- この記事が役に立つ人
- 投資信託ガイド
- この記事を書いた人
投資信託は、個人投資家の資産運用において人気の高い選択肢である。しかし、ひとつの投資信託に資金を集中させることは、予期せぬ値下がりによって大きな損失を被るリスクがある。
このリスクを軽減する有効な方法が分散投資である。投資信託を活用した分散投資は、株式や債券、不動産など、異なる値動きの資産に広く投資することで、リスクを抑えながら安定的なリターンを目指すことができる。
この記事では、投資信託を活用した分散投資の具体的な方法について、リスク許容度に応じた選び方から実践的な資産配分の例まで、わかりやすく解説する。これから投資信託による資産運用を始める方はもちろん、すでに運用を始めている方にとっても、より効果的な分散投資の実現に役立つ情報である。
分散投資とは?
分散投資とは、投資資金を複数の異なる資産に分散して配分することである。たとえば、株式や債券、不動産など、値動きの異なる資産に投資することで、ある資産の価格が下がっても、他の資産で補うことができる。分散投資の基本的な考えは、「卵は一つのかごに盛るな」という格言に表現されている。
投資信託は、分散投資を実現する有効な手段である。一つの投資信託でも、投資対象を複数の銘柄に分散することで、個別銘柄のリスクを軽減することができる。たとえば、株式投資信託であれば数十から数百の企業に分散投資を行うことで、特定の企業の業績悪化による影響を抑えることができる。
投資信託による分散投資は、少額から始めることができる。個人で直接、株式や債券、不動産などの資産に分散投資を行うには、多額の資金が必要となる。しかし、投資信託を活用すれば、専門家による運用のもと、効率的な分散投資を実現することが可能である。
- 参考:根金積立金管理運用独立行政法人「分散投資の意義③卵を一つのかごに盛るな」
分散投資のメリットと注意点
分散投資には様々なメリットがある一方で、注意すべき点もある。それぞれの特徴を理解し、効果的な投資を行うことが重要である。
分散投資のメリット
分散投資の最大のメリットは、投資リスクを軽減できることである。異なる値動きをする複数の資産に分散して投資することで、ある資産の値下がりを他の資産の値上がりで補うことができる。
たとえば、株式市場が下落しても、債券やREITが上昇することで、ポートフォリオ全体の価値の下落を抑えることができる。
投資信託を活用すれば、専門家による運用のもと、効率的な分散投資を少額から始めることができる。定期的な運用報告書により、分散状況を確認することも容易である。
分散投資の注意点
分散投資を行う際には、いくつかの注意点がある。過度な分散投資は、かえってパフォーマンスを低下させる可能性がある。
たとえば、似たような投資信託を複数保有することで、実質的な分散効果が得られないばかりか、運用コストが増加してしまうことがある。また、投資信託を活用する場合、商品選択が重要となる。
投資対象や運用方針が異なる投資信託を組み合わせることで、はじめて効果的な分散投資が実現できる。投資信託の説明書をよく確認し、投資対象や運用方針を理解した上で、商品を選択することが大切である。
投資信託の種類とリスク
投資信託には、投資対象や運用方針によってさまざまな種類がある。それぞれに特徴とリスクの違いがあり、分散投資を行う際の選択肢となる。
専門家のワンポイントアドバイス:
分散投資は、リスク管理において非常に重要な概念です。一つの金融商品に集中して投資するのではなく、様々な金融商品に投資することで、リスクを分散させることができます。
投資信託の種類とリスクの違い
投資信託には、株式投資信託や債券投資信託、バランス型投資信託など、さまざまな種類がある。それぞれの特徴とリスクは、次の表のとおりである。
種類 | 詳細 | リスク |
---|---|---|
株式投資信託 | 国内株式投資信託 海外株式投資信託 先進国株式投資信託 新興国株式投資信託 全世界株式投資信託 アクティブ運用型 パッシブ運用型 | 株式市場の変動によって、価格変動リスクが比較的高い |
債券投資信託 | 国内債券投資信託 海外債券投資信託 先進国債券投資信託 新興国債券投資信託 社債投資信託 ハイイールド債券投資信託 | 金利変動や発行体の信用リスクの影響を受ける。株式投資信託よりもリスクは、一般的に低い |
バランス型投資信託 | 安定型 安定成長型 成長型 | 株式と債券の配分割合によって、リスクとリターンのバランスを調整できる |
不動産投資信託(REIT) | オフィス REIT 住宅 REIT 商業施設 REIT ホテル REIT | 不動産市場の変動や物件の空室率などの影響を受ける |
コモディティ投資信託 | 金投資信託 原油投資信託 農産物投資信託 | コモディティ価格の変動の影響を受ける |
投資家のリスクに対する考え方によって、選択すべき投資信託は異なる。リスクに対する考え方と投資対象の例は、次の表のとおりである。
リスクに対する考え方 | 投資対象の例 |
---|---|
とにかくリスクを回避したい | – 債券投資信託の割合を大きく – 国内債券投資信託を中心に – 安定型のバランス型投資信託 |
ある程度のリスクは許容できる | – 株式投資信託と債券投資信託のバランスを取る – 安定成長型のバランス型投資信託 – REITを一部組み入れる |
高いリターンを求める | – 株式投資信託の割合を大きく – 新興国株式投資信託や新興国債券投資信託を組み入れる – 成長型のバランス型投資信託 – コモディティ投資信託を一部組み入れる |
専門家のワンポイントアドバイス:
自分のリスク許容度を正しく理解することが、投資信託選びの第一歩です。リスク許容度は、投資経験や年齢、収入、資産状況などによって異なります。自分のリスク許容度を把握した上で、それに合った投資信託を選ぶことが重要です。
投資信託を選ぶ際は、自分のリスク許容度を理解し、それに合った投資信託を選択することが重要である。リスク許容度は、投資経験や年齢、収入、資産状況などによって異なるため、慎重に判断する必要がある。これらの理解を深めることで、より効果的な分散投資が可能となる。
- 参考:肥後銀行「リスクをしっかり理解しよう」
アセットアロケーションの考え方
アセットアロケーションは、投資資金をさまざまな資産クラスに配分する戦略である。株式、債券、不動産、コモディティなどの資産クラスに投資資金を配分することで、リスクを分散させることができる。投資信託の選択においても、アセットアロケーションの考え方が重要である。自分のリスク許容度や投資目的に合わせて、適切な資産クラスの投資信託を選択することが必要である。
アセットアロケーションと投資信託
次は、投資信託を含む代表的な資産と詳細、リスクをまとめた表である。
資産 | 詳細 | リスク |
---|---|---|
株式 | 国内株式 海外株式 先進国株式 新興国株式 | 株式市場の変動によって、価格変動リスクが比較的高い |
債券 | 国内債券 国債 地方債 社債 海外債券 先進国債券 新興国債券 ハイイールド債券 | 金利変動や発行体の信用リスクの影響を受ける 株式よりもリスクは、一般的に低い |
不動産 | 直接所有 不動産投資信託(REIT) | 不動産市場の変動や物件の空室率などの影響を受ける |
現金・預金 | 普通預金 定期預金 | リスクは低いが、インフレリスクがある |
コモディティ | 金 原油 農産物 | コモディティ価格の変動の影響を受ける |
投資信託 | 株式投資信託 債券投資信託 バランス型投資信託 不動産投資信託(REIT) コモディティ投資信託 | 投資対象や運用方針によってリスクは異なる |
上記の表は、投資信託を含む代表的な資産の種類とそれぞれのリスクについてまとめたものである。
株式は、企業の成長性を直接的に反映するため、高いリターンが期待できる一方、価格変動リスクが比較的高くなっている。債券は、利子と元本の支払いが約束されているため、株式よりもリスクは低いが、金利変動や発行体の信用リスクの影響を受ける。
不動産は、直接所有する場合と不動産投資信託(REIT)を通じて投資する場合があり、不動産市場の変動や物件の空室率などのリスクがある。現金・預金は、リスクが低い一方、インフレによる実質的な価値の減少というリスクがある。
コモディティは、金属や農産物などの実物資産への投資であり、それぞれの商品の価格変動リスクがある。
投資信託は、これらの資産に間接的に投資することができる商品であり、投資対象や運用方針によってリスクとリターンの特性が異なる。
投資家は、これらの資産のリスク特性を理解した上で、自分のリスク許容度や投資目的に合った資産配分を行うことが重要である。また、各資産のリスクを分散するために、アセットアロケーションの考え方を適用することが有効だ。
次は、リスクに対する考え方ごとの投資対象の例である。
リスクに対する考え方 | 投資対象の例 |
---|---|
とにかくリスクを回避したい | 現金・預金の割合を大きく 国内債券(特に国債)の割合を大きく 債券投資信託の中でも、安全性の高いものを選ぶ |
ある程度のリスクは許容できる | 株式と債券のバランスを取る 国内株式と国内債券を中心に バランス型投資信託を活用 REITを一部組み入れる |
高いリターンを求める | 株式の割合を大きく 海外株式(特に新興国株式)の割合を大きく ハイイールド債券を一部組み入れる コモディティを一部組み入れる 株式投資信託の中でも、積極的な運用方針のものを選ぶ |
投資家は、自分のリスク許容度を理解し、それに合った資産配分を行うことで、効果的なリスク管理を実現することができる。
専門家のワンポイントアドバイス:
アセットアロケーションを考える際は、投資信託だけでなく、株式、債券、不動産、現金などの資産全体を視野に入れることが重要です。自分のリスク許容度を理解し、それに合った資産配分を行うことが、効果的なリスク管理につながります。また、定期的に資産配分を見直し、必要に応じてリバランスを行うことも大切です。
- 参考:フィデリティ証券「アセットアロケーションとは?どんな組み合わせ方がある?」
リスクの高い投資信託でリターンを追求する
高いリターンを求める場合でも、投資信託は投資対象になる。
投資信託は、その投資対象や運用方針によって、様々なリスクとリターンの特性を持っている。株式投資信託の中には、高いリターンを求めて積極的な運用を行うものがある。例えば、以下のような投資信託は、高いリターンを求める投資家にとって魅力的な選択肢になり得る。
- 新興国株式投資信託:新興国の株式市場は、先進国に比べて高い成長が期待できる一方、カントリーリスクが高いことから、高いリターンが期待できる。
- セクター特化型株式投資信託:特定のセクター(業種)に特化して投資を行う投資信託は、そのセクターの成長性を捉えることで、高いリターンを獲得する可能性がある。
- アクティブ運用型株式投資信託:運用者の判断で銘柄選択を行うアクティブ運用型の株式投資信託は、市場平均以上のリターンを目指すことができる。
- レバレッジ型投資信託:デリバティブ取引等を活用して、投資金額以上の売買を行うレバレッジ型の投資信託は、高いリターンを獲得する可能性がある一方、損失が拡大するリスクもある。
ただし、高いリターンを求める投資信託は、それだけリスクも高くなる傾向がある。投資家は、自分のリスク許容度を十分に理解した上で、慎重に投資信託を選択する必要がある。
高いリターンを求める投資家は、投資信託を適切に活用することで、自分の投資目的の達成を目指すことができる。ただし、リスクを十分に理解し、適切な資産配分を行うことが重要である。
専門家のワンポイントアドバイス:
高いリターンを求める場合、投資信託は有効な選択肢の一つですが、リスクも高くなることを理解しておく必要があります。投資信託を選ぶ際は、投資対象や運用方針、過去のパフォーマンスなどを十分に研究し、自分のリスク許容度に合ったものを選ぶことが大切です。また、高リスクの投資信託に集中するのではなく、他の資産とのバランスを取ることも重要です。
まとめ:分散投資で実現する効果的な資産運用
投資信託における分散投資は、リスクを抑えながら安定的な資産運用を目指す方法である。一つの投資信託でも複数の銘柄に投資することで分散効果が得られるが、投資信託を複数組み合わせることで、より効果的な分散投資が可能となる。
ただし、投資信託の選び方や組み合わせ方には注意が必要である。過度な分散はかえってパフォーマンスを低下させる可能性があり、運用コストの増加にもつながる。投資対象やリスクの特徴を理解し、自分のリスク許容度に合った投資信託を選ぶことが重要である。
投資信託による分散投資は、少額から始められる点も魅力である。まずは自分の投資目的やリスク許容度を明確にし、それに合った投資信託を選んで資産運用を始めることをお勧めする。
- Q投資信託で分散投資を始める際の最適な資産配分はありますか?
- A
資産配分は、投資家のリスク許容度によって異なります。初心者の場合、株式投資信託30%、債券投資信託50%、現金等20%程度から始めて、徐々に自分に合った配分を見つけていくことをお勧めします。
- Q分散投資を行う際、投資信託はいくつ程度持つのが適切ですか?
- A
一般的に3~5本程度が適切です。商品数が多すぎると管理が複雑になり、運用コストも増加します。重要なのは投資対象が重複せず、異なる値動きをする投資信託を選ぶことです。
- Q分散投資で注意すべき「過度な分散」とは具体的にどのような状態ですか?
- A
似たような投資対象や運用方針の投資信託を多数保有している状態です。たとえば、複数の日本株式インデックスファンドを持つことは、実質的な分散効果が得られず、手数料の無駄になります。
コメント