標準の特例措置
  • 小規模住宅用地:価格×1/3
  • 一般住宅用地:価格×2/3
  1. 小規模住宅用地に対する減額措置(23区内) 小規模住宅用地については、都市計画税額の2分の1が軽減される。
  2. 税額が前年度の1.1倍を超える場合の減額措置(条例減額) 固定資産税と同様に、令和8年度までの措置として、都市計画税額が前年度の税額の1.1倍を超える場合、当該超える部分の税額が減額される。

※出典:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)

これらの優遇措置を適用するためには、一定の要件を満たす必要がある。特に、住宅用地に対する課税標準の特例措置を受けるためには、新築や増改築、用途変更等により家屋の現況に変更があった場合、申告が必要となる。

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専門家のワンポイントアドバイス
住宅を新築または取得する際は、固定資産税だけでなく都市計画税の優遇措置も合わせて活用することで、税負担をより軽減することができます。特に、小規模住宅用地に対する都市計画税の減額措置は、23区内に限られますが、大きな節税効果が期待できます。優遇措置の適用要件や申告方法について、事前に確認しておくことをおすすめします。

登録免許税の優遇措置

登録免許税には、住宅取得に関連して以下のような優遇措置がある。

  1. 土地の売買による所有権移転登記の税率の軽減 個人が令和8年3月31日までに土地の売買による所有権移転登記を受ける場合、本則税率(1,000分の20)が1,000分の15に軽減される。
  2. 住宅用家屋の所有権保存登記等の税率の軽減 個人が、令和6年3月31日までの間に以下の登記を受ける場合、税率が軽減される。
  • 新築または未使用の住宅用家屋を取得し、自己の居住用に供した場合の保存登記:1,000分の1.5
  • 住宅用家屋を売買または競売により取得し、自己の居住用に供した場合の移転登記:1,000分の3
  • 認定長期優良住宅または認定低炭素住宅を新築または未使用のものを取得し、自己の居住用に供した場合の保存登記または移転登記:1,000分の1
  • 宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた住宅用家屋を取得し、自己の居住用に供した場合の移転登記:1,000分の1
  • 住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記:1,000分の1

これらの軽減税率の適用を受けるには、床面積が50㎡以上であることや、新築または取得後1年以内の登記であること等の一定の要件を満たす必要がある。

  1. 相続による土地の所有権移転登記等の免税 令和7年3月31日までの間、以下の場合には登録免許税が免除される。
  • 相続により土地の所有権を取得した個人が、相続開始前に死亡した場合に、その個人を登記名義人とするために受ける登記
  • 個人が、土地の所有権の保存登記または相続による所有権の移転登記を受ける場合において、課税標準となる不動産の価額が100万円以下であるとき

この免税措置は、相続により土地の所有権を取得した場合の登記手続きに係る負担を軽減するものである。特に、課税標準となる不動産の価額が100万円以下の場合は、登録免許税が全額免除されるため、小規模な土地の相続登記においては大きな節税効果が期待できる。

ただし、この免税措置の適用を受けるためには、令和7年3月31日までに登記を受ける必要がある。また、相続により土地の所有権を取得した個人が相続開始前に死亡した場合の登記については、その個人を登記名義人とするための登記に限られる点にも注意が必要である。

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専門家のワンポイントアドバイス
登録免許税の優遇措置は、住宅の取得や良質な住宅ストックの形成を促進する観点から設けられています。特に、住宅用家屋の保存登記や移転登記に係る税率の軽減措置は大幅な負担軽減となりますので、要件を満たす場合は適用を受けることをおすすめします。ただし、軽減税率の適用には一定の要件がありますので、事前に確認しておくことが重要です。

まとめ

住宅取得に関連する税制優遇措置には、不動産取得税、固定資産税・都市計画税、登録免許税の各税目において、様々な軽減措置が設けられている。これらの優遇措置は、住宅取得者の負担軽減や良質な住宅ストックの形成を目的としたものである。

特に、住宅用家屋の所有権移転登記や住宅用土地の取得に係る不動産取得税の軽減措置、住宅用地に対する固定資産税・都市計画税の課税標準の特例措置、住宅用家屋の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置は、大幅な税負担の軽減につながるものである。

ただし、これらの優遇措置の適用を受けるためには、一定の要件を満たす必要があるため、事前に要件を確認し、必要な手続きを行うことが重要である。

Q
住宅用家屋の所有権移転登記に係る登録免許税の軽減措置を受けるための主な要件は何ですか?
A

個人が、令和6年3月31日までの間に、住宅用家屋を売買または競売により取得し、自己の居住の用に供した場合の移転登記について、床面積が50㎡以上であること、取得後1年以内の登記であること等の要件を満たす必要があります。

Q
固定資産税の住宅用地に対する課税標準の特例措置を受けるために必要な手続きは何ですか?
A

住宅用地に対する課税標準の特例措置を受けるためには、家屋の新築・増築、用途変更等により住宅用地の現況に変更があった場合、「固定資産税の住宅用地等申告書」を提出する必要があります。申告期限は、申告が必要となる事由が生じた年の翌年の1月31日までです。

Q
住宅取得に関連する税制優遇措置の適用期限はいつまでですか?
A

各優遇措置の適用期限は措置によって異なります。例えば、不動産取得税の軽減措置は令和6年3月31日まで、登録免許税の軽減措置は令和6年3月31日または令和8年3月31日まで、固定資産税の条例減額は令和8年度までとなっています。適用を受ける際は、それぞれの期限にご注意ください。

執筆者・監修者
十河 賢

◇経歴10年以上のウェブライター&ファイナンシャルプランナー
◇CFP保有者・SEO検定1級・宅建士・住宅ローンアドバイザー

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