統計データで眺める投資信託

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この記事を読むメリット
  • 投資信託の動向を統計データから把握することができる。
  • 市場環境や投資家のニーズによって、人気の投資対象が変化することを理解できる。
  • 投資信託が世界経済や金融市場の動向、国の経済政策などの外部要因に左右されることがわかる。

投資信託の動向を把握するために、純資産増減額ランキングや株式投信の各指標の推移、ETFの純資産総額等の推移を統計データから分析する。データを読み解くことで、投資信託の特徴や市場の影響を理解することができる。

※なお、ほかの投資信託に関する記事を読みたい方は、次の一覧からお選びいただきたい。

純資産増減額ベースのランキング

純資産増減額とは、ある一定期間における投資信託の純資産総額の増減を表す指標である。

増える意味:

  • 新規資金の流入があった
  • 投資対象資産の価値が上昇した
  • 信託報酬等のコストを上回るパフォーマンスがあった

投資信託のリスクとリターンについては、下記の記事を参考にしていただきたい。

減る意味:

  • 解約や償還による資金流出があった
  • 投資対象資産の価値が下落した
  • 信託報酬等のコストがパフォーマンスを上回った

投資信託のコストについては、次の記事を参考にしていただきたい。

次の表は、2021年から2023年までの純資産増減額について、増えた額が多い順にランク付けしたものである。

年度1位2位3位
2023年国内株式
18,062,634百万円
ETF
15,774,265百万円
インデックスTOPIX
10,047,049百万円
2022年海外株式
712,628百万円
内外債券
58,643百万円
国内不動産投信
51,625百万円
2021年ETF
7,626,235百万円
海外株式
7,345,882百万円
国内株式
7,323,330百万円
出典:投資信託協会「資産増減状況 株式投信の商品分類内訳

2023年、2022年、2021年の純資産増減額ランキングを見ると、以下のことがわかる。

  1. 2023年は国内株式、ETF、インデックスTOPIXが上位を占めており、国内市場への投資が活発だったことがうかがえる。
  2. 2022年は海外株式、内外債券、国内不動産投信が上位となっており、グローバルな分散投資の傾向が見られる。ただし、純資産増減額は2023年と比べると小さい。
  3. 2021年はETF、海外株式、国内株式が拮抗しており、幅広い資産に投資が行われていたことがわかる。
CFP
CFP

ETFについては、日銀による買入が影響している点には注意が必要です。2022年は過去最低ペースだったため、ランクインしていないが、日銀のETF買入は2010年から2024年まで行われています。

順位は毎年変化しており、特定の資産クラスが継続的に上位を維持することは難しい。市場環境や投資家のニーズによって、人気の投資対象は変化すると考えられる。

また、純資産増減額の絶対値も年によって大きく異なる。2023年と2021年は数兆円規模の増減がある一方で、2022年は数百億円規模にとどまっている。これは、市場のボラティリティ*や投資家心理を反映していると言える。

CFP
CFP

純資産増減額の変動幅が大きいことは、投資信託が市場リスクにさらされていることを示しています。投資家は、短期的な変動に一喜一憂するのではなく、長期的な投資目標に基づいて、冷静に投資判断を行うことが重要です。

*市場のボラティリティ:金融市場における価格変動の大きさや激しさを表す指標。ボラティリティが高い場合、価格の変動幅が大きく、リスクが高いと考えられる。反対に、ボラティリティが低い場合は、価格の変動幅が小さく、比較的安定している状態を指す。

株式投信の各指標の推移と市場の影響

このグラフは、投資信託の資金流入出と運用成果を表している。資金増減額(青線)はプラスが流入、マイナスが流出を示す。運用増減額(オレンジ線)はプラスが運用成果良好、マイナスが運用成果不調を表す。前期末比増減(緑線)は、資金増減額と運用増減額、収益分配額を合わせた投資信託の純資産額の増減を示している。これらの線の動きから、投資信託の資金動向と運用状況の関係性を読み取ることができる。

次の表は、投資信託協会「公募投資信託の資産増減状況(実額)」のデータをグラフ化したものである。

プラスの影響:

出来事影響
2013年~2015年– アベノミクス
– 日本株の上昇   
– NISAの開始
資金増減額と運用増減額が大きくプラスになり、投資信託への資金流入と運用成果の改善が見られる。

マイナスの影響:

出来事影響
2008年  世界的な金融危機(リーマンショック)資金増減額と運用増減額が大きくマイナスになり、投資信託からの資金流出と運用成果の悪化が同時に発生する。
2018年米中貿易摩擦の激化や世界経済の減速懸念運用増減額が大きくマイナスになり、株式市場の不安定な動きが投資信託の運用成果に影響を与える。
2022年-ロシアのウクライナ侵攻
-歴史的な高インフレ
資金増減額が大幅なマイナス、運用増減額は大幅なプラスになる。投資信託から多くの資金が流出する中、運用成果は良好。前期末比増減は小幅なプラス。

これらの事例から、株式投資信託は、世界経済や金融市場の動向、国の経済政策などの外部要因に大きく左右されることがわかる。投資家は、市場動向を注視しつつ、長期的な視点を持って投資信託を選択・運用していく必要がある。また、投資信託は元本保証ではないため、リスクを十分に理解した上で、自身のリスク許容度に合わせた投資を行うことが肝要である。

CFP
CFP

投資信託のパフォーマンスは、市場環境によって大きく変動します。投資家は、自身のリスク許容度や投資目的に合った商品を選択し、適切な資産配分を行うことが大切です。また、定期的にポートフォリオを見直し、必要に応じてリバランスを行うことも重要です。

毎月決算型ファンドの純資産総額等の推移

次の表は、投資信託協会「投資信託の主要統計等ファクトブック」より抜粋した、毎月決算型ファンドの純資産総額等の推移である。

資金増減額と純資産総額の関係について見ると、資金増減額はファンドへの資金流入と流出を表すため、純資産総額に直接的な影響を与える。

資金増減額がプラスの場合は新規資金の流入が純資産総額の増加要因となり、マイナスの場合は解約による資金流出が純資産総額の減少要因となる。

ただし、資金増減額がゼロであっても、ファンドの運用成績によって純資産総額は変動するため、資金増減額だけでなく、運用成績も純資産総額に影響を与える重要な要素であると言える。

ETFの推移

ETF(上場投資信託)とは、投資信託の一種で、株式市場に上場され、株式のように売買することができる商品である。ETFは、株式や債券、商品などの指数に連動するように設計されており、投資家は低コストで分散投資を行うことができる。

次のグラフは、次の表は、投資信託協会「投資信託の主要統計等ファクトブック」より抜粋した、ETFの純資産額と日銀買入額を示している。

グラフを見ると、日銀買入もあり、ETFの純資産総額は右肩上がりである。投資信託にETFを組み込む理由や純資産総額が増減する理由についてまとめる。

投資信託にETFを組み込む理由

  1. 分散投資の促進:ETFを組み込むことで、投資信託はより幅広い資産クラスや市場に投資することができ、リスクの分散を図れる。
  2. 低コストの投資:ETFは一般的に運用コストが低いため、投資信託の運用コストを抑えられる。
  3. 流動性の向上:ETFは株式市場で売買されるため、投資家は必要に応じて売買することが容易で、投資信託の流動性を高められる。

日銀による買入はあるが、ポートフォリオ全体のリスクとコストをおさえるために、活用されやすいことがわかった。また、ETFの純資産総額が増減する理由もまとめておく。

  1. 市場の動向:ETFが連動する指数の変動により、ETFの価値が変動し、純資産額が増減する。
  2. 投資家の需要:投資家のETFに対する需要の変化により、ETFの純資産額が増減する。需要が増えれば、ETFの価格が上昇し、純資産額が増加する。逆に、需要が減れば、価格が下落し、純資産額が減少する。
  3. 日銀の買入:日本銀行によるETFの買入は、ETFの需要を増加させ、価格を上昇させる効果がある。しかし、買入が減少すると、需給バランスが変化し、ETFの価格や純資産額に影響を与える可能性がある。

日銀の買入以外にも、市場の動向や投資家の需要など、様々な要因がETFの純資産額に影響を与えるため、必ずしも日銀の買入だけが純資産額の増減を決定づけるわけではない。投資信託全体の純資産額の変動は、組み入れられている様々な資産の動向を反映したものと考えられる。

まとめ

投資信託の動向を統計データから分析すると、純資産増減額ランキングの変化や株式投信の各指標の推移、ETFの純資産総額の増加など、市場環境や投資家のニーズによって影響を受けていることがわかる。投資信託は、世界経済や金融市場の動向、国の経済政策などの外部要因に左右されるため、投資家は市場動向を注視しつつ、長期的な視点を持って投資信託を選択・運用していく必要がある。また、リスクを十分に理解した上で、自身のリスク許容度に合わせた投資を行うことが肝要である。

Q
投資信託の純資産総額が増減する主な要因は何ですか?
A

投資信託の純資産総額が増減する主な要因は、新規資金の流入や解約による流出、投資対象資産の価値の変動、信託報酬等のコストとパフォーマンスの関係などです。これらの要因が複合的に作用し、純資産総額が変動します。

Q
ETFを投資信託に組み込むメリットは何ですか?
A

ETFを投資信託に組み込むメリットは、分散投資の促進、低コストでの投資、流動性の向上などです。ETFを活用することで、投資信託はより効率的なポートフォリオ運用を行うことができます。

Q
投資信託の運用成果に影響を与える外部要因にはどのようなものがありますか?
A

投資信託の運用成果に影響を与える外部要因には、世界経済や金融市場の動向、国の経済政策などがあります。例えば、景気の変動、金融危機、貿易摩擦、政策変更などが、投資信託の運用成果に大きな影響を与える可能性があります。

※なお、ほかの投資信託に関する記事を読みたい方は、次の一覧からお選びいただきたい。

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