第７章 ◇ 構成案の作成

依頼には、構成案の作成を含む場合がある。構成案を作成するために、基本的なSEOの知識があったほうがよい。ここでは構成案作成の手順に沿って、SEO対策にも触れていく。

構成案を作成する前に、調査をする必要がある。クライアントから指示されたキーワードをもとに調査する。たとえば転職サイトを運営するクライアントから「転職 30代 女性」というキーワードを指定された場合の手順をみていこう。

７-1 ◇ 構成案の重要性

執筆する前に構成案を作成するのはひと手間かかる。しかし、手間をかけても構成案を作成しなければならない。

◇ 構成案があると望まれる記事になりやすい ◇

「転職 30代 女性」というキーワードだけで、いきなり執筆し始めても、クライアントが希望している記事になるとは限らない。構成案があれば、記事の完成形をイメージしやすくなり、納品した原稿と希望する原稿との差が生じにくくなる。

◇ 構成案を作成したほうが執筆速度は速い ◇

構成案のない状態で執筆すると、調べながら書くことになる。また構成案という目標が決まっていないため、書いているうちに方向性がズレ、タイトルと異なる記事に仕上がることもある。構成案を作成する際に、参考サイトを調べ、方向性を固めておくと、迷いなく執筆できるため、時間短縮につながる。

◇ 記事の修正が最小限で済む ◇

構成案なしで記事を納品した場合、タイトルや見出しの変更により、大幅な修正を求められることがある。これでは、執筆する文字数が大きく増えてしまい、文字単価に影響してしまう。大幅な修正があると、クライアントの印象もよくないだろう。

◇ 取引トラブルを回避できる ◇

修正箇所が大きければ、原稿の受取拒否や報酬不払いなどのトラブルに発展することがある。構成案の有無だけでトラブルになるわけではないが、変換ミスやわかりにくい文章などライティングスキルが不足していると、総合的にライターの責任となる可能性がある。文章に自信がない人ほど、構成案の作成を怠らないようにしたい。

近年は、構成案について記載のある案件が多い。「構成案をお渡しします」「構成案の作成からお願いします」などである。構成案について言及されていない場合は、ライターから確認しよう。

７-2 ◇ 競合サイトの調査

使用しているブラウザをプライベートモードにして、「転職 30代 女性」で検索する。検索結果上位10サイトや1ページ目のサイトの「タイトル」「見出し」をエクセルなどの表にまとめる。基本的にタイトルや最初の見出しにキーワードが1回含まれている。

実際に「転職 30代 女性」で検索すると、ほとんどが求人情報である。しかし、このなかに一部、記事が紛れている。その記事で使われているのが、「スキルなし」「厳しい」「資格なし」「コツ」などである。

googleの検索結果では、意図的に多様なサイトが表示される。ユーザーが求人情報を求めているとは限らないためである。掲載予定のサイトにあわせて調査対象を決める必要がある。

７-3 ◇ 共起語の調査

競合サイトの調査だけでは見出しが作成できない場合は、共起語の調査も行っておく。共起語は、キーワードと一緒に使われる単語で、見出しを決める参考になる。「転職 30代 女性」というキーワードには、「職種」「事務」「経験」「資格」などがある。ここから、見出しの候補として「30代女性が転職で成功するための資格」や「事務職を希望する30代女性がすべきこと」などが考えられる。

７-4 ◇ 高い一致率を回避

キーワードによっては、競合サイトと同じような内容になってしまう。そのため、構成案を作成する際に、一致率が高くならないような見出しを作成したい。タイトルに関する内容は記事の最初に記載する必要がある。最後のほうの見出しを競合サイトと意図的に差をつけることで、高い一致率を回避できることがある。

ただ、キーワードやテーマとかけ離れてしまわないように注意する必要がある。一致率は執筆時に調整することも可能なので、無理のない範囲で対策する。

７-5 ◇ ユーザーが求めているものを考える

競合サイトや共起語を調査して、タイトルを考える。たとえ魅力的なタイトルを付けてクリックされたとしても、サイトの滞在時間が短ければ、ページの評価が下がってしまう。ユーザーが抱える悩みや疑問を把握し、それに対する回答を記事の最初に位置付けることで、満足してもらう。記事には「発見」「学び」「娯楽」「感動」のいずれかを含めなければならない。

７-6 ◇ 構成案の作成

キーワード調査などで調べた情報をまとめる。

競合サイトの構成を確認したところ、「転職 30代 女性」で検索するユーザーは、「30代女性が転職で成功するためのコツ」や「スキルなし・資格なしでも転職できるか」などの回答を求めていることがわかる。 関連して、「転職できない人の特徴」や「転職活動する際の注意点」を解説しておくとよいだろう。成功するためのコツにつなげることができる。

検索上位に表示されるのには理由がある。「転職 30代 女性」で検索するユーザーが求めている情報が記載されているはずである。ここまでの手順でわかるように、検索上位のサイトを調査するため、注意しなければ、一致率が高くなる。見出しは似ていたとしても、競合サイトにはない情報をのせたり、異なるアプローチで説明したりと工夫が必要となる。

◇ 構成案(例) ◇

結論

構成案の作成は、SEO対策を意識した質の高い記事を効率的に書くために欠かせないステップである。構成案があれば、記事の方向性が定まり、クライアントとのズレを防ぐことができる。

構成案を作る際は、キーワードをもとに競合サイトや共起語を入念に調査することが大切である。ユーザーのニーズを的確に捉え、満足度の高い記事を目指そう。一致率の高さには注意しつつ、オリジナリティのある構成を工夫することが求められる。

手間を惜しまず作った構成案は、執筆をスムーズに進め、修正の手間を省き、ひいては信頼につながるはずである。構成案の重要性を理解し、記事の質を高めていこう。