FinTechは金融サービスに革新をもたらしている。
モバイル決済やロボアドバイザーなど、私たちの生活に身近なサービスが登場。銀行、保険、証券など各業界でもFinTechが活用され、利便性や顧客体験が向上。
さらに、FinTech企業の台頭で、金融の未来が大きく変わろうとしている。本記事では、FinTechの今と未来を探る。
FinTechは、金融サービスと情報技術を融合させた革新的な取り組みである。
スマートフォンアプリを使った簡単な送金、AIを活用した資産運用アドバイス、ブロックチェーン技術を用いた新しい金融サービスなど、FinTechは私たちの金融体験を大きく変えつつある。
この記事では、FinTechの基礎知識から、業界別の活用事例、そして未来の可能性まで、FinTechの全体像に迫る。
FinTechとは
フィンテックとは、金融サービスと情報技術が結びつい新たな領域。2000年代初頭からアメリカで使用され始め、リーマンショックや金融危機を経験した後、新たな金融ベンチャーが次々と誕生した。
これらのベンチャーは、インターネット、スマートフォン、AI、ビッグデータなどを活用して、資金の貸し手と借り手を直接つなぐサービスや、Eコマースと連携した決済サービスなどを提供している。
また、金融サービスがまだ十分に普及していない途上国や新興国でも、スマートフォンを活用した金融サービスが急速に広がっている。さらに、分散型台帳技術やブロックチェーンといった新技術も登場している。
日本でもさまざまなサービスがあり、具体的には次のようなサービスで金融テックの影響が見られる。
- モバイル決済アプリ:「ペイペイ」や「LINE Pay」などの電子決済サービス。これらのサービスは、スマートフォンを使って瞬時に決済ができるため、現金を持ち歩く必要がない。
- ロボアドバイザー:「WealthNavi」などの資産運用サービスもある。ロボアドバイザーはAIを活用して、ユーザーの資産運用をサポートするサービスで、専門的な知識がない人でも比較的安全に資産運用できる。
- PFM(Personal Financial Management):「Money Forward」などの家計管理のサービス。これらのサービスは、銀行・証券口座やクレジットカードなどの口座情報を一元管理し、ユーザーの資産状況を客観的に可視化できる。
- 仮想通貨取引プラットフォーム:ビットコインやリップルのような暗号資産の取引が可能なプラットフォーム。これらのプラットフォームでは、ブロックチェーン技術を活用しており、改ざんが非常に困難であることが特徴である。
FinTechを理解するうえで知っておきたい専門用語
- AI(Artificial Intelligence、人工知能):人間の知能を模倣するコンピュータシステム。学習、推論、知覚、自然言語理解などの機能を持つ。
- ビッグデータ:従来のデータベースシステムでは処理しきれないほど大量かつ複雑なデータのこと。
- 分散型台帳技術:ネットワーク上の複数のコンピュータにデータを分散して保存する技術。一部が故障してもデータが失われないようにする。
- ブロックチェーン:分散型台帳技術の一種で、取引の記録をブロックと呼ばれるデータの塊にしてチェーン(連鎖)状につなげたもの。改ざんが非常に困難であるとされる。
【業界別】FinTechを活かしたサービス
すでにいくつか具体例を挙げたが、業界別にFinTechを活用したサービスを紹介する。なお、ここではイメージがわきやすいように企業名を紹介しているが、利用するかどうかは、問合せするなどして情報収集し、十分検討すること。
銀行 × FinTech
近年、銀行業界では、店舗維持コストの増大やオンラインバンキングの普及によって、従来の対面式サービスから、デジタルを活用した非対面サービスへのシフトが進んでいる。FinTechを活用することで、銀行は顧客により利便性の高いサービスを提供できるようになった。
- モバイルバンキング:スマートフォンアプリを使った自動的な資金移動やキャッシュレス決済
- 三菱UFJ銀行「三菱UFJダイレクト」
- みずほ銀行「インターネットバンキング」
- オンラインローン:web上で簡単に申し込み・審査ができるサービス
- 三井住友銀行「WEB申込専用住宅ローン」
- auじぶん銀行「住宅ローン」
- AIによる投資助言:顧客の投資目的や資産状況をAIが分析し、最適な投資商品を提案するサービス
- みずほ銀行「みずほ銀行 SMARTFOLIO(DC)」
- SBI新生銀行「SBIラップ AI投資コース」
◇ 活用されているFinTech
- モバイルアプリ/Webアプリケーション技術
- スマートフォンやPCでの直感的な操作性
- クラウド上のバックエンドシステムとの連携
- API(Application Programming Interface)連携
- 決済サービス、サードパーティのデータ連携
- 口座情報の自動取得や申込情報の連携
- 生体認証
- 指紋認証、顔認証などによる本人確認
- パスワード入力の手間を省き、利便性向上
- データ分析/AI技術
- ユーザー行動分析に基づく最適提案
- 投資リスク分析や資産状況分析
- セキュリティ対策
- 多要素認証によるなりすまし防止
- 不正利用検知などのリスク管理
保険 × FinTech
保険業界では、商品の複雑性や手続きの煩雑さから、顧客の満足度が低い傾向にあった。しかし、FinTechの活用によって、顧客データの分析に基づいたパーソナライズされた商品提案や、スマートフォンアプリを通じた簡単な手続きが可能になるなど、顧客体験の向上が図られている。
- テレマティクス保険:運転データをリアルタイムで把握し、安全運転に応じて保険料を割り引くサービス。事故に備えた保険ではなく、事故をおこさない保険に変化しつつある。保険に加入するためには、指定のドライブレコーダーの装着が条件となる場合もある。
- あいおいニッセイ同和損保「テレマティクス自動車保険」
- ソニー損保「自動車保険」
- ウェアラブル機器連携:健康データを保険会社と共有し、保険料割引や健康管理サポートを提供
- 明治安田生命「ベストスタイル 健康キャッシュバック特約」
- 住友生命「Vitality スマート」(保険契約不要)
- On-demand保険:必要な時だけ保険に加入できるサービス
- 東京海上日動「ちょいのり保険(1日自動車保険)」
- 三井住友海上「1DAYレジャー保険(24時間単位型総合生活補償保険」
◇ 活用されているFinTech
- IoT/テレマティクス
- ドライブレコーダーやウェアラブル端末などのIoTデバイスから、運転データや健康データを収集
- リアルタイムでの顧客行動分析と保険料への反映
- データ分析/AI
- 収集した膨大なデータをAIが分析
- 走行パターンや健康状態に基づいた最適な保険料設定
- API連携
- IoTデバイスからの健康・行動データを保険会社のシステムと連携
- シームレスなデータ共有と保険サービスの提供
- モバイルアプリ
- スマートフォンアプリを通じた保険加入や健康管理サポート
- ユーザーエクスペリエンスの向上
証券会社 × FinTech
証券会社では、専門知識を持つ人材の不足や、個人投資家の増加によって、投資アドバイスやポートフォリオ管理のニーズが高まっている。FinTechを活用したロボアドバイザーや、AIを用いた投資戦略の提案などにより、より多くの人々に質の高い投資サービスを提供できるようになった。
- ロボアドバイザー:AIが顧客のリスク許容度や投資目的に合わせて自動的な資産運用を行うサービス
- 暗号資産取引:ブロックチェーン技術を活用した新しい形態のサービス
- 株式・FX自動売買:プログラムで自動的に売買を行うサービス
◇ 活用されているFinTech
- AI/機械学習
- 顧客の投資リスク許容度や目的を分析
- 最適な資産運用アドバイスの自動生成
- アルゴリズム取引
- 市場動向を把握し、プログラムに基づいた自動売買
- 瞬時の意思決定と高速執行による収益機会の最大化
- ブロックチェーン
- 分散台帳技術を用いた暗号資産の取り扱い
- 取引の透明性と安全性の向上
- API連携
- 金融マーケットデータとの連携
- 顧客情報やポートフォリオの自動更新
- モバイル/Webアプリ
- スマートフォンやPCでの直感的な操作性
- リアルタイムの資産状況把握と取引
FinTech企業
従来の金融機関とは異なる視点から、革新的な金融サービスを提供するFinTech企業が登場している。これらの企業は、技術を活用して、金融サービスのあり方自体を変革しようとしている。オンライン融資やクラウドファンディング、家計簿アプリなど、ユーザー目線で開発された利便性の高いサービスが特徴的である。
- オンライン融資
- freee finance lab「資金繰り改善ナビ」
- クラウドファンディング
- パーソナルファイナンスアプリ
- Money Forward「Money Forward ME」(家計簿・資産確認アプリ)
◇ 活用されているFinTech
- API連携
- 銀行口座やクレジットカードなどの金融データとの連携
- 顧客情報やトランザクションデータの自動取得
- モバイルアプリ/Webアプリケーション
- スマートフォンやPCでの直感的な操作性
- リアルタイムの情報把握と手続き
- ビッグデータ分析/AI
- 顧客の信用力や支出パターンの分析
- 最適なサービス提案やリスク管理
- クラウド基盤
- オンラインでの一元的なデータ管理
- 場所に依存しないアクセス性
- ソーシャルメディア連携
- プロジェクトの拡散やコミュニティ形成
- 資金調達やサービス利用の促進
まとめ
FinTech(金融テック)は、金融サービスと情報技術を組み合わせた革新的な分野である。スマートフォンアプリを使った簡単な送金や、AIを活用した資産運用アドバイスなど、私たちの日常生活に身近なサービスが登場している。
例えば、スマートフォンひとつで、友人への送金や店舗での支払いができるモバイル決済アプリ。専門知識がなくても、AIが最適な投資先を提案してくれるロボアドバイザー。家計簿アプリと連携し、自分の資産状況を一目で把握できるPFMサービス。これらは、FinTechがもたらした革新的なサービスのほんの一部である。
FinTechは、私たちの金融との付き合い方を大きく変えつつある。従来は銀行窓口に行かなければできなかった手続きが、スマホで完結する。専門家でなければわからなかった金融の知識が、身近に得られるようになった。FinTechは、私たちの生活をより便利で豊かにする可能性を秘めているのである。
これからのFinTechにも注目である。ブロックチェーン技術を使った新しい金融サービスや、AIを活用したパーソナライズされた提案など、さらなる革新が期待される。FinTechが私たちの金融体験をどのように変えていくのか。その未来が楽しみである。
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